ダウンサイジングがすっかり定着してきている今、ボディサイズをコンパクトなものに変える「小さいけど、質の高いクルマ」の代表格はノートオーラだろう。そこで、かつてこの「小さな高級車」に挑んだモデルにスポットライトを当てた。
文/永田恵一、写真/ベストカー編集部、トヨタ、ホンダ、マツダ
今をときめくノートオーラの成功は過去の先達にあった! ベリーサにプログレ……「小さい高級車」に挑んだ物語
■なぜノートオーラは成功したのか?
ノートを上質に仕立てたのがノートオーラ。5ナンバー車のノートに対し、こちらは3ナンバー車となる
日産の国内販売における主力車種の1台であるコンパクトカーのノートの販売は、登場から3年近くが経ちながら今年上半期(1月~6月)において登録車4位といまだ好調だ。ノートの販売が好調な大きな理由のひとつはバリエーションの豊富さで、なかでも上級仕様となるオーラはノート全体の約40%を占める。
ノートオーラにはスポーティなNISMOモデルも設定されている
ノートオーラの成功は内外装という見える部分だけでなく、2モーターシリーズハイブリッドの走行用モーターも標準のノートに対して20psパワーアップするなど、走る機能も明確に上質で「小さな高級車」と呼ぶのにふさわしい仕上がりとなっている点も大きい。
ノートオーラのインテリア。質感は高く、上質に仕上がっている
また、近々登場するコンパクトSUVとなるレクサスLBXもノートオーラ以上に小さな高級車と呼べる要素を各所に備えていると言われておりこちらも楽しみだ。
ようやく日の目を見るようになってきた日本車の小さな高級車だが、振り返ると先輩となるモデルも意外に多かった。しかし、ノートオーラ以前に大成功した日本車の小さな高級車は残念ながら浮かばず、ここでは志半ばながら小さな高級車に挑戦した日本車をピックアップしてみた。
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■バブル期に登場したホンダコンチェルト(1988年)
1988年に登場したコンチェルト。写真の4ドアセダンのほかに5ドア版も用意されていた
コンチェルトは1987年登場の4代目シビックをベースに、当時ホンダが英国のローバー社と業務提携を結んでいたこともあって誕生したごくオーソドックスな4ドアと5ドアのセダンである。
コンチェルトは目立つところはあまりなく、エクステリアも古風な印象もあるが、「ローバーとの共同開発」という先入観もあるにせよ、特に前期モデルはその古風なところが高級感につながっている感もあった。
コンチェルトのインテリア。木目パネルを使用した贅沢なダッシュボードや本革シートなど高級感のある内装だった
また、インテリアも丁寧に仕上げられたダッシュボードに木目パネルを使い、本革シート仕様も設定するなどし、高級感をさりげなく演出していたことにも好感が持てた。
さらに走りの機能もローバーとの共同開発のおかげだったのか、静かでかつ乗り心地も上質で高級なものに仕上がっていた。
昭和での登場ながら小さな高級車と呼べるモデルだったコンチェルトだが、地味なところが特にバブルの絶頂期だった当時のユーザーには受け入れられず、残念ながら1992年登場のドマーニを後継車に一代かぎりで絶版となった。
■5ナンバーサイズでの高級車を目指したトヨタプログレ(1998年)&ブレビス(2001年)
2代目アリストやアルテッツァと同じFRプラットフォームを採用していたが、実質5ナンバーサイズとして用意されたセダンがプログレだった
プログレはトヨタが長年温めていた小さな高級車を具現化したモデルである。成り立ちは前年に登場した2代目アリストや同時期に登場したアルテッツァなども使う当時としてはトヨタ最新のFRプラットフォームに、2.5Lと3Lの直6NAを搭載するというオーソドックスなものだった。
しかし、プログレの全体的なクォリティは当時のクラウンをも凌ぐセルシオ級で、それでいてボディサイズは実質5ナンバーサイズとなる全長4500×全幅1700mmと、今のところ日本車では最も小さな高級車らしいと言えるモデルだった。
プログレは価格も登場時は全グレード300万円台と内容を考えればリーズナブルだったにもかかわらず、当時のユーザーにはクラウンやマークII3兄弟のようなわかりやすさに欠けていた点やクセのあるフロントマスクが原因だったのか、販売面では今一歩だった。
プログレの兄弟車的ポジションとしてトヨタ店で販売されていたブレビス
ブレビスはトヨペット店扱いだったプログレに対し、トヨタ店扱いとなる兄弟車だった。同時期に登場した3代目セルシオを思わせるエクステリアに加え、後発らしく機能面でもドライビングポジションをペダルが動くことでも調整できる機能を備えていた。
クルマ自体の完成度はプログレ以上だったと言える。それでもブレビスもプログレ同様わかりにくさが原因だったのか販売は振るわず、両車とも直接的な後継車はなく一代で姿を消した。
■3.5LV6まで搭載したトヨタブレイド(2006年)
初代オーリスの上級モデルとしての位置づけだったブレイド。写真は直4、2.4LDOHCを搭載したモデル
現在のカローラスポーツの前身となるオーリスの初代モデルをグレードアップした兄弟車で、扱いディーラーがトヨタ店とトヨペット店だったこともあり、プログレ&ブレビスの後継車的なポジションも感じさせるモデルだった。
ブレイドの初代オーリスに対するグレードアップの手法は直4NAの1.5Lと1.8Lを搭載していたオーリスに対し、エンジンをNAの2.4L直4と「マスター」というグレード名を持つ3.5LV6の搭載、リアサスペンションをトーションビームだったオーリスに対してダブルウィッシュボーンに変更し、内外装を変更したといったものだった。
こちらはブレイドの最上級グレードとなるマスターG。V6の3.5LDOHCを搭載し、当時のVWゴルフR32を意識していた部分もあり?
