遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる"ヤングタイマー"なクルマを振り返るという『ボクらのヤングタイマー列伝』です。今回はフランス車と思い、じゃあプジョー……と決めたところでピンと来ました!プジョー806とその兄弟車!! というわけで今月はまさかの!? 初代ユーロバン詰め合わせですヨ!
ボクらのヤングタイマー列伝第38回『ロードカー・ロスマンズ・ポルシェ』の記事はコチラから
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ボディは共通ながらも前後意匠と内装の小変更のみで、見事に4メーカーの個性を分けていました!
『ユーロバン』と聞いてピンと来た方はかなりの欧州車ツウです。ユーロバンとは、プジョー、シトロエン、フィアット、ランチアが共同で開発した多人数乗りのピープルムーバー。いわゆるMPV、ミニバンですね。3列シートを持つ欧州ミニバンの元祖は1984年に登場した『ルノー・エスパス』ですが、ユーロバンはエスパスに影響を受ける形で1994年に登場。車名はプジョー806、シトロエン・エバシオン、フィアット・ウリッセ、ランチア・ゼータとなっています。ボディは共通ながらも前後意匠と内装の小変更のみで、見事に4メーカーの個性を分けていました。ちなみにエスパスのリアドアが通常の開き方だったのに対しこちらはスライド式となり、商用版が存在するのも違いです。共同開発とは言うものの実質的にはPSAプジョー・シトロエンが主体で、4社ともにパワートレーンはPSA製を採用。エンジンは全て直4で、1.8~2.1リッターのガソリン、ディーゼル、ディーゼルターボとなっていました。
初代ユーロバンは全長約4.5m、全幅1.8m+αというコンパクトさでありつつも、車内には3列シートが設えられており、3列目が簡易的になりがちだった日本の1ボックスカー/ミニバンとは異なり、2列目と同じ座り心地の良いシートを装着していました。その代わりフルフラットにはならず、荷物を大量に積みたい時はシートごと外さねばなりませんが(これが滅茶苦茶に重い!)、外した際の室内の広さは驚異的でした。これはFFゆえの床の低さ……と言いたいところですが、実際はそれほど低くないから不思議です。
ユーロバンは2002年に2代目に進化。ボディの大型化、内装の高級化、商用モデルの切り離し、V6エンジンの搭載などで実用車然としていた初代から"高級モデル"に発展しました。構成する4車種はプジョー807、シトロエンC8、フィアット・ウリッセ、ランチア・フェドラとなっており、ウリッセのみ車名がキャリーオーバーされています。
なお1978年にフィアット+PSAで設立された『セベル』社のフランスにある『セベル・ノール』工場で生み出されていたユーロバンですが、その前身は、セベルの中でもフィアット主導で開発されたモデルを担当する『セベル・スッド』工場で製造された商用モデル、フィアット・デュカト、アルファロメオAR6、プジョーJ5、シトロエンC25でした。ちなみにユーロバンが2014年にドロップした現在も、セベル・ノール/スッドともに盛業中で、それぞれPSA設計のプジョー・エキスパート&トヨタ・プロエース、フィアット設計のフィアット・デュカト&シトロエン・ジャンパーといった、商用バン&ミニバンを作っておりまして、ある意味でユーロバンのDNAを受け継いでいるのでありました(笑)。
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みんなのコメント
元々初代のルノー・エスパスはタルボの前身であるクライスラー・ヨーロッパがシンクタンクのマトラと開発していた車であり、クライスラー・ヨーロッパを傘下に収めたプジョーがマトラごと企画を切り捨てたことで、ライバルのルノーから発売されることになったもの。実際、ルノーのダイヤモンドが不似合いなデザインである。
大ヒットをみすみすライバルに譲ってしまったプジョーの巻き返しがこのユーロバン四兄弟であり、プジョーよりもタルボとして出るのが本来の在り方だったのだ。社用車市場で食っているブランドであるランチアにとっても、待望の一台となった車である。