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FRへと回帰したV12モデル「550&575Mマラネロ」(1996-2005)【フェラーリ名鑑】

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FRへと回帰したV12モデル「550&575Mマラネロ」(1996-2005)【フェラーリ名鑑】

再びフロントエンジン&リヤドライブに

BBシリーズ、そしてテスタロッサの両世代にわたったV型12気筒エンジンのミッドシップモデル。その最終型となるF512Mは1996年に生産が終了。その時、スポーツカーとしては革新的な基本設計が終わりを告げた瞬間でもあった。フェラーリがミッドシップ世代で搭載していたV型12気筒エンジンは、バンク角が180度というもので、エンジン本体とギアボックスが上下二段構造を採るため、重心高を低く抑えるには、もはや限界だと判断。そこで、F512Mの後継車を開発するにあたり、再びフロントエンジン&リアドライブという、トラディショナルなスタイルへと回帰することを決断する。

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550 Maranello(1996)

そのニューモデルの名は「550マラネロ」。車名の550という数字の由来は、搭載されるV型12気筒エンジンの総排気量、5.5リッターを示す“55”と、フェラーリの創立50周年にあたる1997年を意味する“50”を組み合わせて「550」というネーミングにしたという。ニュルブルクリンク・サーキットのプレスルームで行われた発表会では、当時フェラーリのルカ・ディ・モンテゼモーロ社長や、デザインを担当したピニンファリーナのセルジオ・ピニンファリーナ社長に対して、ミッドシップからFRへと回帰したことに異論を唱える者など誰もいなかった。もちろん、それは「性能に関して一切の妥協はない」と、この時フェラーリが強くアピールしたこともあったからだ。

Cd値0.33という優れた空力を実現

ピニンファリーナによるエクステリア・デザインは、フロントエンジンを象徴するかのように、ロングノーズ&ショートデッキ、そしてカムテールが特徴。フロントフェンダーに設けられたエアアウトレットやグラマラスなリアフェンダーなど、275GTBなど過去のFRフェラーリを彷彿とさせるデザインが550マラネロにはいくつも存在する。それと同時に、Cd値で0.33という高水準な空力特性を実現しているのだから、さすがはピニンファリーナの作といえる。

485psを発揮するV12エンジンと強靭なる剛性

フロントに搭載されるV型12気筒自然吸気エンジンは、最高出力で485psを発揮。このエンジンは456GTに使用されていたものが基本となるが、徹底した改良を経て、43psものパワーアップを果たしている。トランスミッションはデファレンシャルと一体化されリアに配置する、いわゆるトランスアクスル方式。これは前後の重量配分を最適化するための策で、すでにフェラーリは1964年の275GTBでこの方式を初採用している。基本骨格はスチールと高張力鋼板を組み合わせたもので、捻じれ剛性は当時の量産モデルでは最強レベルとなる1500kg/度を得ている。サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンで、キャビンに設けられたスイッチにより、ダンパーの減衰力を2段階から選択できた。

575M Maranello(2002)

515psへとパワーアップした「575M マラネロ」

そして、この550マラネロにもビッグマイナーチェンジが訪れる。それは2002年のジュネーブ・ショーで発表された「575Mマラネロ」のことで、ボディデザインは550マラネロからの小変更といった程度の変化があるのみだが、そのメカニズムは「M(モディファイド)」の文字が物語るように、相当に徹底した広範囲に及ぶ改良が施されている。

まず、エンジンはV型12気筒であることには変化はないが、ボア径が2mm延長されたことで排気量は5748ccに変更。したがって車名もシンプルに“575”の数字が掲げられることになった。圧縮比も11.0に高められ、マネージメントはボッシュ製の最新型、M732を採用。最高出力は新たに515psを得るに至った。トランスミッションも6速MTに加えて、6速F1マチック(2ペダル セミAT)が選択できるようになったのも大きな話題。このF1マチックでは、ローンチ・コントロール機構を使用して、レーシング・スタートを行うことも可能になった。

Superamerica(2005)

限定車として登場した2台のオープントップモデル

550マラネロをベースに登場したオープントップの「バルケッタ ピニンファリーナ」や、575Mマラネロをベースにした、同じくオープンモデルで独自かつ斬新な開閉方法が特徴(レヴォクロミコルーフ=ガラスルーフが180度回転してタルガトップ化される)となった「スーパーアメリカ」も、この時代に誕生した限定車としては忘れてはならない存在だろう。前車は448台、また後車は599台生産されているが、いずれもそのすべてが一瞬でソールドアウトとなった。

【SPECIFICATION】

フェラーリ 550 マラネロ

年式:1996年

エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)

排気量:5473cc

最高出力:357kW(485hp)/7000rpm

最大トルク:569Nm/5000rpm

乾燥重量:1690kg

最高速度:320km/h

フェラーリ 550 バルケッタ ピニンファリーナ

年式:2000年

エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)

排気量:5473cc

最高出力:357kW(485hp)/7000rpm

最大トルク:569Nm/5000rpm

乾燥重量:1690kg

最高速度:300km/h

フェラーリ 575M マラネロ

年式:2002年

エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)

排気量:5748cc

最高出力:379kW(515hp)/7250rpm

最大トルク:588Nm/5250rpm

乾燥重量:1730kg

最高速度:325km/h

フェラーリ スーパーアメリカ

年式:2005年

エンジン:65度V型12気筒DOHC(4バルブ)

排気量:5748cc

最高出力:379kW(515hp)/7250rpm

最大トルク:588Nm/5250rpm

乾燥重量:1790kg

最高速度:320km/h

※すべてメーカー公表値



解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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