フォーミュラEシーズン9の第14戦は前日行なわれた第13戦で大クラッシュが発生し、相当数のマシンがダメージを受けていた。果たして翌日の第14戦に何台のマシンが修復を終え、参戦できるのか気になるところだ。
しかしながら、そうした心配をよそに、全マシンがFP(フリープラックティス)に顔を揃え、いつもと同じ22台のマシンで戦うことができたのだ。とは言え、モノコック交換という、ほぼマシンを1台作り上げる作業を行なったのが、サム・バード(ジャガー)、エドアルド・モルタラ(マセラティ・ZF)、セバスチャン・ブエミ(エンビジョン・ジャガー)、ジェイク・ヒューズ(マクラーレン・日産)そしてアントニオ・ダ・コスタ(ポルシェ)の5台だ。
ABB FIAフォーミュラEシーズン9 第13戦 イタリア・ローマ 前代未聞の大クラッシュで大混乱
したがって、FPの走行では頻繁にピットに入りセットアップをする作業が進められていた。そうした中、日産のサッシャ・フェネストラズはバッテリートラブルが発生し、FP3の途中から走行をやめてしまい、グループ予選にも出走できなかった。
さてグループ予選A組ではモノコック交換をしたバードがトップ通過をし、続いてキャシディ、ダン・ティクタム(NIO)、ミッチ・エバンス(ジャガー)という順。NIOのティクタムは5回目のデュエルス進出で、NIOのGen3での進化が目覚ましい。
ダン・ティクタム(NIO)グループ予選B組はジェイク・デニス(アンドレッティ・ポルシェ)がトップ通過で、続いてブエミ、ノーマン・ナトー(日産)、マキシミリアン・ギュンター(マセラティ・ZF)という順でデュエルスに進出した。2番手のブエミもモノコック交換を行なっているが、その影響はなさそうだった。
デュエルスのQF(Quarter Finals)では、エバンスとバードとのチームメイト同士の対決があり、シリーズチャンピオン争いをするエバンスにバードがどう挑むのか注目された。1周のラップタイム競争であるデュエルスの後半まではバードがリードし、エバンスのグリッドが後ろになるかと思われたが、バードは途中アクセルを抜き、エバンスにポジションを譲るチームプレイもあった。
この時点ではジャガーPTを搭載する4台がデュエルスに進出しており、速さとマネージメント力の強さを兼ね備えていることがわかる。
サム・バード(ジャガー)そしてQFを勝ち上がったのは、エバンス、キャシディ、ナトー、デニス。そしてSF(Semi Finals)で対決した4名のうちシリーズランキングのトップ3が顔を揃えるという結果になり、SFにも注目が集まる。
そしてSFを勝ち上がったのは、キャシディとデニスだ。なんとシリーズポイントのトップ2の直接対決ということになり、この時点でキャシディが171点、デニスが2位の166点で、ポールポジションを獲得すると3ポイントが獲得できるので、リードを広げるのか、縮まるのかデュエルス対決が盛り上がる。
その結果、ポールポジションはデニスが勝ち取り、3点を追加しキャシディ171点対デニス169点とわずか2点差まで詰めより、この後の決勝に期待が膨らんだ。
ポールを獲得したデニス2位、3位が絡むアクシデント発生
この決勝レースを含め残りは3レース。最大84点がまだ獲得の可能性があるとあって、チャンピオンシップの行方は見えてこない。上位3人がどんなレースをするのか楽しみとなる決勝レースだった。
そして第14戦は周回数が1周減り24周で前日のエネルギーマネージメントは流用できないように、そしてよりスピーディな展開を狙ったのだろう、チーム力が試されるレースフォーマットになっていた。さらに欧州も熱波に見舞われている様子で、路面温度は60度という厳しい環境で決勝は始まった。
スタートはデニス、キャシディ、ナトー、エバンス、バードという順で、まさにチャンピオンシップを競う3台がガチのレースでオープニングラップを迎える。
デニスがスタートをリード2周目、トップのデニスに、キャシディが仕掛けたタイミングでエバンスもキャシディに仕掛けるが、エバンスは止まりきれずに、なんとエバンスのマシンがキャディに乗り上げてしまうアクシデントになった。エバンスはその後ピットに戻りリタイヤ。キャシディは最後尾につけてレース再開を待つことになった。
このアクシデントでチャンピオンシップを争う、2位と3位が脱落し、ノーポイントとなればデニスは非常に楽になるわけで、その後の展開に注目された。エバンスは修復後も走行はできず、結果リタイヤのノーポイントが確定。キャシディは10位以内を目指して最下位から追い上げることになった。
3周目レースが再開するがデニス、ナトー、バード、ティクタム、モルタラ、ブエミが安定した走行をする。それでもブエミとバードは一つでも順位を上げ、デニスにトップの25点を取らせないことが、チームメイトのサポートになるわけで、激しく上位を狙う走行となった。
ナトーをリードするデニスしかし、その後の展開は落ち着いたものとなり、順位の入れ替えもなく、周回を消化していく。残り2ラップになったところで、全体にペースが上がり、デニス、ナトー、バード、モルタラ、ブエミ、ギュンターがデニスを追いかけるが、届かずデニスが優勝を勝ち取った。
また13位まで順位を戻したキャシディは最終ラップにロッテラーと絡み、再び順位を落としてしまい、ノーポイントとなった。
第14戦ローマの結果は、1位デニス、2位ナトー、3位バードでシリーズポイントではトップのデニスが194点、2位のキャシディは171点でトップが入れ替わり、3位のエバンスも146点でポイントを加算できなかった。その結果1位、2位のポイント差は24点に広がり、残り2戦で大きくデニスが有利となったのだ。
デニスがシリーズチャンピオンに王手をかけたもちろん、逆転チャンピオンの可能性はあるものの、デニスがノーポイントやローポイントにならなければ逆転は難しく、最後のイギリス・ロンドンでの最終2連戦は見逃せない争いになった。
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