新しい表情を獲得したフロント・デザイン
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
8代目へと生まれ変わったフォルクスワーゲン・ゴルフ。ファミリー・ハッチバックの市場をリードし、カテゴリーを定義してきたモデルだ。われわれの期待も、かなり高い。
最新のゴルフは、先代の7代目と同じプラットフォームをアップデートして用いている。ボディサイズも大きくは変わらない。エンジンやトランスミッションも、先代の改良版を搭載するグレードが存在する。
かといって、単純な先代の焼き直しではない。8代目のゴルフは明確に、良くも悪くも、変化している。
ボディの見た目やインテリアの作り込み、ドライビング体験。ゴルフがはらむリスクは大きい。多くのユーザーが実際に運転し、ネットを通じてさまざまな評価が下されるはず。ソーシャルメディア時代に生まれたゴルフだ。
控えめなデザインとモデルの位置づけは変わらないが、欧州ではクルマの中心的な存在ではなくなるだろう。過去数十年に渡って、力強く欧州大陸で販売台数を稼いできたモデルだったのだが。
8代目ゴルフは、4代目からワッペングリルを得た5代目への進化以上に、大きなスタイリングの変化が与えられている。最近、市街地で新しいゴルフだと目を奪われたのはいつだろう。
クルマのプロポーションは従来どおりゴルフ。特にリア周りのデザインは、ゴルフらしい。一方で顔となるフロント周りは、新しい表情を獲得している。
トーションビームのリアサスに130ps
過度に大きく感じられたヘッドライトと、背の高いフロントグリルをまとっていた世代もあったが、8代目ではよりワイドでスリムなデザインへと置き換わった。一見すると、あまりフォルクスワーゲンらしいデザインではない。慣れるまで、少しの時間が必要かもしれない。
英国市場に投入されるエンジンは、英国のゴルフユーザーには見慣れたラインナップ。ガソリンエンジンは、109psを発揮する1.0LのTSI 3気筒ターボから、1.5LのTSI 4気筒ターボまで、何段階かが用意される。
ディーゼルエンジンは、2.0LのTDIで、114psと150psの2種類が導入される。電圧48Vのマイルド・ハイブリッドを搭載したモデルは、1グレードのみ。150psの1.5LガソリンエンジンとDSGトランスミッションの組み合わせで、eTSIと呼ばれる。
英国では、追ってゴルフGTEと呼ばれるプラグイン・ハイブリッドも導入予定。続いてGTIにGTI TCR、GTD、Rのエンブレムを付けたグレードも追加されるはず。
すでにドイツでは、8代目ゴルフの上級グレードを試乗している。四輪ともに独立サスペンションで、アダプティブダンパーと可変ステアリングを装備していた。
英国で試乗する右ハンドル車は、エントリー・グレードトリム。16インチのホイールに、通常の固定式ダンパーが付いている。リア・サスペンションはトーションビーム式で、搭載されるエンジンは130psの1.5L TSIだ。
デジタル化が一気に進んだダッシュボード
代々フォルクスワーゲン・ゴルフを乗り継いできた経験豊かなドライバーは、デジタル化が一気に進んだダッシュボードをどう受け止めるだろうか。簡単に押せるボタンの数は少ない。メーターパネルは、全面モニター式になった。
このインテリアの違いは、先代との差別化を図っている部分でもある。デジタルに対して、アレルギーを持っている人もいるかもしれない。ただし、タッチモニターが並ぶインテリアは、筆者好みだ。
サンルーフの開閉からヒーターの温度を下げるまで、すべてをタッチモニターで操作するテスラのデザインとは違う。使いやすさは、慎重に検討が重ねられたことが伺える。フォルクスワーゲンのゴルフが強みにしてきた馴染み深い部分も、わずかには残っている。
エアコンの温度とオーディオの音量という、頻繁に操作する機能へのインターフェイスとして、専用のタッチセンサーが用意されている。これが使いやすい。
特に音量の調整は、タッチセンサーを左右にスワイプするだけ。モニターからメニューを掘り下げる必要はない。
タッチモニター式のインフォテインメント・システムも、使用頻度や重要度の高いメニュー項目は、モニター下部に用意されたショートカットボタンから簡単にアクセスできる。ホーム画面からナビへの切り替えも、一発で済む。
コストの制限を感じさせる車内
モニター式のデジタルメーターは、表示は鮮明でレイアウトの変更が可能。過度に画面を混雑させることなく、必要な情報を追加することができる。
スマートフォンのワイヤレス充電機能と、アップ・コネクトと呼ばれるコネクテッド機能も、英国では標準装備。エントリーグレードの試乗車にも搭載されていた。
ソーシャルメディア時代のスマートフォン世代は、恐らくこのクルマを気に入るだろう。最初は馴染めない人でも、社会の変化とともに、慣れていくはず。
ゴルフが備えてきた、インテリアのスマートで肉厚な素材感や小物入れの処理、内装パネルのフィッティングなどは、気分を良くしてくれるものだった。だが、今回のゴルフでは充分な予算は回されていないようだ。
先述の、デジタル技術へコストが投入されたのだろう。ドアを閉めた時の音は重みを感じにくいし、インテリアトリムも、もっと費用を投じることができたはず。
ただし、メルセデス・ベンツAクラスやアウディA3など、プレミアム・ブランドのハッチバックと比べれば、知覚品質で劣るという程度。本来のフォルクスワーゲンの位置を考えれば、妥当だろう。
車内空間と荷室容量は、ブランドを問わず充分な競争力を持っている。このクラスで最も実用性が秀でているわけではないが、8代目ゴルフのパッケージングは素晴らしい。
確認はこれくらいにして、後編では英国の一般道へ出てみよう。
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