車検整備の途中経過を見学したく、「フェラーリ横浜サービス・センター」に向かった。オーナーが希望すれば、愛車の整備状況を見学出来るという。
ピット内にあるボクの360モデナは、すでにいくつかの整備が進んでおり、部品も一部外されていた。どうやら、整備は順調に進んでいるようだ。
白を基調にした「フェラーリ横浜サービス・センター」のピット。なお、同サービス・センターは、神奈川県横浜市都筑区葛が谷にある。横浜市営地下鉄グリーンライン「都筑ふれあいの丘」駅のすぐ近くだ。「整備を進めていますが、ほかに大きなトラブルは見つかりませんでした」と、髙橋忠久工場長は話す。「ただし…」と、髙橋氏が続ける。
「左バンクのエキゾース側にあるタイミングベルトが、元から1コマずれていたようです」とのこと。
1コマのずれが、どんな影響を及ぼすのかボクはわからないゆえ、焦る。今後、重篤なトラブルが発生するリスクが高まるのか?
「大きな故障に結びつくわけではありませんので、安心してください」と、高橋氏は話す。とはいえ、1コマずれているのはなんとも気持ち悪い。
「1コマずれていると、パワーが落ち込んでいるはずです。具体的な数値は計測しないとわかりませんが、おそらく10~20ps程度ダウンしているかと。バルブタイミング機構が正常に動かなくなりますし、排ガス数値も変わってきます。場合によっては、エンジンも掛かりづらくなりますね」
【前回のおさらい:Vol.24 運命の車検<中編:車検費用判明!>】
360モデナのエンジンはタイミングベルトを使うが、F430はチェーン駆動に変わった。これにより、整備性が大幅に向上したという。はたして、原因はいかに?
「おそらく、タイミングベルトの組み付けミスと思われます。クランクシャフトに対し、カムシャフトがずれたまま取り付けられていましたが、本来であればカムシャフトの位置を、規定値に戻してから取り付けます」とのこと。経年劣化によるずれは考えにくいそうで、あくまで人的ミスが濃厚という。また、正規ディーラーによる整備では考えにくいミスでもあるそうだ。
搭載するエンジンは、3.6リッターのV型8気筒DOHCエンジン。最高出力は400ps/8500rpm、最大トルクは372Nm/4750rpm。記録簿を読むと、約10年前にタイミングベルトを交換しているが、作業は正規ディーラーではない。
「フェラーリ横浜サービス・センターは、複数のメカニックで、整備内容を確認しつつ作業を進めます。しかし、規模の小さな工場などは、メカニックがすくないゆえ、ひとりですべての作業を進めるケースが多く、修理ミスの可能性が高まります」と、高橋氏は推測する。
ちなみに、かつて入庫したフェラーリのうち、正規ディーラーで整備を受けていなかった個体のなかには、ブレーキ・キャリパーのボルトがきちんとしまっていないケースもあったというから恐ろしい。
【前回のおさらい:Vol.24 運命の車検<中編:車検費用判明!>】
次々と整備ミス発覚!360モデナの車内では、タイミングベルトの交換作業がおこなわれているようで、フロント・シート背後にあるサービスホールがあけられていた。
タイミングベルトを交換するため、フロントシートうしろにあるサービスホールを開けた状態。整備を担当するテクニシャンの松原俊幸氏は、「エンジンを下ろす手間は省けますが、整備性の良し悪しはなんとも言えませんね」と、話す。ちなみに、エンジンを“下ろす”と記したが、実際は、専用クレーンでエンジンを持ち上げ、ボディから外すという。
テクニシャンの松原俊幸氏はフェラーリ以前、別の高級車ブランドでメカニックを務めていたという。フェラーリの整備にかかわれることについて「大変やりがいを感じます」と、話していた。サービスホールをのぞくと、バルブタイミングの動きをチェックするための分度器とダイアルゲージがあった。
「エンジンバルブの開きはじめの角度を調整しています」と、松原氏は言う。角度調整は1/100mm単位というが、よくわからない。一般的なクルマでは、これほど細かく調整しないそうだ。
バルブタイミングの動きをチェックするため、分度器やダイアルゲージを使う。ちなみに、元あった位置にしるしをつけるのみでは、正確に取り付けられないという。1コマずれていたタイミングベルト。目視ではわかりにくい。「バルブタイミングは、メーカー基準値と異なりました。おそらく、前回タイミングベルトを交換したとき、調整をしなかったのが原因と思われます」
前述のとおり、調整は非常に緻密な作業だ。ゆえに、それなりの知識と技術力を要するという。なるほど、正規ディーラーのタイミングベルト交換費用(部品代込みで約20万円)は、作業内容を踏まえると、決して高価ではないと思う。
【前回のおさらい:Vol.24 運命の車検<中編:車検費用判明!>】
タイミングベルトを交換するテクニシャンの松原氏。交換作業自体はそれほど難しくないという。それより、エンジンバルブの開きはじめの角度をはじめ、各部の微調整が大変とのこと。取り外されたタイミングベルト。フェラーリの純正品も扱うDAYCOの製品であるが、フェラーリ純正ではなかった。交換した純正品のタイミングベルト(おなじDAYCO社製)には、フェラーリのロゴが刻まれる。ちなみに、ほかにも修理ミスがあったようだ。たとえば、ドライブシャフトのゴムブーツを覆う遮熱板が、一部マフラーにあたっていたという。
