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年末の大掃除に追われながら、「溺愛車」の行方と愛車の終活について考えてみた

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年末の大掃除に追われながら、「溺愛車」の行方と愛車の終活について考えてみた

いわゆる「お片付けのプロ」の方による「大掃除は早めに済ませておくと年末が楽しく過ごせますよ!」という記事を読んだのが、確か昨年の11月下旬ころ。小さい頃は8月下旬になると夏休みの宿題に追われ、現在は原稿の締め切りに追われる日々。結局、大掃除に取り組んだのはクリスマス明け…。

他人事ではない「愛車の終活問題」

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今回、長年「開かずの間」だった実家の押し入れの大掃除に着手。亡き父親が愛聴していたレコードや、旅行先で撮った写真などが大量に見つかりました。今回はどうしても整理しなければならない事情があり「断腸の思いで」不要と思われるものを処分しました。もっと時間に余裕があればネットオークションなどに出品することで、それなりの金額で落札されたものがあったかもしれません。

アラフォー世代である筆者の同級生や幼馴染みのご両親の多くが70代、なかには80代の方も…。何かの折りにお会いすると「子どもたちに迷惑を掛けたくないし、そろそろ終活を始めないとね…」と口々に仰います。

亡き父同様、筆者も「モノが捨てられない性格」。いわゆる「遺品整理」をいつかはやらなければならないけれど、先延ばしにしてきました。心のどこかで断捨離やミニマリストに憧れつつ、このまま年を重ねていくのでしょうか…。

身近な人との突然の別れで感じた「溺愛車」の行方

一昨年秋、学生時代のアルバイト先だったお店の社長さんが亡くなりました。まだ60代前半。胃がんでした。ポルシェ911をこよなく愛する方で、病室にポルシェのカタログを持ち込み、暇さえあればベッドで横になりながら読んでいたようです。しかし、脳転移してからは記憶の混濁がはじまり、お見舞いに行っても会話が成立しない状態に…。それから数日後、筆者の携帯電話にも突然連絡があり「いまから試乗に行こう!迎えに来てよ」と誘われることがありました。親族の方からは「本人から電話が掛かってきても無視してください…」といわれましたが、お世話になった方の連絡をスルーする罪悪感に苛まれました。

結局、件の社長さんは、ガンが見つかってから半年足らずでこの世を去ってしまいました。大切にしてきたクルマはもちろん、カタログやグッズの数々のコレクションをどう処分するかを決める前に他界してしまったため、遺族の方も途方に暮れていたように思います。結局、大切に保管していたカタログやグッズ類は筆者が引き取り、雑誌類は処分したようです。最後に残ったのは、「ディーラーのスタッフが恐ろしく気を遣う」ほど大切に乗られていたポルシェ911(997カレラS)。まさに「溺愛車」でした。ご子息はクルマに興味がないため、引き取り手を探すことになり、筆者にも声が掛かりました。

しかし、どうにも購入資金を捻出できず断念。結局、付き合いのあるディーラーに引き取られ、後日、認定中古車として売りに出されました。おそろしく程度の良かった個体だけに、割と早い段階で嫁ぎ先が決まったようです。あっという間にストックリストから姿を消していました。この個体を手に入れたオーナーさんは本当に幸運だったと思います。

「シングルナンバー」や「2ケタナンバー」もクルマの価値と考えるかどうか?

最近、知人のクルマ屋さんから「○○○さんが亡くなり、その子どもが手放したクルマがある。本当に程度が良いぞ!オマエ買わないか?」という打診をいただく機会が増えたように思います。そのなかには、高度成長期時代に手に入れたと思われるワンオーナーカーも含まれています。まさしく、前オーナーが、文字どおり人生とともに歩んできた「愛車」。クルマに興味がない方からすれば尋常ではない愛情が注がれてきた「溺愛車」です。

クルマを大切にする方であれば「シングルナンバー」や「2ケタナンバー」の価値を理解したうえで所有してくれるでしょう。しかし、これがクルマに興味がない人々のマネーゲームの道具にされてしまったら…。さまざまな考え方があるのは十分に承知したうえですが、筆者のように「シングルナンバーや2ケタナンバーもそのクルマの価値に含まれる」と考えてしまうタイプのクルマ好きにとって、何とも複雑な気持ちになります。

取材を通して感じる「溺愛車」との別れ方とは?

筆者は20代前半から70代の方まで、年間をとおして70人くらいの愛車のオーナーインタビューを行っています。なかでも70代のオーナーさんを取材していると「子どもたちがクルマに興味がない」「私がこのクルマに乗れなくなったとき、誰が引き継いでくれるのだろうか?」と仰る方がいらっしゃいます。そして、多くの場合「高く売ろうなんて思わない。それよりも大切乗ってくれる方に引き継いで欲しい」…と話しが続くことになるのです。

お父さんが人生を掛けて集めたコレクションや趣味の品。これが家族にとって「単なるゴミでしかない」ケースがしばしば存在します。我が家にとって、亡き父の遺品は「単なるゴミ」ではなく「大切な遺品だけど、正直いって処理に困った」であったため、さらに深刻というべきか、長期間、見て見ぬフリをしてきた現状があります。例えばレコードやアルバムなど、押し入れにしまえるものであれば見過ごすこともできますが、クルマほどの大きさになるとそうもいきません。

もし、いまの愛車(もしくは溺愛車)を、自分がこの世を去っても身近な人が大切に乗り続けて欲しいと願うのなら…。書面に一筆書いて記録を残すなり、クルマ好きの友人や知人に話しておくなど、いまのうちにできることをしておいた方が良いと思えてなりません。筆者も主治医に託すことにしました。「どんな形になってもいいので乗り継いでください」と。もちろん、これから先、まだまだ何十年も乗り続けるつもりです。

[ライター・撮影/江上透]

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