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渡辺慎太郎が「どうしても乗りたかった」メルセデス・ベンツAクラス セダンの魅力とは? 【試乗記】

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渡辺慎太郎が「どうしても乗りたかった」メルセデス・ベンツAクラス セダンの魅力とは? 【試乗記】

Mercedes-Benz A 250 4MATIC Sedan

メルセデス・ベンツ A 250 4マティック セダン

渡辺慎太郎が「どうしても乗りたかった」メルセデス・ベンツAクラス セダンの魅力とは? 【試乗記】

3ボックスという理想的設計

個人的にいますぐどうしても乗ってみたいクルマが2台あって、ひとつはポルシェ・タイカン。ポルシェが作るBEVのスポーツカーというだけでも興味がそそられるのだけれど、乗り味がまったく想像できないからますます好奇心がかき立てられる。どちらかといえばクルマとしての魅力が薄いと思われがちなBEVの新たなる可能性を示唆しているかもしれない。そんなふうに考えたら夜も眠れない(ウソ)。

そしてもう1台がこのメルセデス・ベンツAクラスセダンである。この話をメルセデス・ベンツ日本のスタッフに言ったら「え?何でですか?」とたいそう不思議がられた。でも、自分のライフスタイルというか、自分のクルマの趣向において、Aクラスセダンはまさにど真ん中に突き刺さるからである。

冒頭にも「個人的に」と書いたように、ここから先にあーだーこーだと書き連ねる内容はあくまでも極めて個人的な見解であり、決して皆さんに押しつけるものではない。だから読み進めていくうちに相容れないと思われても仕方ないと覚悟はできている。

自分はいわゆる“3ボックス”と呼ばれるボディ形状が大好きだ。エンジンルーム/キャビン/ラゲッジルームがバルクヘッドを境にきちんと区切られていて、エンジン/人/荷物それぞれに専用の部屋があてがわれている。この設計が大変合理的だと信じているからだ。

エンジンは振動するし熱も発する。人は静かで振動の少ないスペースを好む。荷物は時に汚れていたり濡れていたり走行中に勝手に動いたりする。エンジンと人と荷物が望む空間にはそれぞれまったく異なる設計要件が必要であり、それを成立させるためには3ボックス以外に考えられないと思っている。

リビングと納戸は別がいい

ワンボックスカーは前席乗員の真下にエンジンがあって、まるでラゲッジスペースの隅に運転席があるようなレイアウトだし、ミニバンやSUVやワゴンは居住スペースとラゲッジスペースが一体化しているから、荷物と同じ空間に身を置かれることに若干の嫌悪感を感じてしまう。リビングルームと納戸が一体化した家なんかないでしょ、と思うからである。

その点、3ボックスは平和である。エンジン/キャビン/ラゲッジルームにはボンネット/ドア/トランクリッドとそれぞれ専用の出入り口が確保されているし、エンジンルームは熱や音や振動を抑制、キャビンは外からの音や振動を遮断、ラゲッジルームはあらかじめゴムマットなどを敷いておけば濡れや汚れにも対応できる。エンジンと人と荷物が各々快適に過ごせるように作られている。みんなが他を必要以上に気にすることなく穏やかに過ごせるというわけである。さらに付け加えておくと、SUVやミニバンなどの2ボックスと比べると、リヤにバルクヘッドがある分だけ、当然のことながらボディ剛性面でも3ボックスのほうが有利だと言える。

W124やW201とまではいかずとも

都内を中心に活動している身としては、ボディは出来るだけ小さいほうが何かと便利である。最近のクルマは拡大傾向にあるので、メルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズなどのDセグメントのクルマですら、「ちょっと大きいな」と感じる場面が多々ある。そこで、このAクラスセダンの登場となる。

「CLAがあるじゃないか」と思われるかもしれないが、自分としてはあのクルマはセダンではなく2+2の4ドアクーペだと思っている。後席は(Cピラーが大きく寝ているので)乗り降りが不自由だしスペースもかなり窮屈だ。大人4人が正しく乗降/着座できないという点で、CLAは当初から眼中になかったのである。そうなると、これまでCセグメントの正統派セダンはアウディA3しかなかったわけで、ようやくこれに対抗する競合車がやってきたということになる。

