2023年WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースは、6月9日22時(日本時間10日5時)にスタートから6時間を迎えた。レースの4分の1を経過した時点では、フェラーリAFコルセの51号車フェラーリ499P(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョビナッツィ)が首位に立っている。
■コースの一部がウエットでスタート
【途中経過】2023年WEC第4戦/第91回ル・マン24時間 決勝6時間後
フランス・ル・マン市近郊に位置する1周13.626kmのル・マン24時間サーキット(通称サルト・サーキット)を舞台に行われる伝統の一戦は、第1回の開催から数えて100周年を迎えた。最高峰ハイパーカークラスに16台もの車両が参戦するというタイミングも相まってテストデーの時点から多くの観客が来場していたが、決勝日はより多くの観客がサーキットに詰めかけている。
スタート1時間ほど前の時点で、公道区間の一部は雨。常設のブガッティサーキット上空にも暗い雲が立ち込めるが、なんとかスタートセレモニー中は降らずに持ちこたえ、ウエット宣言が出されるなか16時のスタートを迎えた。
ユノディエールでは路面が乾いていない状態のなか、オープニングラップではフェラーリ499Pの2台を8号車トヨタを駆るセバスチャン・ブエミが攻略、インディアナポリスの進入までにトップへと浮上する。その後方では、7号車トヨタのマイク・コンウェイも3番手へと順位を上げる。なお、トヨタの2台はソフトタイヤを、その他のワークス陣営はミディアムタイヤを選択している。
さらに後方ではジャック・エイトケン駆るアクション・エクスプレスの311号車キャデラックVシリーズ.Rがユノディエールの第1シケイン立ち上がりでクラッシュ、インターユーロポル・コンペティションの32号車オレカも第1シケインでスピンしてサンドトラップに埋まり、レースはオープニングラップからセーフティカー(SC)が導入されることとなった。311号車は自力でピットへと戻ったが、左フロント部を大きく破損しており、ガレージで修復作業に入った。
新SCルールに基づいたパス・アラウンドとドロップバックが行われた後、39分経過時点でSCは解除に。このSCランの間に、濡れていた路面もほとんど乾いたように見える。
ここで3番手の7号車トヨタを駆るマイク・コンウェイが、オープニングラップのブエミと同様にインディアナポリス手前でフェラーリを攻略し、トヨタのワン・ツー体勢を築くことに成功するが、50号車フェラーリのニクラス・ニールセンも食い下がり、ミュルサンヌで抜き返す。8号車がリードを築くなか、2番手以下は混沌とした争いとなるが、50号車は開始54分というところでピットへ飛び込む。すると今度は51号車のカラドがコンウェイをパスし、2番手へ。コンウェイはさらに順位を下げていき、やがて1時間すぎにはポルシェ75号車にもつかまってしまう。
1時間過ぎから本格的なルーティンピットが始まると、給油時間の差から先にピットインしていた50号車フェラーリが先行、3号車キャデラックもこれに続き、8号車トヨタは3番手となる。その背後では51号車フェラーリ、2号車キャデラック、3台のワークスポルシェ963、7号車トヨタが接近戦を繰り広げた。
なお、この最初のピットでトヨタの2台はソフトからミディアムへとタイヤを履き替えている。
■序盤からクラッシュが続発する荒れた展開に
1時間30分経過を前に、ニールセン・レーシングの14号車オレカが1コーナー進入右側のウォールに大クラッシュ。さらに数分後、タワー・モータースポーツ13号車オレカのリッキー・テイラーがIDECスポールの48号車と接触してバランスを崩し、テルトル・ルージュ先で左側のガードレールへクラッシュ。大きなダメージを負ったが、テイラーはマシンを降りて歩く姿が確認されている。これにより、一時的にコース上の3箇所でスローゾーンが導入されたことから、トヨタ2台を含めた多くの陣営がピットへと向かった。
この事故処理が続くなか、今度はダンロップシケインで3台が絡む事故が発生。3号車キャデラックVシリーズ.Rがリヤを破損し、AFコルセの21号車フェラーリが大破してリタイアしたほか、GMBモータースポーツの55号車アストンマーティンもクラッシュしリタイアを喫している。
2時間20分経過時点でハイパーカークラスは全車が2回のピットを終え、首位は8号車トヨタに。2番手に38号車ポルシェ、3番手に6号車ポルシェが続き、7号車トヨタは50号車フェラーリにパスされ、5番手に後退する。
50号車のアントニオ・フォコはその後も6号車ポルシェをパス、38号車ポルシェに追いついたところで、2台同時にピットイン。ここでスローゾーン終了のタイミングが影響したか、首位8号車トヨタと2番手6号車ポルシェとの差が一気に2秒近くにまで縮まるが、6号車にはこのタイミングでスローパンクチャーが発生、ピットへと向かった。