「おそらく、マフラー交換時かエンジンを下ろしたとき、遮熱板をきちんと元に戻さなかったからでしょう」と、松原氏は言う。
ドライブシャフトのゴムブーツを覆う遮熱板も、きちんと元の位置に戻されなかったゆえ、一部がマフラーにあたっていた(写真の黒い部分)。さらに、一部のネジ頭部がつぶれているそうで、「適正な工具を使っていないか、もしくはスキルが不足しているメカニックが作業したからでしょう」とのこと。これらは、正規ディーラーの作業では通常起こり得ないと言う。
頭部がつぶれてしまったネジが複数個あった。助手席のシート・レールにはネジがひとつなかった(先端部分)。「おそらく脱着時に紛失したのではないでしょうか?」とのこと。オーディオ交換のとき、すでになかったから、前オーナー時代の作業と思われる。“状態のいいフェラーリ”と思っていただけに、少々残念だ。もっとも、エンジンや足まわりは良好というから、今後はきちんと正規ディーラーで整備を受け、コンディションを維持したいとあらためて思った。
【前回のおさらい:Vol.24 運命の車検<中編:車検費用判明!>】
消耗品は想像以上に安価! そして、意外な発見もそのほかの修理箇所についても説明を受けた。ひとつはウォーターポンプだ。水漏れを起こしていたそうで、なかのOリングを交換したという。
交換したOリング。一見、異常はわからない。水漏れの原因はOリングの経年劣化が濃厚という。また、F1マチックのオイル漏れについては、部品交換で対応出来たとのこと。ちなみに、油圧装置を丸ごと交換した場合は約200万円要するという。どうやらF1マチックの部品は、高額なものが多いようだ。
F1マチックの油圧制御装置(F1ハイドロリック)は、故障箇所によって本体をまるごと交換しなくてはいけないという。F1マチックの油圧制御装置(F1ハイドロリック)が、車両に装着された状態。ただし、消耗品などは価格が下がっているという。そういえば、エアコン用のフィルターは7990円だった。フェラーリの部品は、すべて高額というわけでもないのだ。
ちなみに、これまでも1度交換されたエアフィルターも交換された。汚れがつまると、パワーが低下するという。価格は2個で約1万4000円と、リーズナブル。
これまで、フェラーリの部品はなにもかも高いと思っていただけに、上記部品の金額にはおどろいた。正直、エアコン用のフィルターも、数万円するのでは? と、思っていたのだ。
【前回のおさらい:Vol.24 運命の車検<中編:車検費用判明!>】
脱着した部品の数々。ちなみに車検整備中、松原氏と話をしていると、驚きの事実が!
以前、「外置きだから……」と、あきらめたバッテリー・コンディショナー(エンジン停止中、バッテリーに外部電力を送る機器)が、実は外置きでも問題なく使えることがわかったのだ!
フェラーリ純正のバッテリー・コンディショナー。外部電力をバッテリーへ送るために使う。これにより、バッテリーあがりを防げる。これまではバッテリーに接続するとき、フロントウインドウを少し開けないと、バッテリー・コンディショナーのケーブルを通せないと思っていたものの、実はバッテリー・コンディショナーを接続したまま、ドアを閉めても問題ないという。
ドアを閉じた状態で、車内のバッテリーとバッテリー・コンディショナーをつないでいる状態。試しにバッテリー・コンディショナーを接続したままドアを閉めたが、問題はなさそうだ。
「私も最初、接続したままドアを閉めるのには抵抗ありました。しかし、実際閉めてもなんら問題はありませんでした」と、松原氏は話す。
スパークプラグは、NGKの製品だった。ちなみに、バッテリー上がりを防ぐべく、たまにエンジンを掛けていた行為について、意見を訊くと「ただ、エンジンを掛けているだけではあまり充電出来ません。アイドリングによって蓄える電力より、エンジン始動時に消費する電力がうわまってしまうかもしれません」とのこと。これはマズイ! というわけで、早々にバッテリー・コンディショナーを購入しようと決めた。
今まで車検整備に立ち会った経験はないし、メカニックの人と直接話す機会もほとんどなかった。ゆえに、作業中のメカニックと色々話した結果、新たな発見があり知識がアップデートされた。「今後もなにかあったら気軽にお越しください」とのこと。これからも安心して19年落ちの360モデナに乗り続けられそうだ。
はたして、正規ディーラーの車検整備によって、ボクの360は生まれ変わるのか!? 次回、車検後のインプレッションを報告する。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
【連載:29歳、フェラーリを買う】
Vol.24 運命の車検<中編:車検費用判明!>
Vol.23 運命の車検<前編:いざ、正規ディーラーへ!>
Vol.22 中古フェラーリが新車に戻る!? 人生初!ボディコーティングの必要性を考えた
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