長いオフシーズンを終えて、いよいよ今週末に岡山国際サーキットで開幕戦を迎える2023年スーパーGTの第1戦。今年は新燃料のCNF(カーボンニュートラル・フューエル「GTA R100」/ハルターマン・カーレス社製)の投入で新しいフェーズを迎えるなか、3メーカーの有力候補にこのオフ、そして開幕戦に向けての手応えを聞いた。
まずは昨年、チームとしては27年ぶりにチャンピオンに輝木、今年カルソニックから車名を変更したMARELLI IMPUL Z。平峰一貴がオフを振り返る。
待望の2023年スーパーGT開幕。編集スタッフが第1戦岡山GT500ウイナー&ポールポジションを本気予想
「このオフでやりたいことが全部できたかというと、少し心残りがあります。天候に恵まれない部分もあったので、それは他のチームも同じかもしれないですけど、今現状で言うとホンダ陣営がちょっと抜けているかなという感じがしています」
「その中でも、オフのテストでは優先順位をつけて、昨年できなかったセットアップに取り組めました。クルマの車高が0.5ミリ変われば足回りの硬さもロール剛性も変わるので、ウイングの角度、レーク(車体の前傾姿勢)の角度など、いろいろトライしてきました」と平峰。
チャンピオンを獲得したことで、この開幕戦に向けて平峰自身に変化はあるのだろうか。
「何も変わっていないですね。チャンピオンは去年のことなので、今年の1月くらいには僕の中では終わっています。でも、そうやって一度結果が残ったことで、去年よりはちょっと俯瞰して見えるようになったかなというのはあるかもしれません」
続いて聞くのは、その好調ホンダNSX勢、昨年の最終戦をポール・トゥ・ウインで締めた100号車STANLEY NSX-GTの山本尚貴。ホンダのエース車両の一台として、今回の岡山でも優勝候補に挙げられる。
「オフの感触としてはまずまずですね。ホンダ勢全体としても調子が良さそうですし、その中で100号車としてはあまり頭(トップ)は獲れてはいないのですけど、2番、3番の上位には常にいられているので、今週末のコンディションにしっかり合わせ込めれば優勝争いはできるかなと思っています」
「車体は変わっていないですけど、エンジンは昨年と一緒ではないので、新しい燃料とエンジンの調整、進化したタイヤへのセットアップの合わせ込みなど、いろいろいい方向を探しながらテストを続けていました」と山本。
最後、3人目として聞くのがトヨタ/GR陣営で昨年、一昨年とこの開幕岡山を制して今年開幕3連覇が掛かっているENEOS X PRIME GR Supraの山下健太。まずは3連覇について聞くと、率直な答えが返ってきた。
「(自分たちが優勝の本命だとは?)思って来ていないです。チームはみんな開幕戦3連覇を狙っているので狙っていないとは言えないですけど、実際はちょっと厳しいだろうなと思っています」と山下。山下は1月のメーカーテストで車両トラブルから大クラッシュして、脊椎の圧迫骨折から復帰したばかりの状態だ。
「怪我はもう影響はないですし大丈夫なのですが、正直、GTのテストでクルマに乗ったのはこの前の富士の雨だけです。晴れでのパフォーマンスはわからないですけど、みなさんと同じく外から見ていて、GRスープラ陣営はちょっと厳しそうだなと」と山下。
「あとはこれまで過去2戦、開幕戦で勝っていますけど、その後のシーズンでいい方向に行っていないので、もちろん、今回も勝てそうなチャンスがあれば勝ちたいですけど、そんなにめちゃめちゃ勝ちにこだわって狙って行かなくても、とは思っています」と続ける。
山下自身、1週前にはスーパーフォーミュラ(SF)の開幕イベントの第2戦で見事3位表彰台を獲得して、怪我からの復帰、そして長いスーパーフォーミュラの不振を脱出する兆しを見せている。レース後の会見では珍しく涙を流し、その苦労を感じさせた。
「まあ、泣いちゃったんで、恥ずかしいなと。いろいろ『これまで飄々としてきていたのに泣きました』という記事が出て、いやもう、かなり恥ずかしくて、たまったものじゃないです。だからその記事、今もあまり見たくないです。でも、本当にひさびさの表彰台だったので、いつもより軽やかにレース後の1週間を過ごせました。これまではいつもSFのあとの1週間はどよ~んとして、気持ちの切り替えがしづらかったので」と、上昇傾向でGT開幕を迎える山下。
平峰、山本、山下とそれぞれ手応えを持って臨む開幕戦岡山。しかし、ドライコンディションなら優勝争いが期待できるこの3名も、今週末に予想されている雨では状況が異なってしまう。3名ともタイヤはブリヂストンを装着するが、雨ではライバルメーカーの評価が格段に高いのだ。
「雨は厳しいですね(苦笑)。まあでも、そういうレースも面白いと思うので、しっかり最後までレースをしたいです」と話すのは平峰。雨のウエットコンディション、特に雨量が少なく、降ったり止んだりのダンプコンディションではブリヂストンよりもミシュランのレインタイヤの速さに定評がある。山本尚貴が話す。
「去年のレースと今年のオフの雨のテストを見ていると、正直、ミシュラン勢が雨で速いというのは誰もがわかっていることですよね。ただ、この前の富士テストでは水量が多い時はブリヂストン勢は走れましたけど、ミシュラン勢はその水量のリミットが我々より少し低いところに設定しているのかなという印象です。ですので、雨が降るなら水量が多くなった方が我々には分があるかなと思います」と山本。
そのミシュランのウエットタイヤに対応するため、ブリヂストンも新トレッドパターンのウエットタイヤを富士テストでは投入していたが、今回の開幕戦では旧型のパターンを持ち込んでおり、新型の投入を今回は見送ったようだ。
また、ヨコハマタイヤは富士テストで投入したミシュラン型の3本のグルーブド(溝)が入った新型ウエットタイヤをこの岡山に持ち込んでいることから、前回の富士テストを含めて手応えを感じていることを伺わせる。ダンロップに関しては搬入日の時点でどのようなタイヤを持ち込んでいるのかは確認できなかった。
事前の勢力図に加え、雨でまた変わるパワーバランスと、コンディションの変更次第で週末の展開が大きく異なってくる2023年の開幕戦岡山。果たして、勝利の女神はどのチーム、どのメーカーに微笑むことになるのか。
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