世界的な半導体不足などの影響により、新車の納期がどんどん長くなっている。ロシアによるウクライナ侵攻などの影響もあり、先行きも全く不透明という状況。競合する車種間でも、納期が半年以上違うケースも出始めている。
そのひとつが、トヨタ「ノア/ヴォクシー」と、ホンダ「ステップワゴン」だ。グレードや仕様にもよるが、ノア/ヴォクシーの納期は、ホームページ上では6か月以上となっており、実際のところは約1年だという。一方ステップワゴンはホームページ上で、ガソリン車ならば3か月程度、e:HEVでも約5か月程度とのこと。これだけ納期に差があれば「ノア/ヴォクシーにしようと思ったけど、ステップワゴンでもいいかな…」と考える人も少なくないだろう。
ノア/ヴォクシー納車待ち1年、ステップワゴン半年、「納車待ち」に車種替えの価値はあるか?
では、ノア/ヴォクシーを検討していた人が、ステップワゴンに車種替えした場合、(デザインはさておき)装備内容の面で不満な点はあるのだろうか。両モデルの違いを改めてピックアップしたのでご紹介しよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:HONDA、TOYOTA
どちらもファミリーカーとして十分な装備
現行型ノア/ヴォクシーは2022年1月、そしてステップワゴンは5月にそれぞれ発売開始となっている。
ノア/ヴォクシーの目玉となる装備は、ハンズフリーデュアルパワースライドドアのほか、助手席側のスライドドアと連動して現れるユニバーサルステップ(パワースライドドア装着車にオプション設定)、任意の位置でバックドアの停止が可能な「フリーストップバックドア」、そしてスマートフォンアプリを操作して車外から駐車や出庫を可能にする「アドバンストパーク」などだ。
一方、ステップワゴンの目玉装備は、静電タッチセンサー付きのパワースライドドアが全車標準装備となっているほか、空気清浄システムの「Clean Air」やトリプル・ゾーンコントロール・フルオートエアコン、メモリー機能付きパワーテールゲート、ハンズフリースライドドア、オートサイドステップ、などだ。
その他の装備内容も、どちらもファミリーカーとして十分であり、それほど大きな違いはないようにも思える。しかし細かいところを見ていくと、両車の違いと魅力が浮き彫りになってくる。
ノア/ヴォクシーのほうが「お得感」を得られるかも
室内空間の広さとシートの使い勝手はどちらも互角。ただし3列目シートはノア/ヴォクシーが跳ね上げ式になるのに対し、ステップワゴンは床下収納の「マジックシート」となる。積載したい荷物の種類によってはステップワゴンの方が便利だと感じるかもしれない。
一方でパワーテールゲートだが、ステップワゴンはリモコンキーもしくはゲートの縁にあるスイッチで操作をするのに対し、ノア/ヴォクシーはサイドのリアクォータードアにスイッチを配置し、車両の横から操作できるのがポイント。細かいところだが、操作時の動きを考慮するとノア/ヴォクシーの配慮に軍配が上がる。
もう一つ取り上げたい要素は「欲しいと思わせる内容に価格が見合っているか」だ。ステップワゴンは「AIR」「SPADA」「PREMIUM LINE」のシンプルな3グレード構成だが、「AIR」グレードにはパワーテールゲートやシートヒーターの設定がなく(オプションでも付けることができない)、これらの装備が欲しかったら上級グレードを選ぶしかない。
また、ステップワゴンのオートサイドステップはオプションで付けることができるが、21万7800円という高額オプション。一方でノア/ヴォクシーのユニバーサルステップは電動タイプではなくカラクリを利用したシンプルな仕様のため、費用が3万3000円とかなり安く済む。
全体的に、ノア/ヴォクシーはオプションの数が豊富で、「欲しい」と思う装備だけを選択できるのが魅力。小さな子どもや年配が乗るのか、大人だけが大勢で乗るのか、荷物をたくさん乗せたいから選ぶのかによって欲しい装備が異なるため、ユーザーが選択できるようになっているのは魅力的といえる。ベースとなるグレードを選んで豊富なオプションから欲しい装備を選べるノア/ヴォクシーの方が、消費者としてはお得感を感じるのではないだろうか。
ノア/ヴォクシーのユニバーサルステップ。オプション価格は3万3000円なので気軽に選択できる
ミニバンとしての基本性能を追求するならステップワゴンでもアリ
以上、ざっと両車の違いを振り返ってみたが、ファミリーカーとしてミニバンを選ぶなら、ノア/ヴォクシーの方が総合的に上回っているように思える。前述のパワーテールゲートのスイッチの位置とか、ステップのオプション価格などの要素はしっかりツボを抑えている。家族の安全を考えて安全性能にこだわる人は多いと思うが、この点でも先進機能やコネクテッド技術を積極採用しているノア/ヴォクシーの方が性能は上。こうした機能性や安全性を重視するユーザーなら、納期がかかってでもノア/ヴォクシーを待った方が後々後悔しないだろう。
一方で、室内空間の広さや荷物がたくさん積める、視界が広々としていて気持ちがいいといった、ミニバンとしての基本性能を追求するユーザーであればステップワゴンに車種替えしても全く不満はないと考える。「AIR」グレードなら価格が抑えられるし、それでいて両側パワースライドドアも先進安全運転支援システムも付いてくる。
◆ ◆ ◆
受注状況を見るとノア/ヴォクシーのほうが上回っており、市場の人気はノア/ヴォクシーのほうが高いようだ。しかしステップワゴンも十分に魅力的なモデルであり、原点回帰したデザインもポイントが高い。
ちなみに、トヨタとホンダ、どちらの販売事情にも精通する業者によると、ノア/ヴォクシーの納期が長すぎなのでステップワゴンに変えたという例は、これまでのところ、ゼロではないが、ほとんど無いそうだ。理由は様々だが、リセールまで考えるとヴォクシー、ノア、ステップワゴンという順序で査定は並ぶ傾向にあり、長い納期を待ってでも、リセールのいいヴォクシーを選ぶ方が多いという。
ただ、長い納期を待てるのか、というのもカーライフを考えるうえで重要なこと。その間家族に不便を感じさせるようでは、意味がないことも考えられる。非常に悩ましい状況ではあるが、後悔しないよう、よく考えたうえで決めるようにしてほしい。
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