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強力なハイブリッドシステムが提供するスポーティな走りが魅力/プジョー408試乗

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強力なハイブリッドシステムが提供するスポーティな走りが魅力/プジョー408試乗

 モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太が2023年6月に日本へ上陸したプジョー408を試乗する。内外装は高い質感とインパクト大の個性があふれ、現代版モダンフレンチと呼べる仕上がり。その内側には強力なハイブリッドシステムを秘め、ドライバーを爽快な気分へと導く走りを披露する。魅力にあふれるプジョー408を深掘りする。

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■欧州で人気のSUVクーペの“新種”が日本へ上陸

プジョー、新たにファストバック・クロスオーバーに変貌を遂げた新型『408』を導入

 初代プジョー408の誕生は2010年のことで歴史は浅いし、日本には導入されていないのでなじみは薄いだろう。フォルクスワーゲン・ゴルフと同じCセグメントに属するハッチバックの308をベースにセダン化したモデルで、主に新興国向けに送り出されてきた。

 2023年6月20日に国内で発表され、7月1日から販売が始まった新型は408としては3代目で、ベースが308なのは先代や先々代と変わらない。だが、308にトランクを追加しただけでないのは一目瞭然だし、プジョーは新しい408を“新種”だと表現している。

 筆者は商品担当者から詳しい話を聞くまでベースが308だと知らずに408を眺めていたし(下調べしとけって話だが)、「インテリアは308とまるっきり同じ」と聞くまで408のオリジナルだと思い込んでいた(鈍感すぎる)。それほど、エクステリアデザインのインパクトが強いということだろう(言い訳)。

 エクステリアデザインは確かに、“新種”と言っていいほどに個性的だ。308との共通点を探し出すとしたら、近年のプジョーのデザインアイコンのひとつになっているセイバーを持つことくらいだろうか。牙を模したデイタイムランニングライトである。デザイナーはセダンを今風に解釈しつつ、そこにSUVの要素を取り込んだという。前後のホイールアーチ上部に配された樹脂性クラッディングがSUVらしさを表現している。

 加えて、車高を高くした。いや、路面からフロアまでの距離である最低地上高を高くしたと言い直したほうがいいかもしれない。全高は1500mmだから、SUVと呼ぶには低すぎる(ありがたいことに、立体駐車場に収まる寸法だ)。最低地上高は308の130mmから170mmへと上がっており、SUV並みの数値を確保。これは205/55R19サイズの大径タイヤの採用で実現している。

 ルーフからリヤに向けてはなだらかに傾斜しており、ファストバックの形態だ。全長は308より280mm長い4700mmであり、延長分を伸びやかなスタイリングの形成に生かしている。リヤバンパーは大胆に斜めにカットされており、樹脂部分を除いてみると、1960年代のイタリア産スポーツカーに見られたコーダトロンカ(切り落とした尻尾)風である。ルーフエンドの折り板状の処理といいサイドの面構成といい、パキパキとした処理が目を引く。

 408はセダンとSUV、ファストバックが混ざったクロスオーバーで、確かに新種だ。完全にSUVなら2008や3008にならって4008とするところだが、そうしなかったのは、純粋なSUVではなく、あくまでSUVの要素を合わせ持つにすぎないからだろう。しかし、実用性の面ではSUV並み、いやワゴン(プジョーでいうところのSW)並みの実力を備えている。そこも408の大きな特徴だ。

 408のホイールベースは308より110mm長く、2790mmだ。延長分を後席居住性の向上にあてている。308でも不足はないが、408の後席足元は広々だ。308に対する全長の延長分は荷室容量の拡大に貢献しており、5名乗車時で最大536リッター、後席を倒すと1611リッターに拡大する。308SWには敵わないが、3008より広い。いかにもワゴンっぽいスタイルは避けたいけどSUV/ワゴン並みの荷室容量を求める向きにはうってつけだ。■PHEVに試乗。「獲物に飛びかからんばかりの鋭いダッシュ力」

 横置きレイアウトのパワートレーンは308と共有する。ガソリンとPHEV(プラグインハイブリッド車)の2種類だ。ガソリンは1.2リッター 直列3気筒ターボとアイシン製8速ATの組み合わせ。PHEVは1.6リッター 直列4気筒ターボとアイシン製ハイブリッドトランスアクスルの組み合わせだ。このトランスアクスルは1モーターと8速ATを内蔵する。グレード名でいうと、『408 Allure(アリュール)』と『408 GT』がガソリン、『408 GT HYBRID』がPHEVとなる。

 試乗したのはPHEVの『GT HYBRID』だ。エンジンは132kW(180ps)/6000rpmの最高出力と250Nm/1750rpmの最大トルクを発生。加速時にエンジンをアシストし、減速時には回生(発電)するモーターの最高出力は81kW(110ps)/2500rpm、最大トルクは320Nm/500~2500rpmである。エンジンとモーターを合わせたシステム最高出力は165kW(225ps)、システム最大トルクは360Nmだ。

 リヤアクスルの後方に12.4kWhの電力量を持つリチウムイオンバッテリーを搭載するため、66kmの一充電あたりEV走行が可能(WLTCモード)。近距離の移動なら電気自動車(BEV)と同じ使い勝手となる。この点が『GT HYBRID』の魅力なのは間違いないが、強力なハイブリッドシステムが提供するスポーティな走りも魅力だ。

 試乗時はバッテリー残量がほとんど空で、エンジンの動力を主体とするハイブリッド走行に終始した。『GT HYBRID』の車重は1730kgあり、ガソリンモデルより310kgも重いが、エンジン主体の走りでも充分にスポーティな走りが楽しめる。センターの10インチタッチスクリーンにエネルギーフローを表示させて観察していると、アクセルペダルを踏み増した際に間髪入れずモーターのアシストが介入するのがわかる。

 表示で確認せずとも、背中をグッと押す感覚でモーターアシストの頼もしさが感じられる。アクセルペダルをオフにして減速フェーズに入ると、モーターの発電機能が働いて運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリーに蓄える。これはハイブリッドシステム搭載車として当然の機能。エネルギーフローを観察していると、定常走行時(低回転低負荷)でもときおりモーターで発電しているのがわかった。

 F1のパワーユニットでも取り入れている制御で、エンジンで走りながら、モーターを連れ回し発電しているのである。モータースポーツで適用する場合はラップタイム短縮が狙いだが、量産車の場合はモーターを連れ回してエンジンに負荷を与えることで、エンジンにとって効率のいい(燃費率のいい)ゾーンで運転する狙いがひとつ。

 もうひとつの狙いは、そうして隙を見て発電することで、不足しがちな電気エネルギーを蓄えておき、次にドライバーが強い加速を求めた際に応えられるようにすることだ。

 こうした緻密な制御のおかげもあり、『GT HYBRID』はモーターの力強いアシストを要所で発揮して、ドライバーを爽快な気分にさせる。アクセルペダルを深く踏み込んだときの力強さは圧巻。獲物に飛びかからんばかりの鋭いダッシュ力を見せつける。

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