FIA国際自動車連盟は5月31日、アップデートされたル・マン24時間レースに向けたハイパーカークラスのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)を公開した。
今回のBoP変更の対象となるのは、WEC世界耐久選手権の最高峰カテゴリーであるハイパーカークラスに参戦しているトヨタGR010ハイブリッドを含む計4つのプロトタイプカーだ。いずれも6月4日(日)のル・マン24時間テストデーを前に車両最低重量が引き上げられた。
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中でも、もっとも大きな変更を受けているのがTOYOTA GAZOO Racingのマシンで、ともに勝利を収めた第2戦ポルティマオと第3戦スパ・フランコルシャン時と比較して37kgの重量増となっている。独自のBoPが採用された開幕ラウンド、セブリングでの勝利時との比較では18kg重い状態となる。
この結果、日本メーカーのハイパーカーは同カテゴリー最重量の1080kgに。今回のアップデートの影響を受けていないグリッケンハウス007 LMH(グリッケンハウス・レーシング)と、ヴァンウォール・バンダーベル680(フロイド・ヴァンウォール・レーシングチーム)とは50kgの重量差が生まれることとなった。
■フェラーリに加え、LMDh勢のポルシェとキャデラックも車重増加
車両最低重量の加算が課せられたのはトヨタだけではない。同じくル・マン・ハイパーカー(LMH)規定のプロトタイプカーを走らせるイタリアのメーカーもその対象だ。
フェラーリAFコルセのフェラーリ499Pは、前戦比でプラス24kg。初めて挑むル・マン24時間レースを前に1064kgとなった。
また、重量加算の波は今季2023年よりシリーズに参加しているLMDh規定のプロトタイプにも及び、計3台がグリッドに並ぶキャデラックVシリーズ.Rは11kgのプラスで1046kgに。カスタマーカーを含め最多4台が登場するポルシェ963は、前戦までの1045kgから1048kgに改められた。
なお、これらの変化はスティントあたりの使用可能エネルギー量の増加によって部分的に相殺されている。これはメガジュール(MJ)単位で測定され、各車のドライブシャフトに取り付けられたリアルタイム・トルクセンサーによって監視される。
最新のBoPテーブルによると、トヨタはこれまでより4MJ分多くエネルギーを使用できる。フェラーリは2MJ、キャデラックも1MJを獲得したが、ポルシェについては調整が行われていない。
■ポルシェが呼びかけた“プラットフォームBoP”の変更ではない
テストデーを4日後に控えた段階で発表されたBoPのアップデートは、LMH規定車のトヨタとフェラーリ、LMDh規定車のポルシェとキャデラックのように、同じプラットフォームで構築されたクルマに対して異なる量の調整が行われていることから、いわゆる“プラットフォームBoP”の変更とは見なされていない。
このプラットフォームBoPについては、トヨタが今季3勝目を挙げたスパ・フランコルシャン6時間レースの後に、ポルシェがル・マンに向けて見直しを行うことを呼びかけていた。
プジョー・トタルエナジーズの“ウイングレス”プジョー9X8、バイコレス製ヴァンウォール・バンダーベル680・ギブソン、ハイパーカー初年度からシリーズに参加しているグリッケンハウス007 LMHは、いずれも3月に公表された最初のBoPテーブルから変更されていない。
当時、WECの主催者であるFIAとACOフランス西部自動車クラブは、第4戦ル・マンが終わるまでは車両ごとのBoPを変更しない意向を示していた。ただし、プラットフォームの変更が事前に発生する可能性があることは理解されている。
ハイパーカークラスに適用されるBoPは、LMHとLMDhという異なるレギュレーションで作られた車両のバランスをとるために設計されており、各車両の潜在的なパフォーマンスレベルを決定するためにシミュレーションデータに大きく依存している。
■ル・マン24時間用ハイパーカーBoP(5月31日付)早見表
プラットフォームマシン最低重量エネルギー量LMDhキャデラックVシリーズ.R1046kg(+11)904MJ(+1)LMHフェラーリ499P1064kg(+24)901MJ(+2)LMHグリッケンハウス007 LMH1030kg(±0)913MJ(±0)LMHプジョー9X81042kg(±0)908MJ(±0)LMDhポルシェ9631048kg(+3)910MJ(±0)LMHトヨタGR010ハイブリッド1080kg(+37)908MJ(+4)LMHヴァンウォール・バンダーベル6801030kg(±0)901MJ(±0)
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