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平成名車物語~フェラーリ 456編

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平成名車物語~フェラーリ 456編

1991年頃のフェラーリは、F1 世界選手権の不振や、モデルの旧態化など苦難の時期だった。

そんなフェラーリを救うべく、会長として“マラネッロ”(フェラーリ本社)に復帰したのがルカ コルデーロ ディ モンテゼーモロだった。彼は1970年代前半、不振にあえいでいたスクーデリア フェラーリF1チームを再建したスポーティングディレクター(チーム総監督)を務めた。故ニキ ラウダ氏とともに世界タイトルを奪還した実績を持つ。

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当時のマラネッロは、“Drake(総帥)”ことエンツォ フェラーリが1988年8月に逝去した結果、氏の求心力を失い、明らかな迷走状態にあった。とくに創業以来、フェラーリのレゾン デートルであったはずのF1世界選手権では、エンジニアたちを上手く制御できなかったため、強敵だったマクラーレン ホンダに対抗できるマシンの開発が進まなかった。

くわえて、時の王者アイルトン セナに拮抗し得る唯一のフェラーリ パイロットであるアラン プロストとの関係も悪化の一途を辿っていた。

そんな折、マラネッロに赴任したモンテゼーモロは、1973年からスクーデリア・フェラーリを救ったときとおなじく、抜本的な改革に着手。仏プジョーでスポーティングディレクターを務めていたジャン トッド(現FIA会長)を招聘したり、ロス ブラウンやミハエル シューマッハーを獲得したりするなどした結果、スクーデリア フェラーリF1チームの状況が、一気に好転した。

モンディアルは1980年登場の2プラス2モデル。1993年まで生産された。F1のみならず、フェラーリの市販ストラダーレ部門においても、モンテゼーモロは辣腕を大いにふるった。とくに「モンディアル」などの旧い既存モデルのリニューアルは急務だった。

モンテゼーモロ着任後、初めて世に出たモデルが、1992年デビューの「456GT」だった。

ギャラリー:平成名車物語~フェラーリ 456編上質なコノリー製レザーをたっぷり使ったインテリア。フロントシートは電動調整式。フェラーリ456エアバッグ付きのステアリング・ホイール。販売開始当初は6MTのみの設定。フェラーリ456は4人乗り。1998年登場の「456M GT/456M GTA」のデザインは、奥山清行氏が担当。フロントシートはシートベルト一体型。後期モデルのレザーはポルトローナフラウ社製。フェラーリ456リアシートはセンターアームレストと灰皿付き。フェラーリ456512TRをうわまわる動力性能1985年以来、フェラーリのフラッグシップモデルだった2+2ツアラー「412GT/412AT」は、もともと1972年にデビューした「365GT4 2+2」のマイナーチェンジ&排気量拡大版。ゆえに旧態化が否めなかった。しかし、新たに登場した456 GTによってイメージは大幅に変わった。

かつての4シーター+V12モデルは、やや旧式なメカニズムで構成、あるいは2シーターの先進技術を後追いで踏襲したコンベンショナルなモデルだった。しかし456GTは意欲的な新機構などを積極的に採用した。

ギャラリー:平成名車物語~フェラーリ 456編上質なコノリー製レザーをたっぷり使ったインテリア。フロントシートは電動調整式。フェラーリ456エアバッグ付きのステアリング・ホイール。販売開始当初は6MTのみの設定。フェラーリ456は4人乗り。1998年登場の「456M GT/456M GTA」のデザインは、奥山清行氏が担当。フロントシートはシートベルト一体型。後期モデルのレザーはポルトローナフラウ社製。フェラーリ456リアシートはセンターアームレストと灰皿付き。フェラーリ456456GTは、トランスミッションとディファレンシャルをまとめて後輪側に置いたトランスアクスル レイアウトを採用した。くわえて、ボディのアルミパネルと鋼管フレームを溶接するため、「FERAN」と呼ぶ中間材を使い、さらに巨大なエンジンカウルを、ハニカム構造のコンポジット製とし、軽量化と高剛性を両立、結果、412を大きく下まわる1690kg(本国仕様のメーカー公表値)の車両重量を実現した。

