オーストラリア最高峰RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ恒例、10月9~12日にエンデューロ・カップ2戦目として開催されたシーズン第10戦『バサースト1000』は、予選から元王者ブロディ・コステッキ/トッド・ヘイゼルウッド組(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)が3年連続ポールポジションを射止めるなど、ふたたびフォード陣営が席巻。
雨絡みのコンディションと6度のセーフティカー(SC)導入による波乱満載の決勝では、マット・ペイン/ガース・タンダー組(グローブ・レーシング/フォード・マスタング)が優勝戦線のペナルティ裁定にも乗じて“聖典”初制覇を飾っている。
キャメロン・ヒルがトヨタ陣営BJR移籍を表明。強豪T8は初のGen3規定マスタングを公開/RSC
いよいよ聖地バサーストのパドックで迎えた週末は、来季2026年より新規参入を果たすトヨタ・ガズー・レーシング・オーストラリア(TGRA)の新型モデル『GRスープラ・スーパーカー』が公開され、ファンは初めてその姿を目撃することに。
レースウイークの水曜に市街で実施された『トラック・トゥ・タウン』から、同車のシェイクダウンも担当した殿堂入りニール・クロンプトンがステアリングを握ると、マウントパノラマではデモンストレーションのフライングラップを敢行。大ベテランもその体験を「最高にクールだった」と評した。
「本当に特別な瞬間だ。これはオーストラリアのモータースポーツにとって、そしてトヨタにとって素晴らしいことだと思うよ」と、自身は23年前にバサースト1000に出場したクロンプトン。
「このカテゴリーとビジネスに新しいブランドを導入できることは素晴らしいことだ。(自身のキャリアを通じて)GMとフォードの双方を代表する幸運にも恵まれたし、どちらも素晴らしいメーカーだ。そして今、このような機会を得られたことは本当にうれしいことだね」
そんな興奮のなか始まったレースウイークは、オープニングのFP1でチャズ・モスタート(WAU/フォード・マスタング)がクラッシュを喫する場面がありつつも、各セッションで第7世代マスタング“ダークホース”が躍動。
予選では暫定ポールを獲得した古豪ディック・ジョンソン・レーシング(DJR)のコステッキが、そのままトップ10シュートアウトも制し、キャメロン・ウォーターズ(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)やモスタート、その僚友ライアン・ウッド(WAU/フォード・マスタング)らを従え、フォード勢の1-2-3-4グリッド独占を牽引する3年連続のポールシッターとなった。
「正直言って、信じられないくらい素晴らしいラップだった。フェンス越しにたくさんのファンの姿と歓声を聞けたのは特別な体験だ」と金曜予選1回目で計時した記録破りのラップには及ばなかったものの、周囲よりコンマ1秒速いラップを刻んだ2023年シリーズ王者兼2024年バサースト1000覇者でもあるコステッキ。
「考え得る限り最高の位置からスタートするし、明日トディ(ペアを組むトッド・ヘイゼルウッド)とマシンをシェアするのが待ち切れないね」
そのヘイゼルウッドが晴天の下でスタートを切った決勝は、変わりやすい天候がレースの行方を左右し、最初の大きなドラマは55周目に発生。トニー・ダルベルト(ウィル・デイビソン組/DJR/フォード・マスタング)が山岳区間の名物コーナー“フォレスト・エルボー”でウォールにヒットしリタイア。これが最初のSC導入ピリオドとなる。
次の大きな痛手はそのリスタートからわずか2周後。FPでのクラッシュの影響か、モスタートのエンジンが“ザ・チェイス”で息絶え、ふたたびSCがコースに舞い戻る。さらに65周目には雨粒がサーキットを襲い、複数のドライバーがコースオフ。シボレーのナッシュ・モリス(プレミエア・レーシング/シボレー・カマロ)はグラベルにスタックし、これで3度目のSCに。
そして終盤には名門トリプルエイト・レースエンジニアリング(T8)の2台に立て続けの災難が降り掛かり、タイトル候補のブロック・フィーニー(ジェイミー・ウインカップ組/レッドブル・アンポル・レーシング)のシボレー・カマロ)は残り38周でフォレスト・エルボーのバリアに激突。
