欧州では6年連続トップセラー
新型ルノー・ルーテシアのステアリングホイールを握っていて嬉しいのが、そのサイズ感だ。全長4075(旧型比-20)×全幅1725(同-25)×全高1470(同+25)mmの車両寸法は、カッコ内で示される通り、旧型とほとんど変わらない。都市部での運転がラク。
厳しくなる衝突試験への対応や商品力アップという美名のもと、モデルチェンジのたびに車が肥大化するのが常のなか、新しいルーテシアが絶対的なコンパクトさを維持できたのは「セグメントにとらわれないジャストサイズを追求したから」(広報資料)ということだが、つまりは先代がセールス的に大成功を収めたからだ。
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ルノー車の存在感が薄い島国ではいまひとつピンと来ないのだが、2012年に登場した先のルーテシアは、6年連続して欧州におけるBセグメントでトップセラーとなる人気を誇った。その理由は数あれど、なにはともあれ「カッコいいから」なのだとか。
モデル末期になっても売れ行きが鈍らないので、なろうことならそのまま販売し続けたいのだが、安全、環境に関する社会的な要求からそうもいかない。「ならば」とばかりに、見た目をできるだけ維持したまま中身をガラリと刷新したのが、クリオ(邦名ルーテシア)としては5代目に当たる今度の新型である。
アライアンス最新のプラットフォームを採用
一見「マイチェンか!?」と思わせるニューモデルだが、ガッツリ土台から変わっている。「CMF-B」と呼ばれる最新プラットフォームを新たに採用した、いうまでもなくフルモデルチェンジである。「CMF-B」はルノーが主導して開発したもので、軽量・高剛性がジマン。今後、日産、三菱といったアライアンスを組むメーカーでも使われるはずだ。近い将来、マーチとミラージュが姉妹車になる、のかもしれない。
ニュールーテシアは、強力にコンセプトをキープしたスタイルながら、旧型からのパネル流用は皆無。クルマにあまり興味がない一般ユーザーにとっては、アルファベットの「C」を形どった新意匠のヘッドランプが、新旧モデルのわかりやすい識別点となろうか。「有機的な曲面で構成されるなか、ボンネットやサイドシルなどに敢えてシャープな直線を採り入れてダイナミックさを演出している」などと説明すると、「ムム、できる!」と思われることでしょう。
日本市場でラインナップされるのは、当面、1.3L直列4気筒ターボと7速DCTの組み合わせのみ。装備によって3グレードが用意される。簡素なゼン(受注生産/236万9000円)。実質的なベーシックモデルとなるインテンス(256万9000円)。そしてレザーシート(前席シートヒーター付き)、バック時などに自車をあたかも俯瞰しているかのように確認できる360度カメラ、アダプティブクルーズコントロール作動時にできるだけ車線中央を走るようステアリング操作を補助するレーンセンタリングアシストなどを搭載したインテンス テックパック(276万9000円)である。
ターゲットを大胆に絞った
この日、試乗に供されたのは、トップグレードのインテンス テックパック。変わり映えのしない・・もとい! キープコンセプトのエクステリアとは対照的に、インテリアはググッとモダナイズされた。運転者に向かって微妙な曲線を描くダッシュボード。液晶画面となったメーター類、タッチ操作が可能な7インチのセンターディスプレイ、2口設けられたUSBポートも見逃せない。
ライトグレーというよりほとんどアイボリーに近いトリム、パーツ類は、長年の日常使いを経たあとの変化が気になるが、新車の車内を見まわす限り、ソフト素材を多用したオシャレなインテリアは一昔前のフレンチハッチでは考えられない贅沢さだ。宿敵たるフォルクスワーゲンや、その上級ブランドたるアウディでさえ、最近では内装面でのコストダウンが散見されるから、ルノージャポンは新型ルーテシアの内装を「強力に宣伝した方がいい」と思います。
スマートな形状のフロントシートは、室内をできるだけ広く使うためか背もたれが薄め。そのうえ背面はえぐられ、後席乗員の膝前空間を稼ぐ。アスリートのボディのようにシェイプされたスタイルで、スポーティなサイドサポートも備わるが、ルノー車ならではの“不思議な座り心地のよさ”は影を潜めた。残念。ヒトもシートも、多少は体脂肪がないといけないのかも。
リヤシートは、座面低めのクッション短め。頭上空間にも大きな余裕はなく、大人用としては“ギリ”実用的。子供のためのスペースと考えたほうがいい。乗降時に、Bピラー付け根付近の切り欠きに足先がひっかかりがちなのが気になるし、新たに直線基調となった外側のオープナーは指が滑りやすいのが難点。総じてルーテシアの後席に高い評価は与えにくい。
一方、トランクは391Lとクラストップレベルの広さ。素直に広い開口部、二重底になったフロアもいい。ラゲッジスペース確保のために、ともするとかさばりがちなサウンドシステムのサブウーハーをFresh Air Speakerと呼ばれる開放型にした工夫も興味深い。
ルーテシアはパーソナルな、または子供がまだ小さいカップル向けのコンパクトハッチとして、限られた車内空間を躊躇なく前席と荷室に割り振っている。トゥインゴに初めて接した際にも感じたのだが、ともすると総花主義に陥りがちなところ、合目的に徹する開発陣の姿勢は偉いと思う。拍手!
