サーキットではベテランを唸らせる旋回性を見せ、ワインディングでは軽快感を武器に難しさを感じさせないスポーツ性を披露してくれた、KTMの新型RC390。大型アップデートは’13年の登場以来初となる。各部を見直した、クラス随一のポテンシャルをサーキット/公道の峠道で堪能してきた。
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●文:ヤングマシン編集部(小川勤) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:KTM
KTM RC390 サーキット試乗インプレ【操っている手応え抜群のミドルスーパースポーツ】
「まだ行ける、まだ行ける」ニューRC390は、サーキットでどこまでも応えてくれる。400ccクラスのバイクがこれほどの手応えとスポーツ性を見せてくれるなんて…走るほどに嬉しい驚きに包まれていく。
各部を軽量化し、モトGPマシンのスタイルを踏襲したRC390は、登場以来初の大型アップデートを受け、パフォーマンスをアップ。
特に軽量化にはこだわっており、前後ホイールで3.4kg、フロントブレーキディスクで960g、フレームで1.5kgを削減。乾燥重量は155kgに収まっており、これはガソリン重量を加算(燃料タンク容量13.7L/1L=0・737kgで計算すると10.1kg)しても国産の250ccスポーツバイクよりも軽い数値なのだ。
シングルエンジンとトレリスフレームのおかげでとてもスリムに仕上がったRC390は、走り出すと数値以上に軽快なハンドリングを披露。
排気量373ccのエンジンは、回すほどにパワー&トルクを発揮する超高回転型ユニットだ。バイクとコースに慣れていくと常用する回転域がどんどん高くなっていく。
立ち上がりでしっかり加速しようと思ったらスロットル開け始めで6000rpmはキープしておきたいところ。ペースを上げていくとフロントタイヤの舵の入りが早くなり、RC390はどこまでもクイックに曲がりたがる。
一度ピットインしてABSをロードからスーパーモトモードに変更。リヤのABSをキャンセルして、先ほどよりも腰を大きめにズラし、RC390でどこまで行けるかを楽しむ。
ペースアップするとエンジンは前モデルよりもかなりスムーズなことに気が付く。シングルエンジンの場合、鼓動感を語ることが多いが、このエンジンは回し切った時のビート感が魅力。7000rpmから上はシングルとは思えないほど振動が少なく、レスポンスもよい。マッピングの変更やエアボックス容量を40%も拡大したことで性格がかなり変わっているようだ。
気が付くと「パワーバンドキープ」の乗り方になっていた。最近はホンダのGB350やロイヤルエンフィールドのクラシック350などのロングストローク単気筒に乗る機会が多かったせいか、それらの倍近い1万rpmまで回るショートストローク単気筒はとても新鮮。ビッグバイクではあり得ない、スロットル全開&高回転を楽しむ。
効率よく走ろうと思ったら、立ち上がりの回転数キープが重要なRC390に是非ともオススメしたいオプションがアップ&ダウン対応のクイックシフター+。丁寧な操作は必要だが、これさえあればライダーは旋回中でもシフト操作が可能。進入ではブレーキングと荷重移動に、立ち上がりではアクセルを開ける操作に集中できる。
サーキットでRC390の本質を見るには、まずは直線でアクセルを全開にすること。次にコーナーで身体を積極的に動かしその時のバイクの挙動を知ることだ。そうすると座る位置や上半身の角度によって曲がり始めのレスポンスやタイヤのグリップ感が変化することに気が付くはず。上手く乗れたときは抜群の一体感を答えとしてくれる。RC390はライダーを上達させ、正しい操作とは何かを教えてくれる生粋のスーパースポーツなのだ。
―― 【富士スピードウェイのショートコースで試乗会を実施】真夏日の中、富士スピードウェイのショートコースと周辺のワインディングを使ってKTMの試乗会が開催された。RC390だけでなく、様々な最新モデルに試乗することができた。 [写真タップで拡大]
KTM RC390 一般道試乗インプレ【クローズドコースのみならず一般道でも楽しめる!】
サーキットではピンポイントな操作が求められたRC390だが、峠ではとても寛容。苦手なコーナーが見つからない。少し後ろ目に座り、ハンドルに手を伸ばして走り出すと、常にリラックスしていられ、タイヤの接地感が明確。排気量以上に軽い感覚で曲がれ、手応えと安心感もしっかりある。
これにはこのクラスとしては高性能なWP製サスペンションも貢献。ピッチングモーションが掴みやすいため、ライダーが曲がりたいと思ったところから曲がれるのだ。これが低コストのサスだと動きが落ち着くのを待たねばならずタイミングを掴みにくいが、RC390は思い描いたラインをトレースでき、乗り心地も上質だ。
―― 【ワインディングもテスト。スムーズなエンジンを楽しめる】400ccクラスにはない上質なサスペンションやフレーム、そして電子制御が生み出すハンドリングは、サーキットはもちろんワインディングでもとても本格的。タイヤのグリップ感の伝わり方もとても良い。
サーキットでは回す必要があったエンジンだが、峠では4000~5000rpmほどをキープ。そこから大きくスロットルを開けると、ジワリとトラクションを生み出し、軽い車体を力強く加速させていく。回転が上がっても振動が軽減されたニューエンジンはとてもスムーズ。これなら高速道路巡航や長距離も疲れなさそうだ。
また、ツーリングユーザーに見逃せないのは、ガソリンタンク容量が9.5Lから13.7Lに増えたこと。これにより航続距離が向上している。
400ccクラスは、先入観からエントリー向けと考える方が多い。しかし、RC390は気軽に乗れるが走りの工夫への応答が正確で、さらに乗り込んでいった先のセッティングやサーキットの世界までを見せてくれる。このセグメントでもっとも作り込まれたスーパースポーツと言えるだろう。
―― スポーツライディングの楽しさを真面目に追求するKTMの美学は潔く、それはRC390からもしっかりと感じ取ることができた。
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