ブレイドの仕上がりは小さな高級車と見ても納得できる良好なものだったが、販売は低調に終わった。その理由としてはかつて小さな高級車を目指したモデルたち同様のわかりにくさがまずひとつ。
ブレイドマスターが搭載していたV6、3.5LDOHCは最高出力280psを発揮。当時、国産ホットハッチとして注目を浴びたモデルだったが……
さらに、扱いディーラーのトヨタ店とトヨペット店では、当時登場から時間がそれなりに経ちながらも強いインパクトを保っていた2代目プリウスという強力なライバルがあったことも大きかったと思われる。
■2代目デミオを上質に仕立てたマツダベリーサ(2004年)
ベリーサは2代目デミオをベースにしながら各所を上質に仕立て、上級コンパクトモデルとして登場した
ベリーサは2代目デミオのボディサイズを若干拡大するなどした兄弟車で、小さな高級車というキャラクターも備えていたモデルである。
デミオに対するグレードアップの手法は機能面では静粛性の向上、ボディとドアなどのチリと呼ばれる隙間の高精度化やインテリアの質感といったクォリティの向上などがあった。また、装備内容では本革シートの設定や楽曲を記憶できるHDD付きオーディオの装着が挙げられる。
ベリーサのインテリア。インパネやシートなどに上級感のある素材を採用していた
ベリーサは2代目デミオに対して価格差以上の高級感を備えていた。しかし、実売価格の安さを売りにしていた2代目デミオを基準にすると高く感じてしまうことや、つかみどころがないエクステリアが理由で販売は伸び悩んでしまった。
最終的にベリーサはその投資のペイを目的とするように、デミオが2014年に4代目モデルになったあとの2016年まで生産が続いた。
■チョッパードルーフが特徴的な個性派、ホンダN-BOXスラッシュ(2014年)
N-BOXスラッシュ。初代N-BOXベースのスペシャルティモデルだったが、2代目N-BOXでは設定されなかった
N-BOXスラッシュは軽スーパーハイトワゴンの初代N-BOXをベースに、全高を軽ハイトワゴンレベルに下げると同時に、ルーフラインがボディ後方に向かうに従って下がるクーペルックとしたスペシャルティなキャラクターも持つモデルだった。
スペシャルティな雰囲気を持つのはインテリアも同様で、米国カリフォルニアの街道沿いのレストランをイメージした赤いシートを持つダイナーなど、雰囲気の明るいものからシックなものまで豊富に設定した。
N-BOXスラッシュのインテリア。ポップな雰囲気のレッドカラーが印象的な「ダイナー」
スペシャルティなキャラクターが先行しがちなN-BOXスラッシュだが、乗ってみると軽乗用車でありながら静かかつ重厚な乗り心地を持つのに加え、機能的な装備も電動パーキングブレーキやハンドルの重さを調整する機能も装着。
さらにメーカーオプションのオーディオがそれほど高価なものではないのにもかかわらず、オーディオ自体に加えデットニング(防振)も行っている効果もあり、ボリューム全開で聞き続けられるという素晴らしいものだった。
といったことを総合すると、N-BOXスラッシュは軽乗用車ながら小さな高級車と呼ぶのにふさわしい素性を持った魅力的な軽乗用車だったと断言できる。
1代かぎりで終了してしまったのが惜しまれるN-BOXスラッシュ
しかし、N-BOXスラッシュはN-BOXの強烈な存在感の前では埋もれてしまったことが原因だったのか、N-BOXが2代目モデルになったあとも継続生産されていたものの、現行型2代目N-ONEを後継車にするように一代かぎりで絶版となった。
N-BOXスラッシュの絶版はやむを得なかったとも思うが、現行N-BOXが軽ハイトワゴンとしては高価なのを見ると、どうせ高価なのであれば現行N-ONEにN-BOXスラッシュの系譜を受け継いだモデルがあれば、N-BOXスラッシュも救われたように感じるのは筆者だけだろうか。
■やはり先達はデビューが早すぎたのだろうか?
ノートオーラの成功によって「小さな高級車」の存在が改めてクローズアップされてくるのだろうか?
ここでピックアップしなかったモデルを含め、小さな高級車を目指した日本車たちは意欲的なものが多かった。それでもノートオーラまで大成功例がなかったのは日本の人口ピラミッドの変化を含めて「出るのが早すぎた」ということが大きいのだろう。
それだけに日本車の小さな高級車がようやく成功を収め始めたことには、志半ばで絶版となった先輩たちも喜んでいるに違いない。
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