このSCで隊列の間隔が帳消しになると、トップ5を争っていたウィル・ブラウン(スコット・パイ組/レッドブル・アンポル・レーシング/シボレー・カマロ)は“ヘル・コーナー”でコースオフを喫したのち、残り30周の“グリフィンズ・ベンド”でタイヤウォールの餌食となってしまう。
このSC後、レースは残りわずか6周。勝負はクーパー・マレー(ジョーブ・スチュワート組/エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロ)、ジェームズ・ゴールディン(デビッド・ラッセル組/プレミエア・レーシング/シボレー・カマロ)、そして3番手に浮上したペイン/タンダー組の三つ巴によるスリリングな争いとなる。
しかし運命のグリフィンズ・ベンドで2番手ゴールディンは首位マレーのイン側に飛び込み、2台は接触。マレーはハーフスピンして4番手に後退し、一方の3番手ペインはふたりをパスして一気にトップに躍り出た。
その後、ゴールディンは残り2周の“ザ・カッティング”でトップに返り咲くも、スチュワードはマレーとの接触により5秒のペナルティ裁定を宣告し、ゴールディンはトップでフィニッシュラインを通過したものの3位に後退。ペイン/タンダー組は終盤に猛追したデビッド・レイノルズ/リー・ホールズワース組(チーム18/シボレー・カマロ)に1秒弱の差をつけて、ペンライト・レーシングはバサースト初制覇、フォードは2019年以来の優勝を手にした。
「本当に信じられない。最後のウエット・スティントでクルマに戻ったときは、まるで永遠のように感じたよ」と、これで48歳のタンダーに通算6度目のバサースト制覇もプレゼントしたペイン。
「セーフティカーが何度も出てきて、レースが行き詰まっていた。ジミー(ゴールディンの愛称)がクーパーの横にぶつかるのを見て、何となくそうなるだろうと予想していたから、なんとか抜け出すことができたんだ」
「僕自身、切り抜けてからも左のアウトサイドを芝生に落としてポジションを失ったり、本当にワイルドな瞬間を経験した。その直後は『もう終わりだ』と思ったから、そこから巻き返せて本当にうれしい。勝利は勝利だし、チームメイトにとって本当に素晴らしい勝利だ」
そしてチェッカー目前まで首位を走行していたクーパーは、この「悲痛な思い」を巻き起こしたインシデントに対し「正直に言うと、あのムーブメントは最初から失敗が決まっていた」とゴールディンを断罪した。
「こういうコンディションでは、レーシングラインを降りた途端、トラムの線路(パッシングライン)は辺り一面に水たまりだらけだ。ジミー(ゴールディン)は絶対にあのコーナーを抜けられなかっただろう。残念ながら、僕は傍観者だった」と失意の胸中を語ったクーパー。
「5秒のペナルティでは、結果に対して充分なものではなかったとも思う。でも明るい面を見れば、フィニッシュ5周前までバサースト1000をリードしていたと言えるのは、かなりクールだ。もし今日のスタートで4位になると言われていたら、それを受け入れていただろう。ポジティブな面は常にあるが、この苦しみを最悪の敵に押し付けたくはない。それは確かだ」
一方、レース後パドックでこの出来事について話し合っているところを目撃されたゴールディンも、最終的に“グレートレース”制覇を逃すことになったあのミスについて「トライするしかなかった」と自身の見解を語った。
「僕のマシンは非常に速かったが、タイヤが冷えるたびに少しペースが落ちてしまった。セーフティカーが入るたびに、タイヤの温度を上げるのに必死だったんだ」と続けたゴールディン。
「最後のSCから数周後はペースが落ちてしまったが、内圧を取り戻して以降はターン2の進入、下り坂のブレーキング、そしてチェイスのブレーキングがベストだったと思う。そこで何度も追い抜きを決めたんだ」
「クーパーはエルボーが本当に速かったから、ターン1を抜けたとき、思い切ってトライしなきゃいけないって思った。トライしなければ後悔すると分かっていたから、彼にもチームにもうまくいかなかったのは申し訳ないけれど、レースだからトライしなきゃいけなかったんだ……」
こうして聖典を終えたシリーズは残り3戦のファイナルズ・カップへと進んでいき、次戦はその幕開けとなる『ブースト・モバイル・ゴールドコースト500』が10月24~26日に争われる。
[オートスポーツweb 2025年10月17日]
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