フルモデルチェンジしたメルセデス・ベンツの新型「E 350 e Sports Edition Star」を、小川フミオがテストドライブ。ドイツ伝統の高級セダンは、大きく進化を遂げていた!
最新のデジタル技術を投入
ラグジュアリーなスーパーSUV──新型ランボルギーニ・ウルスS試乗記
メルセデス・ベンツの新型Eクラスが2024年1月に日本発表され、2月に発売された。
早速乗ったのは、現時点でのトップモデルとして発売されたE 350 e Sports Edition Star。昔からのメルセデス・ベンツのセダンの味を持ちながら、あらゆる点でデジタル化がはかられている。
Eクラスの美点は、余裕ある室内空間と、「Sクラス」より扱いやすい車体サイズ。しかも「新しい技術は(トップモデルでなく)最新モデルに採用する」と、かつて本社の技術者が語ってくれたとおり、これでもか! と、最新のデジタル技術が投入されている。
ホイールベースが先代より20mm延長されて(なんと)2960mmとかなり長くなった車体と、EQシリーズを連想させるフロントグリル(オプションでイルミネーション機能選択可能)など、デザイン的にも一目で「すごい!」と、感じさせる。
E 350 eは現時点でのトップモデル。2.0リッターエンジンを使ったプラグイン・ハイブリッドだ。モーターとのシステム出力は最大で230kWだ。ちなみに下にはISG(マイルドハイブリッド)を搭載した2.0リッターのE200が設定されている。
E 350 eについてメルセデス・ベンツは、「全体として先代よりかなり電気自動車に近いものになりました」なんてすごいことをプレスリリースに記す。自社開発によるバッテリーにおける19.5kWh分のエネルギーを使い、モーターだけで112km走行可能。「日常生活の近距離では電気のみでの走行を主と」するとされる。
実際、都内での試乗では、エンジンの2.0リッターエンジンのキャラクターはほとんどわからずじまい。終始、バッテリーで走行してしまった。加減速のマナーはとてもよく、いまのメルセデス・ベンツ車では、パワートレインはICE(エンジン)なのかモーターなのか、ほとんどわからない。
エネルギー回生についてはブレーキだけでなく、9段ギヤボックスも使うとのことで、減速時にシフトダウンするなどして、常に望んだとおりのブレーキング性能が得られるようになっている。
これについては「ドライバーに意識されることはありません」と、メルセデス・ベンツは述べる。確かに、ブレーキだけなのか、それともシフトダウンも使っているのか感知しにくい。ただし、運転支援システムをオンにしていると、シフトダウンとシフトアップは感じられる。細かくて感心させられた。
操舵感覚は、切り始めがすこし重めで、そこからすっとハンドルが動いていく。昔からのメルセデス・ベンツ車独自の感覚が継承されている。ステアリング形式も変わり、さまざまなサポート技術も変わっても、私(とそれに多くのファン)が好きな独特のステアリングフィールが残されているのだ。
後輪操舵機能もそなわる。かつてのように、後輪に舵角がつきすぎて、慣れないと思ったように後退できず、修正舵によって“くねくね”と動いてしまう……ということもない。むしろ、ハンドルを大きく切りすぎずに曲がれるのが楽だ。
デジタル技術は多岐にわたる。「MBUXスーパースクリーン(助手席一体型ディスプレイ)」のオプション設定にはじまり、第3世代の「MBUX」、特殊な眼鏡なしにドライバーに3D映像を見せる「3Dコクピットディスプレイ」などを装備。
とくにMBUXは機能がうんと向上。ダッシュボード上にカメラがそなわり、サードパーティのアプリ搭載が可能になり、たとえば「Webex」や「Zoom」でのビデオ会議も可能。もはや“走るオフィス”である。むしろ、広々とした後席にカメラを向けるべきではと思わないでもないけれど、Eクラスは自分で運転するビジネスマンが主な顧客なのだろう。
モニターですぐ呼び出せる「ルーティン」なる機能では、ドライバーが設定する複数の機能や条件をリンクさせられる。たとえば車内温度が12℃以下なら、シートヒーターを(自動で)作動させて、アンビエントライトを「ウォームオレンジ」する、なんて設定しておけるそうだ。
ダッシュボードを含むインテリアのデザインは、Sクラスや「Cクラス」よりこなれた感がある。多機能なデジタライゼーションなどの技術とデザインの折り合いの付け方がうまくなっているのだ。
標準車のシートは「ARTICO」なる合成皮革に「MICROCUT」というスエード調ファブリックの組み合わせ。試乗車は「レザーエクスクルーシブパッケージ」装備で、ナッパレザーによる本革張りだ。はなやかな印象はあるが、やや硬めだ。
クッションや角度の微調整機能にくわえ、前後のヒーターおよびベンチレーション機能、前席アームレストにもヒーター機能がそなわっている。「ハイ、メルセデス」の呼びかけで起動する会話型コマンドシステムによって操作も可能で、これも便利だ。
新型Eクラスを堪能するには、ドライブだけでなく、ここで紹介したさまざまな機能を使いこなす必要があるかも。1日や2日の試乗では真価がわからないかもしれない。それだけスゴいクルマなのだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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古臭い上に安っぽくて下品