インディ500のグリッドを決める重要な予選は2日間に分かれて行れ、予選初日の結果が35台出場中の上位9台は、予選2日目に再度予選アテンプトを行ってグリッドを決める。
佐藤琢磨が2017年にインディ500初優勝をした時は、予選初日に2番手のタイムをマークし、予選2日目に4番手のグリッドを獲得。インディ500の2勝目となった2020年は予選初日が9番手で、予選2日目が3番手となり日本人としては初めてフロントロウからスタートすることになった。
4度目のポールを狙うディクソンがインディ500予選1日目トップ。琢磨は15番グリッド決定
つまり予選の好位置が、インディ500の優勝に近づく第一歩である証でもあるし、プラクティス4日間のマシンの熟成具合が、予選結果に表れることになる。
琢磨がアンドレッティ・オートスポートにいた2017年も、レイホール・レターマン・ラニガンの2020年も、エンジニアたちと緻密な計算を重ねマシンを仕上げてきた。
今年の仕上がり具合は昨年と比べても悪くはなかったし、むしろマシンの理解は進んでいたと言える。一時的とは言えサポートで復活したエディ・ジョーンズとのコンビネーションも奏功していただろう。
ともかく走ってデータを集める琢磨のスタイルは変わらず、予選前のプラクティスでは走らないマシンも多い中、30分の走行で予選シミュレーションを行なってトップタイムをマークしていた。
クルマを降りた琢磨は「最後に確認したいことがあって、走りました。前車の気流の影響を受けないノートウのスピードも出てたし、今朝は少し湿度があって空気が重かったので、全体的なスピードは落ちました。後は予選の時の気温と路面のコンディションがどうなるかですね。予選は1回で決めたい。2度目、3度目のアテンプトは考えてないです」と自信も垣間見せた。
予選前まで準備に余念がなかった琢磨。金曜日にドローで引かれた順番は12番目。良くも悪くもない順位だが、あとは気温と路面温度がどこまで影響するか……。
幸いなことに予選が始まった12時頃はやや曇りだったこともあり、気温も極端に上がり始めたりはしなかった。
1番クジを引いたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)は、最初のアテンプトで4周平均231.828mphをマークして圧倒的なスピードを見せた。くじ運もコンディションも味方したディクソンに敵う者は現れず、結局このトップタイムは予選初日には誰も破ることはできなかった。
琢磨は最初の予選アテンプトに出た。さすがに昨年のチャンピオンだけあって注目度も高い。
まずはウォームアップで時速218マイル台で周回したのちにアタック開始。1周目/231.386mph、2周目/230.857mph、3周目/230.525mph、4周目/230.067mphと走行し平均230.708mphをマーク。
この時点で5番手に。トップのディクソンから平均で1マイル程度の遅れを取りやや水を開けられた。
マシンを降りてくる琢磨の表情も渋い。「スピードが足りない」と言い残すと、ガレージに戻って、次の準備を始めた。
エントリー35台の予選アテンプトがすべてが終わると、琢磨の順位は13番手となっていた。このままではファストナインには残れず、予選グリッドの重要性を考えれば、2度目のアテンプトに挑戦することになった。
1回目のタイムをキープしたままアテンプトに臨むセカンドレーンから、2度目のアテンプトに出た琢磨は、3周目にタイムアタックをやめウエーブオフ。計測をやめ、ピットに戻ってきた。
「マシンのフィーリングも良くなかったし、2周目までのタイムで自分のタイムを上回れなかったから……」と説明する。
予選終了は17時50分。気温が徐々に下がってくる頃を見計らって、残り1時間を目安に各マシンがセカンドレーンに並び始めた。琢磨もマルコ・アンドレッティの次に並んだ。
コンディションが良くなったのか琢磨の前方でアテンプトしたエド・ジョーンズ、
フェリックス・ローゼンクヴィストは琢磨のタイムを上回ってきた。
いよいよ次に琢磨のアテンプト順となった時に、バンプアウトで30番手のラインを争うシモーナ・ディ・シルベストロやウィル・パワー、RC.エナーソンらが、自らのタイムを捨てて再度アテンプトするファーストレーンに並び、琢磨はしばらく待たされる羽目になった。
ルール上ファーストレーンに優先権があり、セカンドレーンの琢磨はファーストレーンのクルマがいなくなるまで待たなくてはいけない。
セカンドレーンの最前列で待たされること、およそ30分。琢磨ついに最後まで3回目のアテンプトすることはできず、ファストナインに滑り込む夢は消えた。
琢磨は眉をひそめながらグリッド順が表示されたタワーを見上げて悔しがる。
「こればっかりはルールだから仕方ない。最後にフェリックスが僕よりいいタイムを出しているから、上にいけた可能性はあったかもしれない」
「それよりも今日はスピードが足りなかったのが原因。チームが目指していたスピードに届いていなかった。それが残念。あとはレースに向けていいクルマを作らないと。決勝はいっぱい抜かないといけないね……」
予選初日はチップ・ガナッシ、アンドレッティ・オートスポート勢が下馬評通りの速さで席巻し、エド・カーペンターの2台と老連エリオ・カストロネベスも大健闘した。
琢磨が予選15番手で失望するのも、インディ500チャンピオンだからこそ。長い500マイルでどこまで夢を見せてくれるのか、決勝までの1週間でいろいろ妄想することもできるだろう。
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