購入する際はノーマルの状態を保っているクルマがベスト
クラシックカーブームの影響で、巷には玉石混淆状態で売り物が氾濫している。持続可能な輸入旧車生活を愉しみたいのであれば、毎日乗れるアルファロメオのジュリア・シリーズをチョイスするのが得策だ。その理由は単純明快である。構造がシンプルかつパーツが豊富で、乗っている人が多いからだ。
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それでいて価格が驚くほど高騰しているわけではない点が魅力で、宝くじが当たらずとも、頑張ればまだまだ購入できる(350万円ぐらいから探せる)のも魅力だ。とにかく丈夫で理不尽な壊れ方をしないジュリア・シリーズは、輸入旧車ビギナーも安心して買うことができる貴重な存在なのだ。
ジュリアシリーズの歴史を振り返る
初代ジュリエッタの後継モデルとして1962年に登場したジュリアは、当初ベルリーナ(イタリア語でセダンのこと)のみが新しいボディでリリースされた。精悍な2ドアクーペおよび流麗なスパイダーは、ジュリエッタのボディを流用したモデルがそのまま継続販売されたのだ。
完全なる新型車として先行発売された4ドアセダンは、コンパクトな車体にスポーツカー並みのDOHCエンジンを積んだ高性能サルーンとして人気を博した。アルファロメオは、後に大人気モデルとなる2ドアクーペ仕様をその好況下でマーケットに投入する。
2ドアクーペのエクステリアのデザインを担当したのはカロッツェリア・ベルトーネで、ジュリエッタ・スプリントを描いたフランコ・スカリオーネではなく、若き日のジョルジェット・ジウジアーロが手腕を発揮。現在も彼の代表作のひとつとなっているこの新しい2ドア4座クーペは1963年に登場し、ジュリア・スプリントGTという車名が与えられた。
優雅な長距離ツアラーであったアルファロメオ2000/2600スプリントの意匠を、よりスポーティに仕立てたものだったジュリア・スプリントGTのデザインは、ボンネットの先端部に段差があったことから“段付き”という愛称で親しまれている。
スパイダーのデザインは、初代ジュリエッタ時代と同じようにピニンファリーナが手がけ、こちらは1966年に1600スパイダー・デュエットという車名で登場。3速オートマチック仕様も選択可能となった最終型のスパイダーは1993年まで発売された。
シリーズ4まで登場したスパイダーと同じように、ベルリーナと2ドアクーペもつねに進化発展していったが、ここではジュリア・シリーズの人気モデルだといっていい2ドアクーペの変遷を記すことにしよう。
ひと口にジュリアとっても様々なグレードが存在する
ジュリア・スプリントGTは1964年にカロッツェリア・トゥーリングがオープン化したジュリア・スプリントGTCが追加設定され、高性能版のジュリア・スプリントGTヴェローチェ(GTVとも表記。ヴェローチェ=イタリア語で、速い、の意味)が1965年に登場した。
このパワーアップ・バージョンの登場により、オリジナルのジュリア・スプリントGTは1966年に生産終了となっている。1967年には段無しボディに4灯式ヘッドライトを組み合わせた1750GTVが登場し、1971年に2000GTVへと発展した。
筆者が1998年から愛用しているGT1600ジュニアはジュリア・シリーズの本流ではないが、そのヒストリーも記述しておく。ジュリア・スプリントGTの廉価版として、まず1965年にGT1300ジュニアが登場し、1970年に1750GTVと同じ段無しボディに2灯式ヘッドライトを組み合わせたモデルへと進化した。
その後、1750GTVが2000GTVに発展したことにより、1972年に1300版の兄貴分としてGT1600ジュニアが登場。GT1300ジュニアは1977年まで、GT1600ジュニアは1976年まで生産された。
ジュリア・シリーズのスペシャルモデルとして1969年に登場したアルファロメオ・ジュニアZも存在しているが、個性的なボディスタイルがカロッツェリア・ザガートの作品だったこともあり、このクルマだけは価格が高騰。おいそれとはゲットできない状況となっている。
ボディのサビは徹底的にチェック
ジュリア・シリーズは基本コンポーネンツが一緒なので、どのモデルを購入しても機関系はリセットしやすい。だが、ボディがダメだと後々相当な出費を強いられる可能性があるので、買うときに車体のサビ具合を徹底チェックしてほしい。