搭載するエンジンは、完全新開発。ティーポF116型65度V型12気筒5.4リッター エンジンは、当時のフェラーリ市販モデル最強の442psを発揮。フェラーリ市販モデル初採用の6速マニュアル トランスミッションと組み合わせた結果、最高速は300km/h超に達した。

フェラーリの有名なテストコース「ピステ ディ・ フィオラーノ」でのラップタイムは、2シーター ミドシップのスーパースポーツ「512TR」をも上まわったといわれる。

ごくわずかの期間使われた“2+2”の名称2+2とは思えないほどにスタイリッシュなボディは、当時のフェラーリでは常道であるカロッツェリア ピニンファリーナによるもの。同社のデザインディレクターだったロレンツォ ラマチョッティの指揮のもと、所属スタイリストのピエロ カルマデッラがデザインワークを担当したと言われている。

スタイリングは当初、BMWの初代「8シリーズ」を思わせる、よりコンベンショナルなプロポーションで進められていたという。しかし生産モデル案では、おなじくトランスアクスル式の駆動系が与えられたRWDフェラーリの名作「365GTB/4デイトナ」を意識した、アグレッシヴなファストバック スタイルへ変更された。

ギャラリー:平成名車物語~フェラーリ 456編上質なコノリー製レザーをたっぷり使ったインテリア。フロントシートは電動調整式。フェラーリ456エアバッグ付きのステアリング・ホイール。販売開始当初は6MTのみの設定。フェラーリ456は4人乗り。1998年登場の「456M GT/456M GTA」のデザインは、奥山清行氏が担当。フロントシートはシートベルト一体型。後期モデルのレザーはポルトローナフラウ社製。フェラーリ456リアシートはセンターアームレストと灰皿付き。フェラーリ456さらに、発表時のカタログや公式ドキュメントには、“Ferrari”の左右に、小さな“MODENA”と“ITALIA”の文字があしらわれ、1960~70年代の旧いロゴも採用している。一説によるとこれらはすべて、かつての栄光を前面にアピールしようとした、モンテゼーモロ会長の“鶴の一声”で決定したとも言われている。ただし、250GT2+2から伝承された車名の“2+2”が、公式に使用されたのはデビューからしばらくのあいだだけで、ほどなく456GTに統一された。

モンテゼーモロ会長は、それまでのフェラーリ製ストラダーレでは若干プライオリティが低かったクオリティについても向上を目指した。しかし、新機軸と先鋭的なテクノロジーを大量搭載した456GTは、次から次へと初期トラブルに見舞われたという。とくにデビュー4年後、1996年に追加設定された4速ATモデルの「456GTA」は、英リカルド社と共同開発したとされるトルクコンバータ式オートマティック変速機に重篤なトラブルが頻発し、456GTのイメージを、少なからず損ねてしまった。

ただし、内外装をリフレッシュしたビッグマイナーチェンジモデルとして1998年にデビューした「456M GT/456M GTA」では、懸案の信頼性も、相当向上したという。

ギャラリー:平成名車物語~フェラーリ 456編上質なコノリー製レザーをたっぷり使ったインテリア。フロントシートは電動調整式。フェラーリ456エアバッグ付きのステアリング・ホイール。販売開始当初は6MTのみの設定。フェラーリ456は4人乗り。1998年登場の「456M GT/456M GTA」のデザインは、奥山清行氏が担当。フロントシートはシートベルト一体型。後期モデルのレザーはポルトローナフラウ社製。フェラーリ456リアシートはセンターアームレストと灰皿付き。フェラーリ456456シリーズは2003年の生産終了までに、456GTが1548台、456GTAが403台、456M GTが688台、456M GTAが 650台。総計3289台がつくられた。11年間という長い販売期間を勘案すれば、生産台数は少なかった。

しかし、旧くは1950~60年代の“スーパーアメリカ”に端を発する超高級クーペにして、当時のフェラーリの最高級モデル。既に主力を成していた8気筒モデルと比べ、ハンドメイド要素が極めて高かった456GTの生産数が少ないのは当然かもしれない。

なにより、のちに“フェラーリ中興の祖”と、ばれたモンテゼーモロ会長が、最初に放った“矢”であるという点に、大きな意味があるのだ。

文・武田公実

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