もくじ
どんなクルマ?
ー 迫力を増したエクステリアデザイン
ー エントリーグレードは570psに
どんな感じ?
ー 上質なインテリアと実用性は従来どおり
ー 最大の価値は自然吸気V10エンジン
ー ドライバーズカーとしては物足りない
「買い」か?
ー クワトロならではの説得力はあるけれど
スペック
ー アウディR8 V10クーペのスペック
コンパニオン大特集(1) 東京モーターサイクルショー2019 画像52枚
どんなクルマ?
迫力を増したエクステリアデザイン
フェイスリフト受けた最新のR8が英国に上陸した。スーパーカー、スーパースポーツカー、熟成された速いアウディ、4輪駆動の暴れん坊。色々呼び方はあるだろう。最新モデルは更にパワーアップし、パワーステアリングとスタビリティコントロールにチューニングが加えられているが、ハードウエアの手直しは限定的だ。
フロントマスクは、従来以上に迫力を増し、怒っているように見える。最新のアウディR8の場合、エクステリアデザインが最も大きな変更点で、低くワイドに、少し質素になったシングルフレームグリルに、突き出たフロントスプリッターと面構成が改められたボンネットなどが特徴となる。
リアのディフューザーも大型化され、エグゾーストのフィニッシャーもかなり太くなり、一見するとパイプが二重になっているように見えるデザインになった。しかし本物のマフラーパイプは、フィンが入った極太のフィニッシャーの内側に備わっていることは、少し観察すれば理解できてしまう。
エントリーグレードは570psに
ガラス製のエンジンカバーの処理は面白い。シャシーから伸びるビームやインダクションシステムが後方から透かして見ることができる。またバンパーのメッシュグリル越しに、内蔵されるパイプ類がはっきり観察できる。機能部品を外からでも見えるようにしておきながら、マフラーのフィニッシャーはフェイクなことに疑問を感じるが。
ランボルギーニ・ウラカンと共用する5.2ℓの自然吸気V型10気筒エンジンは、従来にも増して最高出力、最大トルクともに大きくなった。エントリーグレードとなるR8は540psから570psへ、上級グレードとなるR8パフォーマンスは、610psから620psへ増強されている。ちなみに従来までは上級グレードはR8 V10プラスと呼ばれていたが、アウディ・スポーツRSのネーミングルールで変更された。
R8パフォーマンスは、新しいチタン製のバルブトレイン・コンポーネンツとソフトウエアの設定を変更することで、最大トルクも向上。パワーアップメニューに加えて、エンジンの環境負荷を減らすパティキュレート・トラップも追加されている。
英国編集部のマット・プライヤーはスペインのサーキットでR8パフォーマンスを走らせているが、今回はエントリーグレードの右ハンドルを、初めて英国で試乗する機会となる。マイナーチェンジ前との違いはどの程度だろうか。
どんな感じ?
上質なインテリアと実用性は従来どおり
アピアランスの保守的で控えめな印象は、明らかに薄まった。かといって1980年代のクワトロとも印象は異なるが、スタイリングは過去のクルマのイメージを利用している様子。アウディA1もクワトロには見えないが、インゴルシュタットなりに努力しているはずで、最新のR8もR8だとすぐに気づく存在ではある。典型的なスーパーカーのようになってしまった感じもあり、技術的に新しく抑制の効いたスタイリングを備えていた初代とは違う趣きだ。デザインは好みの部分も大きいが、正直わたしはそれほど気に入ってはいなかったりする。
インテリアも大きな変化はない。サイドシルが低く、通常のドアの開き方で開口部も大きいため、スーパーカーの標準で見ると比較的乗りやすいクルマということにも変わりはない。クラスのトップレベルとはいえないまでも、シートに座れば、車内空間も充分余裕が感じられる。インテリアのデザインや高い仕上げ品質、触感などの良さはいまでも充分称賛できるレベル。
デジタル・インスツルメントのアウディ・バーチャルコクピット・モニターに表示される滑からなグラフィックも、充分に惹きつける力がある。アウディQ2など新しいモデルの車内に見慣れているなら、さほど驚かないかもしれないけれど。
フロントのボンネットの下には、それなりの大きさのラゲッジスペースがあり、シートの後ろには小さなバッグやコートを置くのにちょうどいいスペースが用意され、実用性も悪くない。しかし、もし本当に実用的なミドシップのスーパーカーが欲しいなら、恐らくマクラーレン570GTを選ぶ読者も少なくないだろう。このクルマが登場してから10年ほどが経つが、R8を取り巻く環境は変化している。
最大の価値は自然吸気V10エンジン
反面、R8を選択する理由は、ある意味ひとつだけでいい。最新版ではエントリーグレードの価格が数%上昇したものの、それでもポルシェ911の中間グレードと同等の価格で、極めて卓越したV10エンジンを手に入れることができるのだから。極上のサウンドトラックに、信じられないほどのリニア感、ターボなどが介在しない生の高回転域の魅力は、一生モノの記憶に刻まれるエンジンだと思う。
