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国土交通省:自動運転における損害賠償責任に関する研究会」の報告書を公表

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国土交通省:自動運転における損害賠償責任に関する研究会」の報告書を公表

国土交通省は、自動運転における損害賠償責任に関する研究会(第6回・最終回)を持ち回りで開催し、報告書をとりまとめた。

自動運転の実現に向けて、官民ITS構想・ロードマップ2017においては、自動運転の導入初期である2020~2025年頃のいわゆる「過渡期」(自動運転車と自動運転でない自動車が混在する時期)を想定した法制度の在り方(自動車損害賠償保障法上の責任関係の在り方を含む)を検討し、2017年度中を目途に高度自動運転システム実現に向けた政府全体の制度整備に係る方針(制度整備大綱)を策定することとされている。

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自動運転中の車が事故を起こした際の自賠法上の責任主体及びデータの誤謬、通信遮断、ハッキング等の事象発生時の責任関係等については、平成28年11月より、研究会において、検討していた。今般、第6回研究会を20日持ち回りで開催し、報告書をとりまとめた。


1.自動運転と自動車損害賠償保障法

民法の特別法である自賠法は、運行供用者(自動車所有者等)に、事実上の無過失責任を負担させている(免責3要件を立証しなければ責任を負う)。

 【参考】自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

2.論点整理

2-0 本研究会における議論の前提について
・高度自動運転システム(*1)の導入初期である2020~2025年頃の「過渡期」を想定し、レベル1から4まで、特にレベル3及び4の自動運転システム利用中の事故を中心に、自賠法に基づく損害賠償責任の在り方について検討。

 *1 レベル3以上の自動運転システムをいう。なお、自動運転レベルの定義として、SAE International J3016(2016年9月)の定義を用いている。

2-1(論点(1))自動運転システム利用中の事故における自賠法の「運行供用者責任」をどのように考えるか。
・レベル0~4までの自動車が混在する当面の「過渡期」においては、(i)自動運転においても自動車の所有者、自動車運送事業者等に運行支配及び運行利益を認めることができ、運行供用に係る責任は変わらないこと、(ii)迅速な被害者救済のため、運行供用者に責任を負担させる現在の制度の有効性は高いこと等の理由から、従来の運行供用者責任を維持しつつ、保険会社等による自動車メーカー等に対する求償権行使の実効性確保のための仕組みを検討することが適当である(*2)。

 *2 なお、「過渡期」に実現が期待されている2つの形態に関して以下のように整理。(1)限定地域での無人自動運転サービス(レベル4)については、車両の保有者である自動車運送事業者を運行供用者として、限定領域外等において遠隔監視・操作を行う者を運転者(自賠法第2条第4項)として、それぞれ観念することができる。(2)高速道路での後続無人隊列走行トラックについては、後続車両の電子連結につき、関連法規において牽引に準じたものとして取り扱うことができ、先頭車両の保有者のみに運行支配が認められるのであれば、先頭車両の保有者である自動車運送事業者が運行供用者となる。

 【参考】なお、求償の実行性確保のための方策として、自動運転技術の進展、自動運転車の普及状況、適正な責任分担の在り方等も勘案しながら必要な措置を検討することが重要であるが、例えば、リコール等に関する情報を求償時の参考情報として用いるほか、
 ・EDR等の事故原因の解析にも資する装置の設置とその活用のための環境整備
 ・保険会社と自動車メーカー等による円滑な求償に向けた協力体制の構築
 ・自動運転車の安全性向上等に資するような、自動運転中の事故の原因調査や自動運転システムの安全性に関する調査等を行う体制整備の検討(当該調査結果については求償のための参考情報としても活用可能)
等も選択肢として考えられ、これらの有効性や具体的内容等については、国土交通省をはじめとする関係省庁・関係団体等が連携して、引き続き検討していくことが重要とされた。

2-2(論点(2))ハッキングにより引き起こされた事故の損害(自動車の保有者が運行供用者責任を負わない場合)について、どのように考えるか。
・現在、盗難車による事故の場合、一定の場合を除き、政府保障事業により損害のてん補を行っている。
・ハッキングにより引き起こされた事故の損害については、自動車の保有者等が必要なセキュリティ対策を講じておらず保守点検義務違反が認められる場合等を除き、盗難車と同様に政府保障事業で対応することが適当である。

2-3(論点(3))自動運転システム利用中の自損事故について、自賠法の保護の対象(「他人」)をどのように考えるか。
・現在、自賠責保険は、「他人」への損害のみを対象としており、自損事故の場合には、運行供用者又は運転者は損害のてん補を受けることができない。
・当面の「過渡期」においては、自動運転システム利用中の自損事故については、現在と同様の扱いとし、任意保険(人身傷害保険)等により対応することが適当である。

2-4(論点(4))「自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと」について、どのように考えるか。
・現在、運行供用者の注意義務の内容として、関係法令の遵守義務、自動車の運転に関する注意義務、自動車の点検整備に関する注意義務等がある。
・今後の自動運転技術の進展等に応じ、例えば、新たに自動運転システムのソフトウェアやデータ等をアップデートすることや、自動運転システムの要求に応じて自動車を修理すること等の注意義務を負うことが考えられる。

2-5(論点(5))地図情報やインフラ情報等の外部データの誤謬、通信遮断等により事故が発生した場合、自動車の「構造上の欠陥又は機能の障害」があるといえるか。
・外部データの誤謬や通信遮断等の事態が発生した際も安全に運行(*3)できるべきであり、かかる安全性を確保することができていないシステムは、「構造上の欠陥又は機能の障害」があるとされる可能性があると考えられる。

 *3 安全な運行には、外部データの誤謬や通信遮断等の事態が発生した際に自動的に路肩で安全に停止すること等も含まれ得るが、車両が満たすべき安全性の基準については、今後の自動運転技術の進展等による。

3.今後に向けて

今回の検討の際に想定した「過渡期」を過ぎてレベル5の自動運転車が普及する段階においては、自動車の操縦には関与せず、行き先を指示するだけの者に運行供用者責任を認めることができるのかなどといった議論もあり得る。自賠法における損害賠償責任に関しては、今後の自動運転技術の進展、自動運転車の普及状況、海外における議論の状況等を踏まえつつ、上記2.の論点整理も含め、さらなる検討が必要となる可能性もある。

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