時代背景も追い風となり各メーカー「すべてを出し切った」1980年代
その年を代表する自動車を決める「日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)」。第41回(2020ー2021年)の「10ベストカー」も出揃い、12月7日にグランプリをはじめとした各賞が発表される。そのカー・オブ・ザ・イヤーが始まったのは約40年前の1980年。当時どんなクルマが選ばれたのか、知らない世代も多いだろう。という事で、第1回から10回までに選ばれたクルマの中から、特に印象的だった車両を中心に振り返っていく。
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ファミリアからはじまり、ロードスターで結実したマツダ躍進の10年
1980年に日本カー・オブ・ザ・イヤーがはじまり、40年となった。最初の10年の、しかも第1回カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたマツダ・ファミリアは、その栄誉にもっともふさわしいクルマだと思う。
ファミリアは、初代が1963年に発売され、マツダとして軽自動車に続く最初の登録車であった。 2代目では、ロータリーエンジンが搭載され、コスモスポーツという特別な車種以外でロータリーエンジンを身近に体験できるクルマだった。
その後、十分に魅力を発揮しきれないまま世代を重ねたが、この5代目で従来の後輪駆動(RWD)から前輪駆動(FWD)へ駆動方式を変更し、大きな飛躍を遂げたのである。簡素ながら明快な外観の造形、FWD化によって合理的かつ広々とした室内空間、後席も十分な広さがあった。そして、FWDながら運転を楽しめる壮快な走りが魅力で、たちまち消費者を魅了した。
80年代のマツダは、82年にやはりカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するカペラとともに、欧州のハッチバック車や小型4ドアセダンのよさを採り入れ、日本車という手ごろかつ身近な存在でありながら、名のある欧州車に匹敵するような性能や機能を備えた車種を次々に市場へ送り出した。そして、89年にはロードスターを上梓するのである。マツダが輝いていた10年といえる。
セルシオを頂点とした、高級車やスポーツカー百花繚乱の時代
次に注目すべき受賞車は、89年のトヨタ・セルシオだろう。
この年、日産からも高級車としてインフィニティQ45が誕生し、マツダからロードスター、そして翌90年にはホンダNSXが生まれ、バブル経済によって各自動車メーカーが投資を積極的に行って高級車やスポーツカーを打ち出した。
なかでもセルシオは、現在のレクサスLSの初代(米国において)でもあり、メルセデス・ベンツやBMWと競合する車種へ育て上げられていく記念すべき一台である。当時、日本車もいよいよ欧米と競い合える分野へ進出を果たしたとの思いを強くさせたクルマである。
技術や哲学を惜しみなく出し切った「攻めまくった新車」たち
その他、80年代には「スペシャリティカー」という分野を切り開いたトヨタ・ソアラ
手ごろな価格で身近なミッドシップスポーツカーとしてのMR2
「エアロデッキ」と名付けられた独特な存在感を持つアコードのハッチバック車
FRの小型スポーティーカーである日産シルビアなど、開発者たちの創意工夫や、クルマへの想い、あるいは市場開拓への挑戦など、好調な経済状況を背景に自動車メーカーが生き生きとしていた様子が、カー・オブ・ザ・イヤーの各車に表れていたといえる。
そして、一度すべてを出し切ったともいえる百花繚乱の新車攻勢であった。
以後の自動車業界は、バブル経済の崩壊による原価低減、あるいは地球環境問題への取り組みに対する意識の差などが、その年を代表する一台というカー・オブ・ザ・イヤーに投影されるのである。
日本の自動車産業が、それまで蓄積した力を出し切った80年代であった。
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