ライバルよりも力強い動力性能
さて、本国では3気筒エンジンやディーゼル、ハイブリッドまでラインナップされるが、日本に輸入されるのはメルセデスとの協業で生み出された4気筒の直噴ターボのみ。1333ccの排気量から、131ps/5000rpmの最高出力と240Nm/1600rpmの最大トルクを発生(いずれも参考値)。トランスミッションは旧型と同じデュアルクラッチ式ながら、乾式6速から湿式7速にグレードアップした。ゲトラク製の、これまたメルセデス用と基本的に同じものだ。
ツインカム16バルブの直噴ターボはスムーズに高回転まで回るエンジンだが、むしろ出足のよさ、低中回転域での力強さが印象的。パドルシフトを備えマニュアルモードも設定できるが、ピックアップがいいので、シフターを「D」に入れておくだけで十分速い。ドライブモードとして、ノーマルの「マイセンス」ほか「スポーツ」「エコ」が用意され、シフトタイミング、ステアリングのパワーアシスト量を変更できるが、個人的には必要性を感じなかった。
日本市場でのライバルは3気筒がメインだから、ルーテシアの贅沢な動力系は他車との差別化に有効だ。気になる燃費は17.0km/L(WLTCモード)と、3気筒車と較べて遜色ない。
上質感が際立つハンサムコンパクト
サスペンションは、前:マクファーソンストラット、後:トーションビームというコンベンショナルなもの。205/45R17のタイヤを無理なく履きこなすしなやかな足まわりだ。
アダプティブクルーズコントロールはじめ、衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報など、各種の運転支援システムを装備。カタログでも先進性をアピールするが、いまのところナビゲーションシステムがスマートフォンとの連携に頼っていることが気になる人がいるかもしれない。Android Auto、Apple CarPlayに対応する。
ハンサムで上質感が際立つ新型ルーテシア。小さな高級車……と表現するのは大げさな気もするが、内外装、デザイン、機関面のバランスがよく、リーズナブルな価格で上手にまとめられている。洗練された二匹目のドジョウ。いい意味で、コストパフォーマンスに優れたフレンチハッチである。
<文=青木禎之 写真=ダン・アオキ/山本佳吾>
■インテンス テックパック(FF・7速DCT) 主要諸元
【寸法・重量】
全長:4075mm
全幅:1725mm
全高:1470mm
ホイールベース:2585mm
トレッド:前1505mm/後1495mm
最低地上高:135mm
車両重量:1200kg
【エンジン・性能】
型式:H5H
種類:直4DOHCターボ
総排気量:1333cc
ボア×ストローク:72.2mm×81.4mm
最高出力:96kW(131ps)/5000rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1600rpm
使用燃料・タンク容量:プレミアム・42ℓ
WLTCモード燃費:17.0km/ℓ
最小回転半径:5.2m
乗車定員:5人
【諸装置】
サスペンション:前ストラット/後トーションビーム
ブレーキ:前Vディスク/後ディスク
タイヤ:前後205/45R17
【価格】
276万9000円(消費税率10%込み)
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みんなのコメント
ミッションも湿式になってさらに良し。 ポロよりこっちかな。
30年以上に渡って拡大を続けて来たBセグメント車の外寸が縮小に転じたのは画期的なこと