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“名門ペンスキーのエース”ニューガーデンがようやく掴んだ初勝利。残り6戦、インディカー王者争いの行方は?

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“名門ペンスキーのエース”ニューガーデンがようやく掴んだ初勝利。残り6戦、インディカー王者争いの行方は?

 ウィル・パワー、シモン・パジェノー、ジョセフ・ニューガーデン、そしてスコット・マクラフランの4人をフルシーズンで走らせているチーム・ペンスキーだが、今年は1勝目を挙げるまでに11レースを要した。

 チームにその勝利をもたらしたのがニューガーデンだ。ランキングトップ5にいた唯一のアメリカ人ドライバーが独立記念日に優勝。しかも、チーム・ペンスキーの初優勝からちょうど50年目の週末とい最高のタイミングで待望の勝利は実現された。



 ニューガーデンは1990年の12月22日にテネシー州ナッシュビルに生まれた。インディカードライバーとしては珍しい南部出身ということだ。183cmの長身で体重は80kg。結婚もしており、プロポーズしたのは日本での旅行中だった。

 13歳でレーシングカートを始め、入門用フォーミュラでの活躍が認められてイギリスのフォーミュラフォードフェスティバルに参戦。2009年にはイギリスのフォーミュラ・フォードで戦い、GP3にも出場。

 F1路線を進んでいたが、それは2010年までで、2011年にはアメリカに戻り、インディ・ライツに参戦。デビュー年にチャンピオンとなって(アロウ・マクラーレンSPの前身であるサム・シュミット・モータースポーツからの参戦)、2012年にサラ・フィッシャー・ハートマン・レーシング(SFHR)からインディカーにデビューした。

 ニューガーデンはこの10年弱で19勝を挙げ、14回のポールポジションを獲得してきている。現在30歳。史上最強チームからの出場で順風満帆に見えるが、インディカー・デビューが小さなチームからだったため、3シーズンを戦っても勝利もポールポジションもなく、キャリアが終わってしまいそうな危機に瀕していた。

 それが2015年、SFHRとエド・カーペンター・レーシングが合併してCFHレーシングになり、強化された体制下でニューガーデンが力を発揮。2勝を挙げ、キャリア初のポールポジションも記録し、翌2016年にはアイオワで他を圧倒しての大勝利。この勝ちっぷりが認められたのか、ロジャー・ペンスキーから声がかかり、2017年からのチーム・ペンスキー入りとなった。


 ニューガーデンはペンスキーの期待に応え、チーム入り初年度にタイトルを獲得してみせた。残り6戦となった時点で、ニューガーデンのポイントスタンディングは5番手だった。彼より上位にはスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)、シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)という、錚々たる強豪たちが並んでいた。

 しかし、ニューガーデンは気遅れなど一切見せず、トロント、ミド・オハイオで連勝してポイントランキングのトップに躍り出ると、ポコノで2位になった後、ゲートウェイで優勝。4戦して3勝と2位1回という驚異的な快進撃を見せた。

 ワトキンググレンでは18位と振るわなかったニューガーデンだったが、最終戦ソノマでは優勝争いに加わり、2位でフィニッシュ。先輩チームメイトのパジェノーは最終戦で優勝したが、その彼に13点差をつけてニューガーデンが初タイトルを獲得してみせたのだった。


 2018年のニューガーデンは3勝、4ポールポジションで連覇はならず、ランキングも5位と不本意なものに終わった。しかし、2019年には4勝、2PPで二度目のチャンピオンに輝いた。

 2020年は4勝、3PPでシリーズランク2位。ニューガーデンはチーム・ペンスキーに入って以来、2年目の2018年にパワーがポイント3位、ニューガーデンがポイント5位になった時を除いて、チームメイトたちより年間ランキングで上位につけてきている。

 彼より先にチャンピオンになったパワーとパジェノーだが、彼らのタイトル獲得が一度ずつなのに対して、後発ながらニューガーデンはすでに二度栄冠を手にしている。

 あとは彼らが達成しているインディ500での勝利さえ記録できれば、完璧なキャリアができあがるわけだが、チャンピオン争いという点でみれば、すでにニューガーデンがチーム・ペンスキーのエースとなって久しい。そう言って間違いない。

 ニューガーデンのインディ500でのベストリザルトは2016年の3位で、2019年には4位、2020年には5位になっている。彼が世界最大のレースで優勝する日が訪れるのはそう遠くはなさそうだで、これからさらに10年ほども彼がチーム・ペンスキー、そしてインディカーシリーズのエースとして君臨し続ける可能性がある。

■チャンピオン獲得にはシーズン3勝目が必須
 さて、2021年シーズンも残すところ6レースとなっている。2017年にはランキング5番手から大逆転でチャンピオンとなったニューガーデン。果たして彼は今年、キャリア3回目のタイトル獲得を成し遂げることができるだろうか?

 今年の彼は、ランキングだけを見ると4番手とポジションは2017年よりふたつ上だが、トップとのポイント差は69点と、2017年の56点より開きが13点大きい。しかも、今年の最終戦はロングビーチで、ダブルポイントとはされていないから、逆転は当時よりも難しくなっている。

 ニューガーデンが逆転でチャンピオンになるためには、ミド・オハイオで優勝した勢いを保ち、地元ナッシュビルで初開催されるストリートレースで優勝するのがベストのシナリオだ。


 それができれば、彼がキャリア三度目となるタイトル獲得を果たす可能性は一気に膨れ上がる。ポイントトップのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)と、ポイント2番手のパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)とニューガーデンは勝利数=「2」で並ぶことになるからだ。

 パロウたちふたりはどちらもインディカーでチャンピオンになったことがない。プレッシャーとの戦いは、二度タイトルを経験しているニューガーデンに比べると遥かに大きなものになる。

 近年のインディカーでは3~4勝を挙げたドライバーがチャンピオンになっている。上記の通り、2021年シーズンは11戦目まででの最多勝利は2勝がふたり。彼らとしても、少なくともあと1勝はしないとチャンピオンになるのは難しそうだ。パロウとオーワードにそれを実現する力はあるだろうか? 

 そして、ニューガーデン、あるいはランキング3番手のディクソン(1勝)には、同じ残りの6戦で2~3勝を挙げることが求められる。それが彼らには可能なのか? 

 ランキング上位の若手ふたりは、どちらもキャリア初勝利を記録したのが今年なので、残り6レースが開催されるサーキットでの優勝経験はない。それに対してインディアナポリス/ロードコースではニューガーデンとディクソンが1勝ずつ。ゲイトウェイではニューガーデンが2勝、ディクソンが1勝。

 ポートランドとラグナセカではポイントトップ4全員が未勝利。今年の最終戦の舞台となるロングビーチではディクソンが1勝している。

 開幕から11戦のパフォーマンスを見る限り、どんなコースに行っても速いのはパロウとディクソンが所属するチップ・ガナッシ・レーシングで、逆にオワードを走らせるアロウ・マクラーレンSPは安定感に欠け、ここ2戦は優勝争いに絡むことができていない。

 ミド・オハイオで勝利したチーム・ペンスキーは、優勝争いに常に加わって行くところまでチーム力を引き上げることができているのだろうか?

 残り6戦での彼ら、そしてニューガーデンの戦いぶりに注目したい。三度目のタイトルを30歳で獲得となれば、彼はディクソンに並ぶ6回、さらにはAJ・フォイトの持つ7回のタイトルという記録にも挑戦することができるようになるだろう。

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