Aクラス(AMGライン装着車)のボディサイズは全長4560mm、全幅1800mm、全高1430mm。全幅は1800mmを超えると途端に左右方向の大きさを意識するようになるので、どうにか1800mmに収まってくれているのは嬉しい。参考までにA3セダンは全長4465mm、全幅1795mm、全高1405mm。Aクラスセダンより短く狭く低いボディを有している。

実際に都内を運転してみても、Aクラスセダンのサイズ感にはホッとする。最近のクルマがいかに大きいかをあらためて思い知らさる。ただこれも、過去のメルセデスのセダンと比べてみると、それでもかなり大きいことが分かる。世界一有名なEクラスであるW124のボディサイズは全長4740mm、全幅1740mm、全高1440mmだから、全幅はAクラスセダンのほうが60mmも広い。ちなみに、“イチキューマル”の愛称で呼ばれたW201に至っては全長4450mm、全幅1690mm、全高1370mm(W124とW201の数値はいずれも車検証から抜粋)という、いまとなっては驚異的とも言えるコンパクトさを誇っている。

4輪駆動の前後重量配分は60:40

“Aクラス”のセダンなので、ベースはもちろんAクラスである。2730mmのホイールベースと全幅は5ドアハッチバックと同値だが、セダンのほうが全長は140mm長く、全高は10mm高い。プレスリリースには「前後のオーバーハングを切り詰め」と書いてあるが、フロントで915mm、リヤで905mmもあるので、前後のオーバーハングが短いとは言い難い。

ご存じのように、Aクラスはエンジンを横置きするFFの駆動レイアウトを基本とし、エンジンは前車軸よりもやや前方に搭載されているため、フロントのオーバーハングはどうしても長くならざるを得ない。車検証によると今回の試乗車(4MATICなので4WD)は前車軸重は950kg、後車軸重は630kgだから、前後重量配分は60:40となる。FFの駆動レイアウトだと、重量配分はさらにフロント寄りになるだろう。

三角表示板の位置に見る炯眼

フロントシート周りは景色もスペースもハッチバックのAクラスと大差ないが、後席はセダンのほうが余裕がある。身長172cmの自分のシートポジションに運転席を合わせ、その後ろに座ってみても、フロントシートと膝の間には拳1個分以上、ヘッドクリアランスも拳1個分は確保されている。バックレストは必要以上に倒されていないし前方の視界もいいので、これなら大人でも長距離ドライブが苦にはならないはずである。

ドアがサッシュレスでない点も有り難い。ガラスが剥き出しのドアには違和感を覚えるし、ボディ剛性面でも不利である(CLAはサッシュレス)。ラゲッジルームは420リットルで、これはハッチバックの370リットルより50リットルも広い。加えて前後左右にほぼスクエアであり、高さもそこそこあるので使い勝手も悪くないだろう。

トランクリッドの裏には三角表示板がセットされていて、夜間にはトランクリッドを開けただけでも後続車に自車の存在が伝えられる。さすがに昔のように三角形のままではなく折り畳んだ状態ではあるものの、この方法を超える三角表示板の収納はあり得ないと個人的には確信している。こういうところは他のメーカー(特に国産車)もどんどん真似をするべきである。

よく動きよく路面を捉える独特の足

AクラスセダンにはA180とA250があって、A180は1.4リッターの直列4気筒ターボのFF、A250は2.0リッターの直列4気筒ターボの4WDとなる。試乗車は後者だった。最高出力は224ps/5500rpmだが、最大トルクは350Nmを1800~4000rpmという幅広い範囲で発生するので、ドライブモードでコンフォートやエコを選んでいても、日常域でのパワー不足は感じない。組み合わされるデュアルクラッチ式の7速DCTの制御が素晴らしく、例えば高速道路で追い越そうとスロットルペダルを少し踏み増すと直ちにダウンシフトするし、下り坂ではスロットルペダルを戻すとやっぱりすぐにダウンシフトしてエンジンブレーキをかけてくれる。使い勝手の良さが印象的なパワートレインだった。

サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット式、リヤはA180がトーションビーム、A250がマルチリンクとなる。電子制御式ダンパーは日本仕様だとオプションでも用意されていない。つまり試乗車はリヤがマルチリンクでメカサスの4WDである。乗り心地は速度依存度が低く、タウンスピードから高速巡航までほとんど変化がない。ばね上はそこそこ動くものの、減衰が速くないので不快な感じはまったくなく、全般的に乗り心地はいい部類に入る。

懐かしい“足”の雰囲気

ただ、試乗車はオドメーターがまだ500kmに満たないほぼ新車状態だったので若干の渋さがあったものの、これは経年変化で軽減されていくだろう。オプションの18インチを履いてもこの乗り心地なら、電制ダンパーは必要ないと思えたし、17インチはさらにマイルドかもしれない。エンジンルームからの音の遮音/吸音は完璧だが、ハンコック製タイヤが発するロードノイズは若干気になった。

ハンドリングは基本的に素直で安定志向である。特に高速巡航時は操舵応答がよく無駄な動きがまったくないまま、右へ左へとスムーズに向きを変えてくれる。ワインディングロードなど、大きくステアリングを切るような場面ではコーナーへの進入速度や切り始めのタイミングにちょっと気を遣う。そのいずれかを見誤ってコーナーへ入っていくとヨーが先行するような動きになってアンダーステアが出やすい。しっかり減速して少し早めにステアリングを切ってやると旋回挙動が安定してきれいなコーナリングが決まる。

これはおそらく4MATICの影響があると考えられる。Aクラスの4MATICは前後トルク配分が常時可変のタイプで、100:0から50:50の間を行き来する。こうしたオンデマンドタイプの4WDシステムでは、旋回中にアンダーステアの兆候を感じた時にはスロットルペダルを踏んでやるとそれが収まってオンザレールのライントレースが可能になる場合が多いのだけれど、このクルマは思ったほど後輪へ駆動力を移行しないようで、スロットルペダルを踏んでも改善しない時があった。

一方で、路面の接地感は高く、アンジュレーションにより路面から大きめの入力が加わってもタイヤが浮くことはなく、しっかりと接地し続けてくれた。一時、メルセデスはばね上もばね下もあまり動かさないセッティングだったが、最近は上も下も動かす傾向に変化してきた。W124やW201時代はまさにそういう作り方だったので、ちょっと懐かしく思った。

願わくば、先駆者であれ

Aクラスのハッチバックよりも重厚感があってボディもしっかりしているように感じるセダンは、想像通りの好印象だった。日本では小さいクルマ=安いクルマというようなヒエラルキーが存在する。しかし、ボディは小さく上質な高級セダンが欲しいと考えている“大人”は決して少なくないはずである。Aクラスはそういう方にとって、待ち望んでいた1台となるかもしれない。

自分なら4WDもエンジンパワーもここまでは必要ないので、A180を選ぶだろう。これなら車両本体価格は300万円台におさまる。ただし、ご自慢のレーダーセーフティパッケージは標準装備にして欲しい。この25万円は選ばざるを得ないから、A180のStyleだと400万円を超えてしまう。初代AクラスはESPを標準装備にして、その当時はまだオプション扱いだった他のメーカーから一目置かれた。メルセデスにはいつの時代においても、安全の先駆者であって欲しいと願うのである。

【SPECIFICATIONS】

A 250 4MATIC Sedan

ボディサイズ:全長4550 全幅1800 全高1430mm

ホイールベース:2730mm

車両重量:1530kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ

総排気量:1991cc

ボア×ストローク:83.0×92.0mm

最高出力:165kW(224ps)/5500rpm

最大トルク:350Nm/1800–4000rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:4WD

タイヤサイズ:前後205/55R17

車両本体価格(税込):485万円(テスト車:619万9000円)

【問い合わせ先】

メルセデス・コール

TEL 0120-190-610

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