ミドシップのエキゾチックカーにとって、過給装置はさほど重要なものではないと実感する。しかもこのエンジンは、ほかとは異なる神秘性を備えた、普通とは異なるユニットでもある。クルマの性格を完全に支配し構成している存在だから、当然といえば当然だ。
標準装備の通常の(パッシブ)ステアリング・システムと、オプションのアクティブ・バリアブルレシオを持つダイナミックステアリング・システムは、ともにフェイスリフトで調整を受けている。しかし当面は、英国でダイナミックステアリングを選べるのは限定グレードの「ディセニアム」のみ。アウディによれば、選択できるグレードは追って広げられるとのこと。ちなみにディセニアムとは、10周年のこと意味する。
標準のステアリング・システムはスーパーカーの部類ではギア比が低くスローで、ロックトゥロックは3回転。特に最小回転半径が小さいわけでもない。また、ステアリングの重み付けや路面から伝わる感触も若干改善されている。いずれにせよ、乗り心地やハンドリングなどのフィーリングは、特別な内燃機関のソプラノを引き立ててくれるバックボーカルのようなものだと思う。
ドライバーズカーとしては物足りない
標準のR8の乗り心地は想像以上に滑らかでしなやか。タイヤはアスファルトをしっかりと掴み続け、英国の一般道でも、深く考えることなく570psを解き放つ自信を与えてくれる。減衰力や収縮・伸長時の気難しさや突っ張るところもなく、実際の路面状況と、走行中の身のこなしの差が不思議にすら思える。
一方で、同クラスのライバルモデルと比較すると、高速コーナーを抜けるときなどではクルマの重さと柔らかさを実感する。ボディのコントロール性はとても優れているものの、横方向のロールは完全に抑制されているわけでもないし、エンジンの重量を包み隠せているわけでもない。ドライバーの後ろの高い位置に、重たいエンジンが搭載されていることが、伝わってきてしまう。
つまり、ミドシップのクルマに期待する、鋭くエイペックスを縫ってカーブを回転していくような走りが、R8の場合は得意とはいいにくい。ハンドリングのレスポンスは悪いわけではないし、スロットルを踏み込んだときのトラクションや安定性も、不安を感じる要素はない。それでも活気に溢れているわけでもないし、ハンドリングの面白みも際立つほどでもないのだ。
クワトロならではのパーフェクトバランスと限界領域でのスタビリティの高さなど、ドライバーへのアピール力は高く、購買意欲を掻き立てる説得力も充分にある。同等のパワーを持つ後輪駆動のライバルとは異なり、4輪駆動なら高速域でのドライブも容易で、V10エンジンのパワーを、時と場所を選ばず、ドライバーの意思で引き出すことができる。しかし、ハンドリングの味わいやドライバーとの対話という面では、トップレベルのドライバーズカーとはいえないことは事実でもある。
「買い」か?
クワトロならではの説得力はあるけれど
アウディR8のドライビングフィールは、まるでジェットパックを背負ったかのように、ランボルギーニのV10エンジンを背中にくくり付けて、路上に唸りを響かせて進んでいるような雰囲気。このエンジンは、同価格帯では他に得ることができない特別なユニットではあるが、充分なパワーを持っていても、圧倒するようなダイナミックさに欠けている。ドライビングのエキサイティングさや特別感という面でも、足りていないことにも共通してくる。
われわれとしては、より硬いサスペンション・スプリングに、オプションとなる軽量なアンチロールバーとアクティブ・ステアリングを装備した、アウディR8パフォーマンスも試乗したいと考えている。今の段階で新しいR8でいえることは、アウディのスーパーカーのダイナミクス特性を、同社の他のハイパフォーマンスモデルの性格に、時間をかけて落ち着かせてしてしまったようだ、ということ。
10年前に現れた、オリジナルのR8 4.2は、毎年恒例のベスト・ドライバーズカー・コンペにノミネートするほどに、スマートなハンドリングを備えていたクルマだった。世界のライバルを驚かせた、リーダー的な印象すらあった。
しかし2世代目に移ると同時に、明確にドライバーへの訴求力も変化し、初代が備えていた神秘的なまでのダイナミクス性能は薄まってしまったように思える。R8の登場から10年半が過ぎ、ロードテストを繰り返してきているが、退屈なスーパーカーという、残念な評価に近づいている気がしてならない。たとえV型10気筒エンジンを搭載していても。
アウディR8 V10クーペのスペック
■価格 12万8200ポンド(1820万円)
■全長×全幅×全高 4426×1940×1240mm
■最高速度 323km/h
0-100km/h加速 3.4秒
■燃費 7.5~7.6km/ℓ(WLTP複合)
■CO2排出量 -
■乾燥重量 1660kg
■パワートレイン V型10気筒5204cc
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 570ps/8100rpm
■最大トルク 57.0kg-m/6300rpm
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ・オートマティック
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