『うんこ漢字ドリル』227万部、「DAZN」(ダ・ゾーン)登録100万人突破、2017年9月のホンダN-BOXの月販台数は2万5173台……と今年もバカスカ売れているものは多い。しかしそんなご時世でも売れてないクルマは相変わらず売れてない。本企画では急遽「売れないクルマたち調査委員会」を立ちあげ、月販台数40台以下を記録してしまった車たちの声に耳を傾けつつ、ところどころで自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に「なぜ売れないのか?」のコメントをもらいつつ、紹介してゆきたい。世はなべて「売れた車はすごい」「メガヒット作の秘密はこれだ!」というニュースばかりが持てはやされますが、売れてなくても言い分はあるし、もちろん魅力もあるのです。
文:ベストカー編集部、渡辺陽一郎
ベストカー2017年11月26日号
※記事初出時にはエスクード2.4の写真が誤って最新型のものが掲載されておりましたので修正いたしました。慎んで訂正いたします(2017.11.13 10:10)
■ホンダCR-Z 2017年1月販売台数14台
「新型車」よりも「熟成車」を狙え!! コツコツ進化するモデルを応援したい
さっそく今年1月の月販数を見ると、ホンダCR-Zの14台が目にとまる。「2010年の発売当初、“スポーツを楽しめるハイブリッド。画期的だ”なんてよく自動車評論家のみなさんに褒められたけど、2~3年経つと“IMAシステムそのものがこのクルマに合わない”などとマイナス面ばかり指摘されて……。憧れのCR-X様にはなれなかったんだな、僕は。はぁ~」
とCR-Z君のため息が聞こえてくる。
今年1月で生産中止だっただけに、最後のひと花でこの月はけっこう売れると思ったんですが……。渡辺陽一郎さん、なんで短命に終わったんスかね?
「CR-Zがこんなに短命とは思わなかったけど、結局“すぐ欲しい人、これしか買わないという人”が少なすぎたということでしょう。この手のモデルを買う市場はもともと小さいので、次々と売れないとさらに小さくなり、やがてほぼなくなる……ということですね」
と、“特殊なスポーツ市場”を構築することができなかったと指摘。肩を落とさないでね、CR─Zさん。
■レクサスGS F 2017年1月販売台数17台
CR-Zと同じ2017年1月ではレクサスGS Fの17台も目についた。
「レクサスはそれほど売れなくても成立するんじゃないの?」と庶民の本企画担当は思ってしまうが、とはいえレクサスだって月販100台は売れないと開発費の元を取るのは難しいはず。ですよね、渡辺陽一郎さん。
「V8エンジン搭載といっても今やあんまり魅力ないし、エンジン自体が古い。燃費も悪いしね。なにしろ価格が高い。1112万円ってベンツCクラスAMG(886万円からある)が出た時点で、こっちのほうがいいとなる。ベンツは値引きするけど、レクサスは値引きなしだしね」
と語るけど、どうですかそこのところ、GS Fさん。
「ふん、欧州車軍団を買いたければどうぞ。私はGSからの特別な走りのクルマとして誕生したまでで数は追わない主義なんだよ。17台? そんな数なんて気にしないよ。それより仲間のRC Fをごらんよ。月販9台の一桁だよ」
うおっと、ホントだ。
■レクサスRC F 2017年1月販売台数9台
「ラグジュアリースポーツ感がさらに増したレクサスLCが3月に発売されるということが市場に伝わり、RC Fの販売が鈍化。悲しいかな、RC Fの役割が終わったということはある。LCはプラットフォームから開発したレクサスの新しいステージのモデルで、力の入れ具合が違うからね」とは渡辺陽一郎氏。
「うお~ぃ、おいおい(涙)。レクサスのスポーツというキャラかぶりで豪華なLCが後釜で出てきて、オイラ、悔しいよ(涙)。新しいエンジン積み換えたビッグMCをしてくれないかなぁ~。おいおい(涙)」
とRC F君は涙するが、「F」に限らずRCは全体的に低空飛行。このカテゴリーは輸入車にいいモデルが多いだけに、ま、今後も頑張ってほしい(←慰めになっていない)。
■三菱デリカD:3 2017年1月販売台数1台
同じ2017年1月で驚いたのがデリカD:3の1台。
1台って。
「日産NV200のOEMの僕なんだけど、本家は同じ1月に79台、2月は166台という数なのにどうしてなんだろ……。使い勝手はアルファードなどのLクラスミニバンよりすばらしいと思うんだけど」
と自画自賛しつつ、つぶやくD:3君。渡辺さん、どうして1台という数字なんスかね?
