同じドイツのライバルであるメルセデスは、電気自動車の開発と生産において、専用ブランドとプラットフォームも用意している。それに対して、BMWはエンジンモデルと一緒のプラットフォームでEVを開発し、「i5」をデビューさせた。そんなi5はどんなクルマに仕上がっているのだろうか。ポルトガルでいち早く試乗した小川フミオ氏のレポートをお届けする。
BEVセダンのひとつの究極
BMW、新型5シリーズを発表。最上位グレードは601馬力を誇るBEVのi5 M60 xDrive
BMWが2023年7月13日に発売した、新型5シリーズ。8代目には、最初から、ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド、そしてBEV(バッテリー電気自動車)の「i5」がラインナップされている。
日本には、まずi5が導入され、追って、ガソリンとディーゼルが入ってくる予定。プラグインハイブリッドの設定がないのは、「電動車はi5がメインになるため」(BMWジャパン広報部)と説明される。
そのi5に、23年9月下旬に、ポルトガル・リスボンで試乗することができた。期待いじょうによく走り、ナチュラルで、BEVセダンのひとつの究極と感心した。
i5には、大きくいって、後輪駆動の「i5 eDrive 40」と、全輪駆動の「i5 M60 xDrive」が用意されている。
前者には、「i5 eDrive 40 エクセレンス」と「i5 eDrive 40 Mスポーツ」の設定がある。乗ったのは後者。サブネームのとおり、スポーティな仕上げを特徴とする仕様だ。
まずリスボンを抜けて郊外へと足を延ばしたときドライブしたのは「i5 eDrive40 Mスポーツ」。後輪を駆動するモーターは、250kWの最高出力と430Nmの最大トルクを発生。
リチウムイオン電池の総エネルギー量は 81.2kWhだそうで、一充電での走行可能距離は装備によって、477キロから582キロの幅と発表されている。
i5 eDrive 40の”電費”は100キロ走るのに18.9kWhから15.9kWh(数字が少ないほうが長い距離走る)。充電速度は最大で205kW。10分で156km充電可能という。
もうひとつの装備は、「マックス・レンジ」と呼ぶもので、電費重視のセッティングが可能になる。これを使うと、パワーを25パーセント抑制し、より長距離の走行が目指せる。
屋台骨モデルとしての責任
新型5シリーズのドライブトレインの比率として、世界全体の市場ではエンジン車が圧倒的に多いが、欧州に限定するとBEVバージョンが約半数とBMW。
かつ、話はi5に限ったことではないものの、2015年以降、EU圏で登録されるクルマは部品のリサイクル率が95パーセントに達していなくてはならないというレギュレーションもクリアしている。
「i5は、ライフサイクル・アセスメント(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクルにわたる全体または特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法)において、環境負荷を減らすための有効な手段によって製造されています」
BMWは、試乗会に先立つジャーナリスト向けのプレゼンテーションで、このように説明した。
「製品の製造過程における透明さも大事で、BMWでは、たとえばi5に使うリチウムやコバルトは、生産者から直接買い付けています」
BMW車のうち、ドイツ国内の売り上げで3位に入る5シリーズ。23年春までに累計生産台数は1000万台を超えたという。初代から今日にいたるまで、BMWにとってたいへん重要な収益源であり続けてきた。
同時に、その数ゆえ、i5を設定することは、温室効果ガスと、先述のとおり素材を再生してつかうサーキュラーエコノミーなど、環境保護対策において効果的なのだと、BMWではする。
私は、まず東京・青山における日本向け発表会で実車に対面したあと、冒頭に書いたとおり、リスボンでドライブするチャンスにめぐまれた。あらためて、クルマに接すると、これまでの5シリーズとはだいぶ雰囲気のちがうデザインと実感した。
Vol.2へ続く
BMW i5 eDrive 40
全長:5,060mm 全幅:1,900mm 全高:1,515mm ホイールベース:2,995mm 乗車定員:5名 一充電走行距離:477-582km(欧州仕様車暫定値) 最高出力:250kW(340ps) 最大トルク:400Nm(40.8kgm) バッテリー総電力量:81.2kWh(欧州仕様車暫定値) モーター数:後1基 駆動方式:RWD(後輪駆動) フロントサスペンション:ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング リアサスペンション:マルチリンク式エアスプリング フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:前後245/45R19 荷室容量:490L 車両本体価格:998万円
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