以前から抱いていた初代エリミネーターへの疑問
2023年4月に新型エリミネーター(400cc)がデビューしたことで、最近は初代エリミネーターの記事を雑誌やwebで目にする機会が増えている。それらを眺めているうちに筆者の中では、どうしてドラッグレーサー的なスタイルで、どうして250cc以外はシャフトドライブで、どうして旗艦の販売をわずか数年でアッサリ止めてしまったのか……という、以前から抱いていた初代への疑問が再浮上してきた。
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そこで当記事では、1985年から展開が始まった初代エリミネーターに関する個人的な見解を記してみたい。ただし、250は他の排気量車とは素性が異なるので、ここで記すのは主に400cc以上のエリミネーターの話である。
どうしてドラッグレーサー的なスタイルだったのか?
まずはスタイルの話から。そもそも初代エリミネーターシリーズは、GPZ-R各車の派生機種である。
そして既存の空冷Zシリーズを振り返ると、派生機種を生み出す最も簡単な手法はベース車の基本設計をできるだけ転用しながら、リヤショックの短縮や後輪の小径化で車高を下げ、大アップハンドルや段付きシートを採用し、クルーザースタイルの「LTD」を作ることだったはずだ。
ところが初代エリミネーターは、Z-LTDの手法を踏襲することなく、エンジンを除くほとんどの部品を新規開発していた。その理由は、ベース車の基本設計をできるだけ転用すると、クルーザーとしての成立が難しかったからだろう。逆に言うなら、既存の空冷Zシリーズは小変更でクルーザーに変身できたものの、空力を筆頭とするロードスポーツとしての性能を徹底追及したGPZ-R各車に、空冷Zのような汎用性は備わっていなかったのだ。
もっとも、だからといってドラッグレーサー的なスタイルにする必然性はないのである。とはいえ、せっかくエンジンを除くほとんどを新規開発するのだから、カワサキは新しいチャレンジをしたかったのではないだろうか。
そして初代エリミネーターの主要市場となるアメリカのドラッグレースで、既存の空冷Zシリーズが大人気だったことを考えれば、Z-LTDとは路線が異なるロー&ロング指向のモデルとして、カワサキがドラッグレーサーに活路を見出したのは自然な流れだったのかもしれない。
なおフルカウルスポーツモデルの派生機種と言えば、昨今ではネイキッドが定番になっているものの、1980年代中盤のカワサキが販売したその種のモデルは、GPZ400RがベースのFX400Rのみで、GPZ900Rのネイキッド仕様は試作段階で却下されている。フルカウルの進化が急速に進んでいた当時の2輪事情を考えれば、カワサキがネイキッドに力を入れないのは当然のことだったのだ。
どうしてシャフトドライブなのか?
スタイルと同様に、筆者が以前から初代エリミネーターに抱いていた疑問は、ドラッグレーサー的でありながら、400cc以上の後輪駆動をシャフトドライブとしたこと。既存のZ-LTDシリーズにもシャフトドライブ仕様は存在したけれど、基本はオーソドックスなチェーンドライブだったし、静粛性と耐久性に貢献する一方で、ファイナルレシオの変更が困難なシャフトドライブは、どう考えてもドラッグレーサー向きではないのだから。
事実、ノーマル状態でのゼロヨン加速は相当に速かったが、当時のドラッグレースで初代エリミネーターが人気車になったのかと言うと、必ずしもそうではなかった。
ちなみに、ドラッグレーサー的なスタイル+シャフトドライブは、同じ1985年にヤマハが発売したVMAXも同様だったものの、VMAXの場合はパワーユニット(1200ccV型4気筒)の元ネタとなったベンチャーロイヤルの後輪駆動をそのまま踏襲した結果として、シャフトドライブになったのである。一方の初代エリミネーターは、GPZ-R系各車のチェーンドライブをわざわざシャフトドライブに変更したのだから、そこには何らかの意図があったのだろう。
と言っても、筆者にはその意図がどうにも推察できないのだが……。あえて言うなら、シャフトドライブに可能性を感じつつ、250~500ccクラスを中心にベルトドライブ採用車を増やしていた当時のカワサキは、後輪駆動の理想形をいろいろな角度から探っていたのかもしれない。
どうして大排気量モデルの販売をわずか数年で止めたのか?
400/600(海外向け)と250が1990年代後半まで生産が続くロングセラーになった一方で、1987年に排気量を909→997ccに拡大した輸出仕様のフラッグシップは翌1988年に生産が終了し、日本仕様の750はわずか1年で市場から姿を消した。その最大の理由は、前述したVMAXに迫力でもパワーでも勝てなかったからという説もあるが、いくら何でも見切りが早すぎないだろうか。
まあでも、水冷Vツインを搭載する王道路線の本格派クルーザーとして、1985年にVZ750ツイン、1987年にバルカン88(1500cc)がデビューしていることを考えると、初代エリミネーターのフラッグシップの早期撤退は、カワサキにとっては規定路線だったのかもしれない。
もちろん、エンジンを除くほとんどの部品を新規開発しての早期撤退は、非常にもったいない話である。とはいえ、おそらく当時のカワサキは、Z-LTDシリーズが人気を誇っていた1976~1980年代初頭とは異なり、当時の市場が大排気量並列4気筒クルーザーを欲してないことを、初代エリミネーターの評価を通して実感したのだろう。
大排気量並列4気筒エリミネーターが復活する可能性は……?
改めて歴史を振り返ると、フラッグシップに関してはなかなかいい話にはならない初代エリミネーターだが、あれから40年近くが経過して400ccの新型エリミネーターが注目を集めている現在、大排気量並列4気筒を搭載するエリミネーターの復活を期待しているライダーは少なくないと思う。
例えばスーパーチャージャーを装備するH2系、あるいはニンジャZX-10Rの1000cc4気筒エンジンを転用したら、相当に魅力的なエリミネーターの旗艦が作れるんじゃないだろうか。もっとも新型エリミネーターのキャラクターを考えれば、新世代の大排気量並列4気筒エリミネーターに最適なエンジンは、フレキシブルなニンジャ1000SX/Z1000用かもしれない。
レポート●中村友彦 写真●八重洲出版 編集●上野茂岐
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みんなのコメント
カワサキがドラッグマシンイメージのバイクを開発しようと決めたころに
同じくヤマハがドラッグマシンイメージのバイク(V-MAX)を開発してる云々という
情報がアメリカから入ってきて、その後はお互いスパイ合戦みたいになっていったそうで
「ヤマハの新型はシャフトドライブを使ってる」という情報が入ってきたのでじゃあこっちも、
という感じで決まったとかそんなかんじだったそうよ。
アクセルオンでスイングアームが立ち上がりオフでサスが沈むからチェーンと真逆。
けれど耐久性はあるから、こういう機会があれば作りたくはあるんでしょう。
本当にドラッガーとして使うならロンスイ交換しにくいシャフトは嫌われるけど。