R32とR34に挟まれた第2世代GT-R次男坊R33型が不人気と言われてる理由と現実
1990年代~2000代初頭まで日本のスポーツカー代表として時代をリードしてきた第2世代と呼ばれるGT-R。R32/R33/R34の3世代14年に渡り生産され、RB26DETTエンジンと日産独自の4WDシステムであるアテーサET-Sのパッケージは同じながら、次男のR33は長男のR32、三男のR34に比べ、長年「失敗作」や「不人気」のレッテルを貼られ、オーナーは苦い思いをしてきた歴史がある。
「ウソだろ? むかし数十万円で売っちゃった……」あまりの高騰ぶりに驚愕必至の国産旧車とその価格
ただ、発売当初、R33に対する世間の期待は大きかった。それは販売台数にも表れており、初年度の1995年は8446台が登録。これは単年で見れば第2世代GT-Rで一番売れている。では、なぜ不人気のレッテルが貼られたのか? その理由は多岐に渡る。
存在意義が失われ、バブルの崩壊でコストダウンが顕著に!
まず、R33GT-Rは開発前段階で日産社内でも不要論が持ち上がるなどケチが付いた。理由はGT-Rの一番の存在意義であった「グループA」カテゴリーはR32登場前に本場ヨーロッパでは衰退し、国内も終焉は時間の問題だったためだ。そのため、基準車はモデルチェンジを行うが、GT-Rは新規開発せずにR32のまま継続する案もあった。これは開発陣の強力なプッシュ(技術の停滞につながるなど)で回避された。
次にバブルの崩壊だ。R33の開発はR32直後から始まっているが、バブルの崩壊で当初の計画通り事が運ばなくなったのは確か。プラットフォームはクーペとセダンで2種類用意される予定(クーペはR34と同じ2665mmの予定)だったが、1種類に削減されるなるなど、開発に支障をきたしていた。パーツの共用化も多岐に及び、ステアリングホイールやパワーウィンドウスイッチなどは基本マーチと同じ(全車共通化が推し進められていた)。 シートはR32と同じバケットタイプを採用したが、表皮はグレードダウンするなど、内装の質感は500万円級のクルマとしては正直チープだった。また、インテリアのデザインはセダンライクの解放感タップリで、スポーツカーとしてはいささか物足りなかった。このあたりは時代に翻弄されたのもあるいが、R32の改善点(室内が狭い)の反動が行き過ぎたのかもしれない!
S耐とル・マン初戦で結果が残せず、走りのイメージがダウン
3番目は1993年の第30回東京モーターショーに参考出品されたGT-Rコンセプトカーのデザイン。開発陣はあくまでもコンセプトであると考え、リ・デザインを想定していたそうだが、余りにも否定的な意見が多かったため、相当悔しい思いをしたそうだ。市販車はグッと精悍で迫力あるスタイルでデビューしたので、コンプリートカーを見せたことは結果的にプラスとなったかもしれないが……。
4番目はモータースポーツでの戦績だ。グループAという参戦カテゴリーを失ったR33が活路を求めたのはスーパー耐久レース(以下S耐)とル・マン24時間レースだ。1995年度のS耐第1戦は初期のマイナートラブルはあったものの、旧型のR32に負けてしまい、ケチが付いた。そして、日産が力を入れたル・マン24時間レースもすでにGTカーからプロトタイプカーへ移行していたことと、マイナートラブルで本命がリタイア、N1仕様がどうにか10位でフィニッシュと想定していた結果は得られなかった(翌年は15位)。
もちろん、R32のようなレギュレーションミートな設計でなかったことが大きく影響しているのだが、やはり名車は神話性も大事。一般のオーナーはどうしても初戦から圧倒的に強く、速かったR32と比較となるので、初めにつまずいたR33は「遅い」「ポテンシャルが低い」というイメージが付いてしまった。
性能は期待以上だが、最初のイメージが今も尾を引いている?
R33は残念ながら他にもさまざまな場面でケチが付いてしまった。ネガな要素が先行すると「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ではないが、ファンは何事も悪い風に捉えてしまうもので、大型化したボディやホイールベースの長さ、車重増などもぞマイナスな印象となることに……。やはり、人間もクルマも第一印象は大事。そのイメージを挽回するのはすごく大変で、正直これが今なお尾を引いている可能性は高い。
マイナスイメージが先行するR33だが、開発ではR32の欠点を徹底的に潰し、一新されたシャシーはR34とほぼ共通で剛性も高く、ニュルブルクリンクオールドコースをR32よりも21秒速い7分59秒88(これがマイナス21秒ロマンのキャッチフレーズに)で駆け抜けるなど、ポテンシャルという面では決して期待外れではない。
ロングホイールベースはR32が持っていたコーナリング時の不安感を解消。スタビリティの高さは最高速やゼロヨンなどの競技では今だR33が重宝されることが多い。居住性も第2世代GT-Rでもっともゆとりがあり、ファミリーカーとしても十分使えるのも魅力。
ハンドリングもスーパーハイキャスやアクティブLSDなど革新的な電子技術も多く、ブレーキにも標準でブレンボキャリパーが奢られ、高い制動能力を発揮するなどR32よりも楽に、安心して速く走れる懐の深いクルマに仕上がっている。また、R34の剛性アップパーツを流用することも可能で、進化の余地はR34と比べてもはるかに上。チューニングカーとしての潜在能力もR33が一番高いのだ。
基本性能の高さ、故障の少なさが国内で再評価。アメリカでも人気高!
さらに、第2世代GT-Rで唯一4ドアであるオーテックバージョンがラインアップに用意されているのもポイントが高い。見た目はファミリーカーでありながら、高性能なポテンシャルを秘めているコンセプトはGT-Rの原点であり、他には初代のハコスカ(PGC10)にしか設定がない。こうした希少車種が選べるのもR33の魅力だといえる。
最近ではR33の基本性能の高さ、トラブルの少なさが国内で再評価され、魅力がクローズアップされるとともに、マッシブなボディはアメリカで人気が高く、今年から25年ルールにも合致するようになった。そのため海外からの引き合いも多く、市場価格も高まりを見せるなど、今や日陰の存在ではなくなりつつある。
R32はGT-Rの復活のシンボルとして、R34は最後の直6GT-Rとして確かにファンから人気は今なお高いが、スタイリングの好みを除けば、長く乗り続けることを一番に考えた場合、ファミリーユースも楽にこなし、チューニングに対する懐に余裕もあるR33が最適なチョイスかもしれない。今後も高騰が続くと予想されるのでR33オーナーは大切に乗り続けてほしいし、手に入れたい人は良質な個体があれば、即決することをオススメする!
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