第88回ル・マン24時間レースのLMGTEアマクラスを制したのは、イギリスをベースにするTFスポーツの90号車アストンマーティン・バンテージAMR(サリ・ヨルック/チャーリー・イーストウッド/ジョナサン・アダム組)だった。
TFスポーツはブリティッシュ・ツーリングカー、ならびにブリティッシュGTチャンピオンシップドライバーだったトム・フェリエによって2014年に設立されたチーム。以来ブリティッシュGTやヨーロピアン・ル・マン・シリーズをアストンマーティンで戦ってきた。
ル・マン24時間:CARGUY RACING、2年目の挑戦は突然の幕切れも“目標”は達成
2017年にはル・マン24時間レースに初挑戦。さらに2018/19シーズンからはWECのLMGTEアマクラスに参戦を開始した。
2シーズン目となった2019/20シーズンは、ついに世界の舞台で頭角を現し、第2戦富士で初優勝。その後も勢いに乗り、上海、CoTAでクラス優勝を遂げた。
前戦スパではレースを通してペースが上がらず、厳しい状況に追い込まれていたチームは、レース後に90号車を“完全にバラバラにして”問題の解決にあたった。もちろん、最大のターゲットにぬかりなく備えるため、である。
そのおかげもあってか、ル・マンでは走り出しから上位につけ、予選上位6台によって争われる“ハイパーポール”にも見事進出。クラス5番手から決勝レースをスタートさせた。
イーストウッドはオープニングラップでクラス2番手にまで浮上するスタートダッシュを決める。その後、ブロンズドライバーのヨルックもミスなく走ってステアリングをつなぎ、アダムも好走を見せた。ピット作業にもミスがなく、90号車はクラス5番手を下回ることはなかった。
レース前半からアストンマーティン・レーシングの98号車アストンマーティン・バンテージAMR(ポール・ダラ・ラナ/ロス・ガン/アウグスト・ファーフス組)とトップを争う展開となったが、やがて98号車がトラブルを抱えてガレージへ向かうと、ついにTFスポーツ90号車がクラストップに立った。
その後も順調にレースを進め、2番手との差が5分程度にまで拡大する場面もあった。しかし終盤に向けてはギャップが詰まっていき、今回チームにとって最長となったロングスティントの終わりにイーストウッドがチェッカーを受けたとき、2番手のデンプシー・プロトン・レーシング77号車ポルシェ911RSRとは、49秒の差しかなかった。
TFスポーツ史上初となるル・マンでの勝利は、さまざまな「初」であふれることとなった。
ヨルックはル・マンで優勝した最初のトルコ人ドライバーとなった。アダムはGTEプロとGTEアマの両方で栄誉を得た最初のWECドライバーとなった。また、アストンマーティンのカスタマーチームがル・マンで優勝したのはこれが初であり、バンテージAMRにとってヨーロッパでの最初のLMGTEアマクラス優勝ともなった。
GTEアマのチャンピオンシップで、TFスポーツはAFコルセの83号車フェラーリ488 GTEを8ポイントリードしている。タイトル争いは11月の最終戦バーレーンで決着することになった。
ル・マン初制覇を受け、チーム首脳と3人のドライバーは以下のコメントを残している。
■最終スティントは「人生で一番長い2時間半だった」
・トム・フェリエ(チーム代表)
「TFスポーツの設立以来、我々が行なってきたことのすべてがこの勝利につながっている。数週間で裸のシェルからクルマを作りあげ、ル・マンに勝てる状態に仕上げるという、最高のチームがあるのは素晴らしいことだ」
「ドライバーのパフォーマンスもレースウイーク中、誰にも負けなかった。彼らは完璧な運転をしてくれた。この先ずっと、忘れられないレースとなるだろう」
・サリ・ヨルック
「僕らは過去3年間、かなりの不運に見舞われてきたので、今回はそこから脱したかった」
「レースへの準備に多くのハードワークが費やされ、チームとしてここで優勝できたことを嬉しく思う」
・チャーリー・イーストウッド
「アメージング! 素晴らしいレースだった。最終スティントは、おそらく自分の人生で最も長い2時間半だったよ。チェッカーを見て、安心することができた」
「ル・マンを制することは、世界じゅうのほぼすべてのドライバーの目標であり、サリ、ジョニー、そしてTFスポーツのみんなと勝利できたことが嬉しい」
・ジョナサン“ジョニー”・アダム
「チームは非常に細かいところまでクルマをチェックし、ピットストップも完璧にこなすという素晴らしい仕事をしてくれた。それがル・マンの勝利につながった」
「サリとチャーリーはレース全体を通してとてもよく走ってくれた。どちらもミスをすることはなかった」
「再びこの表彰台に立つことができて嬉しい。ふたりとトムとともに立てたというのが、また格別だね」
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