フェンダーの裏側に手を入れ、鉄板の折り返し部分を触ってみて手が切れそうなぐらい鋭利だったら、そのクルマはボディがしっかりリペアされているのでオススメだ。その一方で、ドラえもんの手と握手しているかのような丸い感触だったら、パテでフェンダーのカタチが造られているだけかもしれないのでパスしたほうがいいだろう。ショップの店頭で、あからさまにフェンダーの裏側に手を入れるとイヤらしいので、くれぐれも店員さんに気づかれないように、さりげなく実践していただきたい。
ジュリア・シリーズのフェンダー後部は雨の日にタイヤが巻き上げた水および泥などを見事に取り込んでしまう形状になっている。そのため、この部分からジワジワ腐り始めるわけだが、購入時にはぜひともフェンダー後部を手で触ってみて鉄板の存在も確認してほしい。程度の悪い個体は、この部分にアンダーコートを大量に吹き付けていたり、パテを盛大にもっている可能性があるからだ(鉄の感触だったらOKである)。
また運転席および助手席のフロアマットを持ち上げ、サイドメンバーとフロアの付け根部分の腐りを見る。フロアがあまりにも腐っている個体は結構厳しい扱い方をされてきたということなので、パスしたほうがいいだろう。なお、ジュリアのクラッチは自動的に調整される仕組みになっているので、基本的にフィーリングが変化することはないと思っていい。もしも変化したら、それはトラブルの前兆だ。
シートに反発力があるのかも重要なチェック項目
長距離を走っても疲れを感じさせないジュリアのシートは、非常に完成度が高い逸品だといえる。クルマによってはシートの表面だけがキレイで、内部のスポンジが終わっていたりするので、購入する際は試しに座ってみて、シートに反発力があることも確認しておいたほうがいいだろう。
シートの確認時にドアを開けたら、下側を持ちながら上下に動かしてみて、ガタがないことも確認したい。そして、ウインドウのレギュレターがスムースに動くのかどうかということも同時に確認しておこう。
乗り降りするときや手でクルマを押した際にギシギシ音が聞こえたら、ロアアームのブッシュがダメになっているということだ。もちろん、購入後交換できるが、最初からブッシュがしっかりしている個体をチョイスするほうが、なにかといいだろう。ブレーキング時にクルマが左右にブレる感じがしたら、これまたブッシュがダメになっているということである。ダンパーの交換時期も、ギシギシ音が教えてくれるので注意したい。
ガソリンタンクが腐っていないか? 要チェック
トランクルーム内でまずチェックしたいのが、ガソリンタンクの腐りである。もなか状になっているガソリンタンクは合わせ目の部分が腐っていると満タン状態で漏れるので、この部分の腐りの有無も入念にチェックしたい。ガソリンタンクの漏れはコーティング剤で修復可能だが、できることなら最初から腐っていないガソリンタンクを持つ個体をゲットすべきだ。
エンジン始動後、しばらくすると静かになるが、どこからともなくカタカタカタという音が聞こえてきたら、そのエンジンは万全ではないということである。また、アイドリング時にオイルフィラーキャップを外し、手をかざしてみて、どのぐらい圧が来るのかをチェック。圧が来ているということは、コンプレッションが落ちている証拠なので、そのエンジンも敬遠したほうがいいだろう。
異音やクルマの変化に気がつければ大きなトラブルを回避可能
デフは基本的に丈夫だが、バックラッシュが大きくなってくるとスタート時にショック(タイムラグ)が発生し、また、カキーンという異音が聞こえるようになる。そのまま乗っているとトラブルにつながるので、購入時に試乗することができたら、感覚を研ぎ澄ませ、デフの状態を探ってほしい。なお、発進時にドドドという音が聞こえたらプロペラシャフトの十字ジョイントの遊びが大きくなっている可能性大だ。
基本設計が優れているジュリアは、オリジナルの状態を維持していけばOK(壊れないし、楽しい)なので、購入する際はノーマルの状態を保っているクルマをターゲットにするといいだろう。クルマの変化をつねに感じ取っていれば、ビッグトラブルを未然に回避することは容易である。
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