■「センチュリー」も生産された工場跡地が未来都市に刷新
トヨタが2021年2月23日に鍬入れ式をおこない着工した、未来型実験都市「ウーブンシティ」について、建設地である静岡県裾野市がトヨタと共同で10月5日に記者会見をおこないました。
そのなかで、ウーブンシティが地域社会とどのようにつながっていくのか、具体的な内容が明らかになりました。いったいどんな街づくりを目指していくのでしょうか。
会見では、まず裾野市の高村謙二市長が「みんなが誇る豊かな田園未来都市すそのの実現に向けて」と題して、地元がどうやってウーブンシティを受け入れていくのかについて説明しました。
ベースとなるのは、2021年1月に裾野市で取りまとめた第5次裾野市総合計画です。
このなかで、「住み続けたくなるまちづくり」、「快適で安全・安心なまちづくり」、「人や企業に選ばれるまちづくり」、「協働・連携のまちづくり」、そして「未来志向のまちづくり」、という5つの柱を立てて10年後を見据えた活動を進めています。
これと連携して、スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ構想があります。
その一環として、裾野市の北部地域まちづくり基本構想の中核にウーブンシティを置くという建付けです。
具体的には、ウーブンシティ建設地に近いJR御殿場線の岩波駅周辺の再整備をおこないます。ここにトヨタは、企業版ふるさと納税を活用して岩波駅周辺事業をサポートします。
会見に参加したウーブンプラネットホールディングスのジェームス・カフナー社長は「e-Platteやパーソナルモビリティも活用した、ウーブンシティとの交通結節点とする」と説明しています。
カフナー社長は、裾野市が誕生した1971年1月生まれの50歳であり、個人的に裾野市を身近に感じるともいいます。
さて、トヨタグループと裾野市との関係を振り返ってみましょう。
1966年11月に自動車性能試験場(のちの東富士研究所)の開設に始まり、1967年5月にはトヨタの関連企業だった関東自動車工業の東富士工場として乗用車最終組立て作業を開始しました。
その後、2012年7月に関東自動車工業、セントラル自動車、トヨタ自動車東北が合併しトヨタ完全子会社のトヨタ自動車東日本の東富士工場となりました。
2020年12月の工場稼働終了まで、マークII,クラウンコンフォート、アイシス、センチュリー、ジャパンタクシーなど約40モデルで累計約752万台を生産。作業に携わった従業員も累計約7000人にのぼります。
東富士工場の稼働終了と業務の東北への移転が分かった時点で、高村市長は街の雇用維持の面から「ショッキングなニュースだった。しかし、自動車産業はいま100年に一度の大変革期といわれるなかで、企業の判断として残念だが受け入れた」と当時の思いを語りました。
また「その時から(トヨタ関係者などとの)集会で、当時はウーブンシティという名前は出ていなかったが未来都市の話があった。未来技術(を提唱する)コンセプトに共感して、(建設地としての)土地の利用をお手伝いしてきた」という経緯だったといいます。
■ウーブンシティはいつ、どのような形でオープンする?
気になるのは、ウーブンシティの今後の建設計画です。
現時点では、いつ、なにが、どのような形で完成し、いつから居住が始まるのかなど、具体的なスケジュールが正式には公表されていません。
この点について、会見後の記者との質疑応答のなかで、カフナー社長は公の場で初めて完成の目途に対する具体的な時期について触れました。
それによると、現時点では岩盤の掘削作業など土地造成の基礎工事をおこなっている段階で、2022年から建屋づくりに着手する予定。
工期のフェイズ1(第一期)は2年から3年後まで進み、2025年あたりでフェイズ1を完了させる見込みだといいます。
そもそも、ウーブンシティのコンセプトは、「ヒト中心の街」、「実証実験の街」、そして進化し続ける「未完成の街」という触れ込みですので、工期や完成の時期についてもトライ&エラーの実証実験を踏まえて、変化していく街という考え方です。
とはいえ、これから3年ほどで基本的な街の姿が現われることになります。
こうしたハードウエアとしての街の建設を進めるのと同時進行で、「デジタルツインによる街の分析が進んでいる」(カフナー社長)といいます。
デジタルツインとは、街の全体像や、街に関わるさまざまな要素を3次元をイメージした画像などで再現することです。
具体的な検討案件としては、ウーブンシティ内での交通の流れ、歩行者の動き、太陽光のあたりかたなど、ウーブンシティのゾーン毎で検証が進められています。
デジタルツイン解析とハードウエアの建設が融合することで、ある程度の不確実性があったとしても、ウーブンシティは(トヨタが考える)予定通りの日程でオープンできる見込みだといいます。
また、ウーブンシティ内のエネルギーについては、水素の利活用を進めることも改めて強調しました。
そのほか、カフナー社長は、裾野市岩波地区住民とのワークショップなどの地域との対話を通じて、改めて各種データのプライバシー保護が重要になると感じたといいます。
一般的に、ビックデータを活用した未来型都市のスマートシティの場合、公共の土地を使用するケースがほとんどですが、ウーブンシティはトヨタグループ企業による私有地です。
そうしたなかで、周辺地域の住民との信頼関係を維持するために、各種データの所有権やデータ管理の透明性の確保が重要だということです。
2024年から2025年のフェイズ1完成に向けて、ウーブンシティのさまざまな側面が着実に見える化されていくようです。
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みんなのコメント
此処まで出来る日本企業はそうは無いよね。
時代遅れの自分はノンビリしたいから住みたいとは
思わないけど、分譲価格が高そうだから住めるとし
たらセレブくらいか。