2019年以来、約4年ぶりの開催となったジャパンモビリティショー2023。人やモノを移動させる能力「モビリティー」を冠したことで、過去最大となる475社が参加。会場はこれまで見たことがない技術や製品がズラリと並び、例年以上の活気と面白いイベントとなっている。もちろん自動車メーカーのブースも同様で、各社とも最新モデルを展示している。
主役は、バッテリーに溜めた電力でモーターを動かして走るBEV(バッテリーEV)。お披露目されたモデルのすべてがBEVというわけではないが、8割ほどはBEVもしくは電動駆動を積極的に用いるタイプのHEV(ハイブリッドEV)で、この1~2年で急速に普及が進む電動駆動モデルの勢いを改めて実感する。
【フォトギャラリー】JAPAN MOBILITY SHOW 2023に登場した最新の車両をお届け
ただ、少し変わってきているのが、電動(BEV&HEV)に対する各社の訴求ポイントで、これまでの「ランニングコストが安い」や「充電可能」「電気を溜めて非常時のバッテリーとして使える」といった経済面での強みだけではなく、クルマ本来の魅力である走りの「質」の良さをアピールするメーカーが多くなっている印象だ。
モーター主体の電動走行は、豊かなトルク力を瞬時に発揮できる特性もあって、内燃機モデルではなかなか味わえない俊敏な加速感や静粛性という武器がある。その魅力をさらにプラスにするため、シャシーやサスに独自の設計を組み合わせることで、そのメーカーならではのクルマ、走る楽しさを実感できるモデルに仕上げているというわけだ。
その流れを裏付けてくれるのが、各社ブースの中央に鎮座しているスポーツモデルの存在感。美しいスタイリングのスポーツカーはモーターショーの花形であるが、今回は例年以上によく目立っている。
おのおのモデルごとにメーカー独自の設計思想もふんだんに盛り込まれており、「バッテリーはここで、モーターはここかな?」といった少しマニア的視点でもかなり楽しい。同じようなモデルも皆無なので、この先は「走り」のテイストで電動モデルを選ぶ時代が来ることを、肌で実感してもらえるはずだ。
ジャパンモビリティショーの会場で、ぜひとも生の目でチェックして欲しい注目モデルを紹介しよう。
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■トヨタ FE-Se(エフティーエスイー)
ワイド&ローのいかにもスポーツカーといったシルエットに目を奪われるが、その真価はプラットフォームやパワートレインといったメカニズムにある。プラットフォームを前後でアルミ一体成形するギガキャストを用いたトヨタ最新の電動プラットフォームに、低全高形状の駆動用バッテリーを組み合わせたパッケージは、今回のショーで発表されたSUVの『トヨタFT-3e』や『レクサスLF-ZC』と同じものだが、クーペスポーツに最適化した独自の制御プログラムを組み合わせることで、動力特性やハンドリング性能は別物に仕上げていることがポイント。バイワイアのガングリップステアリングやセミバケットシートが備わるコクピットまわりも、運転への没入感を意識した選択。電動時代になっても操る楽しさを満喫できるモデルだ。
■トヨタ FT-3e(エフティースリーイー)
クーペの『FT-Se』に対して、こちらはSUVタイプとなるボディシルエットを採用する。パッケージを構成する主要な部品構成は『FT-Se』と同じだが、全長とホイールベースを拡大し、さらに制御プログラムを『FT-3e』専用とすることで、SUVらしい落ち着き感のある、まるで別の走りに仕立てているとのこと。このあたりの味つけの違いができることも電動モデルならではの特徴といえる。
スタイリングはSUVとしてはロールーフのクロスオーバールック。面白いのはサイドに配置されるデジタルサイネージの存在。残充電量を数値もしくはインジケーターで表示したり、キーロックの状況、室内温度や空気の品質なども表示される。BピラーとCピラー付近にはカメラも配置され、車両に近づく人物を認識することで、ドアロックが自動的に解除する機能も備わる。電動のみならず電脳でも最先端が注がれている。
■ニッサン・ハイパーフォース
ニッサンはデジタル展示も含めたBEVの最新コンセプトモデルを5台用意しているが、その中で主役といえるのが『ハイパーフォース』だ。究極のドライビングプレジャーを目指して開発されたこのモデルは、最高出力1000kWを発揮できる近未来のスーパースポーツという位置付け。
ダウンフォース性能を強く意識したエアロパーツやカーボン素材による軽量化、日産独自の四輪制御技術「e-4ORCE」により、サーキットやワインディングで最高の性能を発揮するという。
そして見逃せないのが、リヤビューに燦然と輝く4つの丸型テールライト。文字や言葉で語られてはいないが、どうみても「GT-R」の後継もしくはスタディモデルであることを示唆しているのは明らかだ。
■ホンダ・プレリュード コンセプト
2022年の段階で、4輪電動技術を用いたスポーツモデルの存在を明らかにしていたホンダ。事前の噂ではS2000とも噂されていたが、いざ蓋を開けてみれば、あまり予想されていなかった『プレリュード』が復活することになった。
コンセプトを名乗るとはいえ、その流麗なシルエットはすでに製品車に限りなく近く、さらにブラックのスモークガラスから朧げながら見えるキャビンもしっかりつくられていた印象。
開幕のプレゼンでは製品化までまだ時間がかかるとしていたが、率直にこのまま街に走り出すこともできそうなレベルに見える。パワートレインの詳細も非公開だが、エンジニアの囲み取材での話からすると、現時点で普及のハードルが低いハイブリッドも用意される模様だ。
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