F1サンパウロGP期間中にマクラーレン・ホンダMP4/5Bを走らせる機会を得たルイス・ハミルトンは、「このようなことは2度とない」とデモ走行の体験を噛み締めた。
2024年は3度のF1世界チャンピオンにして伝説的F1ドライバー、アイルトン・セナが1994年のイモラでこの世を去ってから30年という節目の年。セナの母国ブラジルのインテルラゴス・サーキットで開催されたサンパウロGPでは、追悼イベント「SENNA SEMPRE」が実施された。
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このイベントでは、マクラーレンとホンダが協力し、1990年シーズンにセナがF1ドライバーズチャンピオンに輝いたMP4/5Bのデモ走行が行なわれた。
当初ステアリングを握るドライバーはシークレットとされ、デモ走行後に正体が明かされる予定だったものの、サンパウロGPを前にハミルトンがドライブするという情報が公になってしまった。現役F1ドライバーがグランプリ期間中にヒストリックカーのデモ走行イベントに参加するというのは非常に珍しいことだ。
幼少期からセナに憧れF1ドライバーを志し、2022年にはブラジル名誉市民となったハミルトンは今回のサプライズを実施するために、セナのカラーリングを施したヘルメットを作成したものの、“ネタバレ”が起こったためサンパウロGP用のヘルメットを着用することとなった。
また、豪雨によりデモ走行自体も予選同様に決勝レースの前に延期。ただ、その決勝日も天候には恵まれず、ハミルトンは雨のインテルラゴスでウエットタイヤを履いたMP4/5Bを走らせた。
ピットロード途中からコースへ入ったハミルトンは大歓声の中、まずはゆっくりと手を降りながらアウトラップを走ると、2周はスピードアップ……ホンダV10サウンドを響かせ、暴れるマシンを抑え込みながらターン1を回った。
ハミルトンが走らせるMP4/5Bを一目見ようと、ピットウォールにはF1関係者も多数詰めかけ、ポディウムにはセナの姉ビビアーニや、F1のステファノ・ドメニカリCEO、ホンダの三部敏宏社長などの姿もあった。
ハミルトンは4周目の最終セクターでスピードを緩めると、コース脇のマーシャルからブラジル国旗を受け取り、それを右手で掲げながらゆっくりと1周。ホームストレートでMP4/5Bを降りたハミルトンは、グランドスタンドに向かって再びブラジル国旗を掲げた。
走行後、インタビューに応じたハミルトンは次のように語った。
「とても、とても感慨深いよ」
「子どもの頃、ここで(セナが)レースを走っている姿を見ていたのを思い出した。あの音を聞いて……彼がここを走り、あのレースで優勝するのを見ていた(編注:セナがブラジルGPで優勝したのは1991年と1993年)。このようなチャンスを得られたことが信じられなかったし、僕のキャリアの中で最高の栄誉だ」
「このブラジルの美しい観衆、昨日は1日中雨の中で、そして今日は朝3~4時から集まってくれた人たちの前で実施できた……とても特別な1日になった。これを実現させてくれたみんなに心から感謝している」
「ここで受けた愛は、僕とっても家族にとっても驚きだった。ブラジルのみんなの愛とサポートに感謝している」
「僕はブラジルとそのみんなが大好きだし、この国で市民権を得られたことをとても光栄に思っている。セナが誇りに思ってくれていることを願っている。この週末で最高のドライブだった」
またマクラーレンからメルセデスへと渡り歩き、来季からフェラーリへ移籍するハミルトンは、MP4/5Bをインテルラゴスで走る機会は今後訪れないだろうと語った。
そして、できることならそのままグランプリに参戦したいとハミルトンはジョークを飛ばした。サンパウロGPの週末を通してメルセデスW15のハンドリングに苦慮していたことも関係しているのかもしれない……。
「この瞬間のために立ち止まって、(走行を)許可してくれたみんなに感謝したい。僕のキャリアにとって本当に名誉なことだ」とハミルトンは言う。
「このようなことはおそらく2度とないから、この瞬間を大切にしたい。だから僕は走行を止めなかったんだ。1~2周、予定よりも多く走った」
「これは本当のレーシングカーなんだ。できることなら(MP4/5Bで)今回のレースに出たい(笑)そうなれば嬉しい!」
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