マニアック評価
フランスからデザインコンシャスなコンパクトSUVモデルがデビューした。約1年前2018年7月に衝撃的なデビューをしたDSオートモービルのDS7クロスバックがあったが、今回はそのBセグメントサイズの「DS3クロスバック」が登場した。そのDS3クロスバックを借り出し、おしゃれな街、代官山周辺で試乗してみた。
インパクト抜群
ひと目見ただけで印象に残り、存在感、そして他人の目を奪うデザインを持つDS3クロスバックは、2014年6月にフランス・シトロエンから独立し、「DSオートモービル」というプレミアムブランドとしてデビューしている。フレンチブランドだけが成し得る「ラグジュアリー」をキーワードとしたクルマづくりを目指しているブランドなのだ。
人とは違うクルマ、だれも乗っていないクルマがいい、といった嗜好の人にはどハマりするだろう。そしてドイツ車一辺倒だった人には、ガツンと殴られたようなインパクトを受けるに違いない。それほど、従来のクルマの常識を打ち破るデザインでつくられているのだ。
つまり、素材とディテールにこだわり、そもそもがライフスタイルの提案といったタスクを背負っての位置付けだけに、感度の高い人には刺激的に映るに違いない。
乗ってみると
ボディサイズはBセグメントサイズのコンパクトクラス。国内で乗るにはちょうどいいサイズだ。このセグメントにはそもそもプレミアムブランド自体があまりなく、ライバルや比較するモデルも存在しないという独特のポジションにいる。強いて挙げれば、サイズ的にはフォルクスワーゲンのクロスポロやルノーのキャプチャー、国内ならマツダCX-3といったサイズ感になるがいずれも量産ブランドだ。ちなみにボディサイズは、全長4120mm、全幅1790mm、全高1550mm、ホイールベース2560mmで立体駐車場へ入れることが可能なサイズだ。
ステアリングはかなり小ぶりなプジョー方式。他社にはないほど小径のハンドルをまわし、街に乗り出す。1.2Lガソリンターボエンジンはパワーも十分で8速ATと組み合わされている。フランス車全般にありがちだったアクセルペダル、ブレーキペダルが左側へオフセットしてる現象はなく、通常のペダル位置になっているのは嬉しい。そして左足のフットレストも装備され、ドラポジの違和感を感じることはもうない。
ゆっくりとアクセルを踏み込み、代官山の街中へ出る。信号で止まるたびにショーウインドウに映るDS3クロスバックを眺めてみれば、おしゃれな街並みに溶け込むように一気に気分はフランスへワープする。街ゆく人もチラッ、チラッと視線をおくってくる。
40km/hほどまで車速があがり、アクセルを緩め緩加速させて走ると、じつに滑らかに転がる。滑るように走るという表現をよく使うが、なんの転がり抵抗も感じさせることなくすうーっと走る。まさに高級車のフィーリングがあるのだ。コンパクトクラスでこの乗り味は特筆ものと言えるだろう。
乗りごこちはまさにフランス車の乗り味で、コシがあるというのかパスタで言えばアルデンテな乗り味だ。柔らかい食べ物なのにコシがあるというあれだ。シートもタイヤもサスペンションもまさにそのコシのある乗り味を表現するためにチューニングされているように感じる。
CMPというモジュラープラットフォーム
次世代を見据え、電動化への対応も可能とする次世代プラットフォームCMPでつくられているのが、このDS3クロスオーバーで、CMPの第一弾なのだ。プジョー・シトロエングループのB、Cセグメントサイズは今後、このCMP(Common Modular Platform)を順次採用していくとしている。またC、DセグメントにはこれまでのEMP2で対応する。
このCMPはBEV車においてはeCMPと呼び、2025年までにはすべてのグループPSAの車両は何らかの電動化されたパワートレーンになることも予定している。
エンジン・オブ・ザ・イヤー
搭載している1.2Lのガソリンエンジンは3気筒でターボが組み合わされているPure Techエンジンだ。出力は130ps/230NmのスペックにアイシンAW製の8速AT(EAT8)を組み合わされている。このエンジンはプジョー208から搭載が始まり4年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーの最優秀賞を獲得している高効率なエンジンだ。
DS3に搭載するピュアテックエンジンは、最新バージョンにアップデートされユーロ6.3規制に対応するようにガソリン粒子フィルターGPFを装備している。また、排ガスクリーンのために燃料噴射圧も250barまで高められている。が、じつはこの燃料噴射の音がノイズとして聞こえてくる。アクセルを絞ったときやアクセルオフでは、あの滑らかなライドフィールを満喫できるが、加速中は少しこのノイズが邪魔しているのが残念だ。
デザインコンシャス
メーカーの資料には「彫刻が動き出す」という表現が使われている。それほどアーティスティックなデザインになっているが、そのこだわりの一部を見てみると、エクステリアですっきり、洗練された印象としている技法のひとつに、ウエザーストリップが見えない、ということがあるだろう。通常では窓枠の端は黒いゴムのウエザーストリップがあるが、DS3クロスバックは、見えないようにボディパネルの内側に巧妙に収めているのだ。
リトラクタブル・ドアハンドルは、飛び道具のように鮮烈だ。ドアハンドルがボディと一体となるフラッシュサーフェス仕上げにしている。しかもキーを持って1.5mまで近づくと操作なしに、自動で4つのドアハンドルが飛び出し、ドアロックが解除される。反対に3m離れると自動ロックもされ、ある一定の時間が経つとドアハンドルは自動でボディパネル一体へと格納されるのだ。
インテリアでは目を引くデザインが満載。特にインパネ周りは斬新だ。全体にブロンズカラーのファブリックがインパネ全体のベース色となり、ひし形デザインにされたパネルにタッチスイッチが配され、かつて見たことのないデザインでまとめられている。
左右にあるエアダクトもドアパネル側に装備され、従来の常識を大きく変えるデザインにトライし、しかも違和感なくまとまっているあたりはインテリアデザイン革命と言えるだろう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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