この間もアイアン・リンクス60号車ポルシェ911が森のエス出口でワイドになってスピン、後続のプロトン・コンペティション16号車ポルシェと接触したり、テルトル・ルージュ立ち上がりでユナイテッド・オートスポーツ22号車とデンプシー・プロトンの77号車が接触するなど荒れ模様が続くと、2時間40分経過時点ではポルシェコーナー周辺で雨が降り始めた。
■突然の雨に大混乱。長時間のSCランに
するとここでグスタボ・メネゼスの94号車プジョー9X8が突如速さを発揮。ポルシェ勢と51号車をかわし、この時点での2番手にまで浮上する。さらにポルシェコーナーの雨は強くなり、ワーケンホルスト・モータースポーツの100号車フェラーリがサンドトラップに埋まってしまう。
さらにポルシェコーナー入口では、チームWRT31号車、709号車グリッケンハウス、3号車キャデラック、GRレーシング86号車ポルシェ911らが次々と水に乗ってスピンを喫し、一時極めて危険な状態となり、前後して2時間53分が経過したところでSCが導入された。なお、リシャール・ミル・AFコルセ83号車フェラーリのリル・ワドゥも高速でバリアにヒット。ワドゥは自力でマシンから降りているとのことだ。
SC中、暫定首位の50号車はステイアウト、51号車もステイアウトしワン・ツーとなるが、そのうしろの94、38、75、5号車はピットへ飛び込みレインタイヤへと交換。フェラーリ2台以外でも、トヨタ2台、6号車ポルシェ、2号車キャデラックはスリックタイヤのままステイアウトを選択する。
しかしスリック勢はSC隊列に追いつくこともままならいほどのスローペースでしか走行できず、次の周にたまらずピットへ。これにより、94号車プジョーがトップに立つこととなった。
このあと雨は次第に上がり、路面が徐々に乾いていくなかで、3台のSCランは長時間続いた。今回の新ルールにより、SCが1台に統合されるまでは、ピットレーンはオープンのままとなるが、3時間40分経過を前に、スリックへとタイヤを戻す陣営が現れ始める。
このタイミングでピットレーンがクローズ、SC隊列は1台に統合されることとなった。パスアラウンドとドロップバックをすませ、レース再開は4時間18分経過時点。ユノディエールなど一部はハーフウエット、他はほぼドライといったコンディションだ。再開されると、6号車ポルシェ、7号車トヨタ、8号車トヨタはピットへ向かい、翌周には94号車プジョー、75号車ポルシェらもピットイン。これで暫定首位はハーツ・チーム・JOTA38号車ポルシェのものとなった。コース上ではフェラーリ2台、ポルシェ勢による激しい接近戦が繰り広げられた。
■トップ快走のハーツ・チーム・JOTAに悲劇
4時間30分すぎ、ケビン・エストーレのドライブする6号車ポルシェが右リヤタイヤを破損、スローペースでピットへと戻ってくる。先のスローパンクチャーも右リヤとの情報があり、何らかの問題を抱えているのかもしれない。
ミディアムタイヤを履く38号車ポルシェは、ソフトタイヤを履く後続の2台のフェラーリとの差をじりじり広げていく。4番手をゆく5号車ポルシェには、SC時の追い抜きがあったとしてドライブスルーペナルティが科せられた。
その直後の4時間52分、快調にトップを飛ばしていたイーフェイ・イェの38号車ポルシェが、ポルシェコーナーでコースアウトしタイヤバリアにクラッシュ。マシン左サイドとリヤを損傷し、ピットへと戻る。エンジンカウルも散乱したため、フルコースイエロー(FCY)が導入されることとなった。
これでフェラーリがテール・トゥ・ノーズ状態でワン・ツーとなり、FCYが解除され5時間が経過するところで2台をピット位置順へと入れ替え、50号車、51号車の順で同時にピット作業を行った。
また、ポルシェでは5号車にもトラブルが発生。センサーの不具合とスローパンクチャーによりユノディエールでスローダウンし、その後ピットへと向かった後、コースに復帰している。
5時間35分頃、フェラーリは51号車が前に出て総合トップに返り咲く。日没を迎え、6時間が経過した時点では51号車フェラーリが首位、75号車ポルシェが続く展開となっている。
全車がオレカ07・ギブソンのパッケージで争うLMP2クラスは、序盤からJOTAの28号車がリード。6時間経過時点での首位は、インターユーロポル・コンペティションの34号車となっている。
LMGTEアマクラスでは、JMWモータースポーツの66号車フェラーリ488 GTE Evoが首位、アイアン・デイムスの85号車ポルシェ、AFコルセ54号車フェラーリが続いている。
木村武史のケッセル・レーシング57号車フェラーリはクラス7番手、最後尾スタートとなったDステーション・レーシングの777号車(星野敏/キャスパー・スティーブンソン/藤井誠暢)はクラス9番手、ケッセル74号車はクラス13番手でレースを続けている。
すでに7台ものマシンが姿を消したル・マン。22時過ぎには再び雨がサーキットを襲い、これからの夜の時間帯にも波乱の予感が漂っている。
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