マクラーレンの未来、どう描く?
今年3月、英国の自動車メーカーであるマクラーレン・オートモーティブが今後のデザインの方向性を表明した。経営再建を図る中、未来のスーパーカーデザインはどのように形成されていくのだろうか。
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マクラーレンのチーフ・デザイン・オフィサーであるトビアス・スールマン氏は、歴史からデザインのインスピレーションを得ているという。
スールマン氏は英ウォーキングにあるマクラーレン・テクノロジー・センターのメインアトリウムを指して、「毎日ランチを食べに行くとき、このブールバール(大通り)を歩きながらマクラーレンの歴史に思いを馳せます」と語る。
広大な敷地内には、ブルース・マクラーレンのM8Dカンナムレーサー、F1タイトルを獲得したアラン・プロストのMP4/2B、ランド・ノリスの現行型MCL38などのレーシングカーのほか、MP4-12C、スピードテール、エルバなどのロードカーが並んでいる。
デザインが担う重要な役割
いずれもマクラーレンの歴史や伝統を思い起こさせるものであり、スールマン氏はそこから未来の新たな方向性を描こうとしている。
「わたしのチームには、ここを歩いてさまざまなディテールを見つけ、それに対する新しい解釈を展開するよう求めています。このブールバールを見ると、インスピレーションが湧いてきて、いろいろな可能性に気づくんです」
ドイツ人のスールマン氏はこれまでフォルクスワーゲン、ブガッティ、アストン マーティンでキャリアを築いてきた。2021年にマクラーレン・ソーラスGTを手掛けた後、他社へ移籍したが、昨年9月にベントレーのエクステリアデザイン責任者の座からマクラーレンに呼び戻された。
自身のキャリアを振り返り、「大手メーカーから中小企業まで、多くの企業で働いてきました。マクラーレンはわたしの理想の会社です」と語る。
マクラーレン・グループは3月、財政問題を経て、バーレーンの政府系ファンドによって買収された。現在は再編の最中にあり、フェラーリ出身のマイケル・ライターズ氏を自動車部門のCEOに据え、SUVやEVを含むラインナップ拡大を計画中だ。
そうした重要な時期にあって、スールマン氏は新しいデザイン言語を開発している。
どれも「似ている」一面も
その主な特徴は、ロングノーズ、ショートリアの前傾したサイドビュー「パフォーマンス・ライン」と、水平基調の要素を持つリアビュー「オープン・バックエンド」だ。マクラーレンのレーシングカーとロードカーに共通する特徴に基づいて開発されたという。
「マクラーレンのルーツはレースにあり、すべてがレースの一部なのです。未来を理解し、形作るためには、ブランドの全体像とDNAに目を向けなければなりません」
「人々はレースの伝統があるからこそ、マクラーレンを買い、愛してくれるのです。マクラーレンは自動車会社を立ち上げてからレーシングチームを立ち上げたのではありません。その逆です」
マクラーレンのレースの歴史は1963年まで遡るが、自動車部門はわずか14年の歴史しかない。それでも、強力なアイデンティティを確立している。
「マクラーレンを見れば、誰もがマクラーレンだとわかるでしょう」
しかし、それは多くのモデルのベース部分が共有されているため、どれも少し似ているという一面もある。ただそれも、新しいデザイン言語によって将来的には変わっていくだろう、とスールマン氏は約束する。
「モデルごとに異なるキャラクターと異なるアイデンティティを作り出し、モデル同士をより強く分離することが狙いです。人々はマクラーレンを認識するだけでなく、そのモデルもわかるようになるでしょう」
計画中の「EV」については?
現時点では、新しいデザイン言語をいくつかのスケッチで暗示しているだけだが、プロジェクトは水面下で確かに進んでいる。
「着実に前進しています。ブランドは変わりつつあり、ポートフォリオも豊かになっていく。これは歴史上最大の変化の1つです。さまざまなパワートレインにも目を向ける必要があるので、この新しいデザイン言語は重要です。単なるギミックではありません」
スールマン氏は、マクラーレンが将来的に計画しているEVについては詳述を避けたが、「そのようなクルマを検討する場合、マクラーレンらしく作るつもりです」と語った。
「プロポーションについては検討する必要がありますが、短いリアオーバーハング、長いフロントオーバーハング、何らかのパフォーマンス・ライン、フロントとリアの開口部を設けることは間違いありません。『確かに、これはマクラーレンだ』と言ってもらえるような、明確なサインになるでしょう」
パワートレインが何であれ、すべてのモデルにおいて「形は機能に従う」という基本理念を維持する。スールマン氏は、機能性がデザインの重要な要素となることに変わりはないと主張する。
「これは過去のモデルにも見られますし、今後のモデルにも見られるでしょう」
「機能」と「形」の結びつきは、おそらくソーラスGTに最もよく表れている。ソーラスGTは「限界を押し広げ、その先へ進む」というマクラーレンの野心を示す好例であり、そこで重要なのがテクノロジーを可視化することである。
「あらゆるパーツを称えたい。開口部が必要なければ、そのままにしておけばいい。新しい表面処理が必要なら、完璧になるまで取り組む。マクラーレンはエンジニアリングとエアロダイナミクスと手を携えており、それが特別な美学へと導いてくれるのです」
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