BMWの高性能モデルとして比較されるアルピナとM。チューナーとしての活躍からBMW公認の完成車メーカーとなったアルピナ、そしてBMWのレース部門であるBMW M社の両社が送り出すハイパフォーマンスモデルに試乗し、あらためて違いを見ていきたい。
“完成車メーカー”のアルピナと“レース部門”のM
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BMWをベースとした高性能モデルとしてよく比較の俎上にあがるのが、アルピナとBMW Mモデルだ。今回はBMWアルピナD5SとBMW M5に試乗したので、あらためて両者の立ち位置の違いをみていこうと思う。
2020年に創立55周年を迎えたアルピナ社の正式名称は、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社(ALPINA Burkard Bovensiepen GmbH + Co. KG)。BMWのチューナーとしてスタートし、レースなどで活躍、その功績が認められてBMW公認の完成車メーカーとなった。BMWからホワイトボディや主要コンポーネントを譲り受け、独自のチューニングを施して1台1台ハンドビルドしていく。年間生産台数は約1700台を維持しており、無理に増産体制を敷くようなことはしないという。あくまでこれまで培ってきたアルピナとしての品質と味わいにこだわり続けている。
一方でBMW M社の「M」は、モータースポーツを意味するもので、そのルーツは1972年に設立されたレース部門である「BMW モータースポーツ」社にある。現在はGT3マシンなどのモータースポーツ用車両と高性能量産車の開発を並行して行っている。
最新のMには2つのカテゴリーがある。1つはサーキット走行を前提とした「Mハイ・パフォーマンス・モデル」、もう1つはサーキットで培われた技術を取り入れた通常ラインアップの最上位に位置する「Mパフォーマンス・モデル」だ。Mの名を冠したモデルがBMWの通常ラインアップに加えられたことで年間生産台数は年々増加傾向にあり、優に10万台を超えている。この点はアルピナとは桁違いだ。
現行の「Mハイ・パフォーマンス・モデル」(以降Mモデル)のラインアップは、M2、M3、M4、M5、M8、X3M、X4M、X5M、X6Mと実にバリエーション豊富。SUVにすらサーキット走行可能な性能を付与している。
Mモデル最大の特徴は専用設計のエンジン
Mモデルにおける最大の特長は、専用設計のエンジンを搭載していること。例えば、Mパフォーマンス・モデルのM550iの4.4リッターV8エンジンの型式が「N63B44D」であるのに対して、M5の4.4リッターV8エンジンの型式は「S63B44B」となる。
Mモデル用のエンジンば場合、型式の頭文字が「S」になることから、マニアのあいだではS系エンジンと呼ばれたりする。実際にM550iとM5の出力を比較すると、前者が最高出力530ps、なのに対して、M5は600psに、さらにM5 Competitionという最強仕様では625psにまで高められている。
ここでアルピナに話を戻す。今回の試乗車はディーゼルのD5Sだったが、M5との直接対決ということであれば、比較車はアルピナB5というガソリン仕様のモデルになる。そのスペックをみてみると、アルピナB5が搭載する4.4リッターV8は先のS系エンジンをベースに独自のチューニングを施したもので、最高出力621ps、最大トルク800Nmを発揮する。アルピナは、最高出力を追い求めるのではなく、常用域でのトルクを厚くする傾向にあり、M5が750Nmなのに対して、800Nmにまで高めている。
車両価格はM5が1814万円、M5 Competitionが1900万円、アルピナB5が1898万円と、とても悩ましく、かつ絶妙な設定となっている。後編ではアルピナとM、それぞれの味付けの違いを探っていく。
文・藤野太一 写真・ビーエムダブリュー、ニコルオートモビルズ 編集・iconic
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