フル電動フォーミュラレースとして争われているABB FIAフォーミュラE世界選手権には、日本のカテゴリーに参戦経験があるドライバーも参戦している。3月30日に行われた東京E-Prixでは、久しぶりに日本でレースができると満面の笑みをみせていた。なかには日本に来て、当時所属していたチーム関係者や日本でともに戦ったライバルたちに会っていた様子がSNSでも公開されていた。
なかでもニック・キャシディ(ジャガーTCSレーシング)とサッシャ・フェネストラズ(ニッサン・フォーミュラEチーム)は、かつては日本に住んでレースに臨んでいた経験もあるため、ふたりとも東京でレースできることを感慨深いと話しており、同時にスーパーGT参戦時代に苦楽をともにしたチームメイトとの近況について話してくれた。
期待されたキャシディとフェネストラズ。つまずいた予選の内訳とレースでの挽回/フォーミュラE東京大会決勝
■「莉朋はこれから自信を持って走れるようになる」フェネストラズ
2019年から2022年まで日本のカテゴリーで活躍したフェネストラズ。2019年には全日本F3選手権でシリーズチャンピオンを獲得し、2022年には全日本スーパーフォーミュラ選手権でランキング2位を獲得した。
彼にとってライバルでありチームメイトの存在なのが、2024年からFIA F2に挑戦中の宮田莉朋だ。スーパーGTでチームメイトだったときは、ともに食事に出かけるなど仲が良かったことで知られている。
「以前ほどの頻度ではないけど、彼と連絡を取り合っているよ。今年の夏あたりに僕の家に遊びに来てくれたらなと考えている」とフェネストラズ。宮田のF2挑戦もできる範囲内でチェックをしているようだ。
「今年は(スーパーフォーミュラとは)まったく異なるチャレンジをしていて、最初は難しいと思う。特に莉朋はピレリタイヤの経験が少ないから、FIA F3を経験せずにFIA F2に行くと、間違いなくタイヤの使い方で苦戦するだろうね。それが彼をもっと難しい状況にさせている」
宮田にとってFIA F2は難しい挑戦だと語りつつも、これから徐々にパフォーマンスを上げていくのではないかとフェネストラズは予想する。
「彼は徐々に自信を持ち始めていて、これからもっと良くなっていくだろう。F2の上位ドライバーになると、他のクルマでプライベートテストをやっている場合もある。彼にとってはそれが一番必要なことだと思う。そのあたりはトヨタが彼を助けてあげて、走る機会を作ってあげられると、彼の経験値がさらに上がって、もっと良くなっていくと思う」
「彼は本当に素晴らしい選手で、ドライビングだけではなく、コースの外でもナイスガイだ。正直、僕としては羨ましい気持ちもある。僕もチャンピオンを獲りたかったふたつ(スーパーフォーミュラとスーパーGT)のタイトルを彼は手にしたわけだからね。でも、日本で結果を残して次に繋がっているところを見ると、すごく嬉しいね」
現在はニッサン・フォーミュラEチームに所属するフェネストラズ。2022年で一旦日本のレースを離れることが決まったときも「いつか日本のレースに再挑戦したい」と明言していた。
「僕がニッサンのドライバーになってから『スーパーGTに戻ってこないの?』と多くの人に聞かれるけど、今はフォーミュラEのプログラムに集中したいと思っている」とフェネストラズ。
それでも、可能性が完全に消えたわけではないようで「将来……いつになるか分からないけど、またこのチャンピオンシップ(スーパーフォーミュラとスーパーGT)を戦いたいなと思う」と笑顔をみせた。
■「今でも会う機会がある」キャシディが平川亮にエール
そして、2015年から2020年まで日本で戦い、全日本F3、スーパーフォーミュラ、スーパーGTでチャンピオンを獲得したキャシディと親交が深いのが、2017年から2020年までスーパーGTでチームメイトとなった平川亮だ。
「今でも亮と会う機会があるし、トレーニングも一緒にしている。実は僕と亮の家は歩いで5分ほどで、すごく近いんだ」とのこと。日本にいた頃も一緒に過ごす時間が比較的多く、その関係は今でも続いているようだ。
「彼は(WEC世界耐久選手権で)2回ワールドチャンピオンに輝いているし、今年はF1のリザーブドライバーとしても頑張っている。すごく良いことだと思う」と平川の活躍にエールを送っていた。
■「野尻智紀の速さを今でも覚えている」バンドーン
フォーミュラEシーズン8のチャンピオンであるストフェル・バンドーンも、2016年にスーパーフォーミュラで戦い2勝を挙げた経験を持っている。当時はDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに所属し、当時国内トップフォーミュラ3年目の野尻智紀がチームメイトだった。
「彼とは長いあいだ話せていないけど、彼がスーパーフォーミュラやスーパーGTで素晴らしいレースをみせていているのは、僕も見ていて嬉しい気持ちになる」とバンドーン。野尻がスーパーフォーミュラでチャンピオンを獲得したときもSNSで反応するなど、今でも少なからず動向はチェックしているようだ。
野尻は2021年と2022年にスーパーフォーミュラ連覇を果たし、シリーズを牽引する存在となっている。しかし、バンドーンが日本にやってきたときは、今とは違う立場だったという。
「スーパーフォーミュラに参戦したときは、僕が彼のメンター(お手本役)みたいな感じになっていて、僕からいろいろと学んでいた部分があったみたいだけど、毎回すごく速かったということは今でも覚えている」とバンドーン。
「今ではすごく成長して良いドライバーになったと思うよ」と感慨深い表情をみせていた。
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