「ディーラーが売る気がないんでしょうね。販売の現場は数を売りたいので、D:3よりは低価格のD:2(こちらはスズキソリオのOEM車)のほうに力が入っているんでしょう。さらに、NV200そのものの価格設定が高い。1.6Lなのにセレナの廉価グレードとほぼ同じの約233万円は高すぎます。D:3はその煽りを受けている感じですね」
三菱で人気のACTIVE GEAR仕様を出して、起死回生を図るしかないね。
■スズキSX 4 S-CROSS 2017年1月販売台数13台
3月決算の翌月ということもあり、販売超低調車が目立つのが4月。スズキSX4 S CROSSは13台だ。ハンガリー生まれなので「おっ、輸入車か!」と勘違いして買う人もいそうだが(←いるわけないだろ)、この数字。
「ハンガリーからの輸入車をしょぼしょぼ売っている感じ。例えば商談で好みの色がないと“じゃ、その色が入ったらまた買いにくるわ”となるなど、バンバン売っている状況じゃないと思う。
で、このクルマはアイドリングストップなし自動ブレーキなし。かたや同じプラットフォームのエスクードにはそれらが付いている。同じようなキャラのエスクードにお客が流れるのは当然のこと。また、7月のマイチェンが知られていて、買い控えで13台ということもあるでしょうね」
とは渡辺陽一郎氏の分析。
■スズキエスクード2.4 2017年5月販売台数18台
上記のとおり、SX4 S-CROSSのお客さんがエスクードに流れているというのであれば、気になるのがエスクードの販売台数。どんなもんかなと思って調べてみると、エスクード2.4が2017年5月=18台という数字。
お、おう……。
「2.4」はいわゆる旧型モデルで8月生産終了となったが(現在は直噴ターボ搭載の1.4となる)、これはちょっと寂しい数字じゃないか。
「このクルマ、実は超お買い得です。FRベースの2.4Lで、センターデフ付き、副変速機もある。これで176万円からあるから、コスパは高い。まずまず売れていたら、現行モデルとの併売も続いただろうに、実に惜しいですよね。こんなにお買い得ですよとスズキのディーラーへ言うと『え、そうなんですか』と驚く(笑)。それじゃダメだよね。売れないですよ」
とは渡辺陽一郎氏。
「たくましいセンターデフ付きで男の価値が上がると思ったんだけどよ~。今のシティ感覚のSUVの時代じゃ、クロカンの匂いがする俺なんてお呼びじゃないということかい」
と、男らしく散るエスクード2.4君であった……。
■ホンダレジェンド 2017年4月販売台数20台
いっぽう2017年4月、それまで低空飛行を続けていたレジェンドがついに20台という月販台数を記録。
ホンダのフラッグシップがこの数字では“旗艦”も沈んじゃいますよ。渡辺さん、どうなんでしょ?
「この場合もディーラーが売る気がないし、買う人もいない。ハイブリッドシステムをはじめホンダの技術を詰めこんだ一台で、確かに力を入れているモデル。室内は広いし質感はいいし、オーディオも凝っている。このクラスで680万円だからコスパもいい。でもそもそもの話として680万円のホンダを買う……という需要がないということだろうね。この価格のセダンならホンダに限らず、輸入車にいくのが実情でしょう。悲しいかな」
なるほど。当のレジェンドさんはどう感じているのか?
「以前は私だって大衆車に近い存在でしたよ。好きで680万円モデルになったんじゃないんだよ……。最新技術をこんなに盛られない身軽なクルマになりたいよ。はぁ~(深いため息)」。
ちなみに2017年9月の販売台数は11台。大丈夫、あとは上昇するだけだ。
■ホンダNSX 2017年4月販売台数21台
さてホンダのフラッグシップといえばNSXはどうか。こちら月販台数初登場の4月が21台。直近の9月は18台と実に厳しい。
「このクルマは買えない、とみんな思っているので売れない。日本への割りあて台数が決まっているので、来年の受注もすべて終了。メーカーのWEBサイトには載っているけど、ディーラーWEBサイトには載ってないという変な状況で、ディーラーで“見積もりをお願いします”というと断られる(笑)。珍しいですよね」
と渡辺氏もやや呆れ気味。「日本人をナメとんのかい、キー!」と日本猿も興奮中だ。
■マツダアクセラハイブリッド 2017年7月販売台数38台
次は2017年7月、この月で目についたのがマツダアクセラハイブリッドの38台。
「トヨタからハイブリッドシステムをもらったのに、なぜ僕はプリウスのように売れないんだろ。もっとCMなどでハイブリッド搭載とPRしてほしいよなぁ」
とつぶやくけれど……。
「アクセラには1.5Lディーゼルがあり、そっちのほうがハイブリッドより20万円ほど安い。それならお客さんはそっちへいくよね」
と身内の敵を指摘する渡辺氏。
■ホンダジェイド 2017年7月販売台数41台
さらにこの月、ホンダジェイドは月販台数41台。厳密には「40台以下」という企画の趣旨からズレるが、この数字は放っておけないぞ。
「よく3列目シートが“炎上する”モデルですが、実は2列目シートもイマイチ。座面奥行が1列目より55mmも短く、ゆったり座れない。また価格も253万円からと高い。中国で売れているからって、日本でそのままバカまじめに売ってもアカンということでしょうね」
とビシッと指摘する渡辺氏。
■トヨタMIRAI 2017年4月販売台数27台
最後はトヨタMIRAI。FCVで水素充填場所が限られるエリアという特殊性があるとはいえ、2017年4月は27台という低さですけど……。
「量産FCVという世界初のチャレンジングなクルマだよ、私は。ゆえに価格はチト高いけどそんなの気にしない。台数だって気にしない。気になるのは地球環境だけです」
とレクサス以上にプライドが高い感じ。発売当初は〝納車2年待ち〟だったから、買いたくても買えないとお客さんは思っているのでしょうか。確かになかなかハードルが高い車。当社の社用車でもありますが、好んで乗ろうとする編集部員は少ない。
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