パリモーターショー2018の話題も盛り沢山だが、ショーとは別に紹介しておきたいのがシトロエン博物館 “Conservatoire Citroen”=コンサルバトワ・シトロエン。この博物館はもともとパリにあったものだが、シトロエンの工場移転に伴って郊外に移転されたものなのだ。
シトロエン博物館は、現在はパリ市内から移転し、シトロエンの現在の工場の敷地内、シャルル・ド・ゴール空港の近くにある。基本的には一般公開されていないとのことで、ある一定の人数がまとまれば事前の申請で見学することができるらしい。
ちなみにもともとパリ市内にあったプジョーの工場跡地として博物館になっていた場所は、アンドレ・シトロエン公園(Parc Andre Citroen)となっている。
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さて、このシトロエン博物館は、展示スペースとしては大きくないのだが、ここですべてのシトロエンの歴史がわかるといっていいほど、シトロエン史上で名の残るモデルはここで保存されている。
今回はこのシトロエンの歴史を端折って、エッセンスだけでも紹介しよう。
シトロエンの創業者、アンドレ・ギュスターブ・シトロエンは元オランダ人。家族でフランスに転居し、エコール・ポリテクニークに入るためにはフランス国籍が必要とのこともあり、国籍をフランスに変え、もともとの姓シトルーン(Citroen)のeをトレマが付いたëで表現したという。
その後、母親の実家であるポーランドの訪れた際に親戚が工場で用いていたダブルシェブロン(やまば歯車)に強いインスピレーションを受け、その高い可能性を実感。その歯車の権利を譲り受けて歯車製造会社を開業。現在のシトロエンマークが生まれるきっかけとなったのが、この歯車だった。
また妻方の親戚が経営する自動車会社モースのディレクターとなるも、第一世界大戦が勃発。アンドレはフランス軍の技術将校となったが、持ち前の製造技術を活かしてフランス15区に土地を購入し、大砲を運ぶ台車などを製造した。
この時の工場には女性しかいなかったが、制服を配給し食事付き、また託児所月といったもので、労働者からも極めて好評だったという。
そして戦後、不要となった工場を利用して生まれたのがシトロエンだ。当初の構想としては超高級車か大衆車のどちらを作るべきかとの選択肢があったが、自営業の個人使用が増えると判断し、一般市民が使える車を作ることを目標とした。
そして生まれたのがA型モデル。アンドレは工場敷設にあたりフォード社を視察し、学んだ大量生産技術をヨーロッパで初めて導入してA型を誕生させた。当時はコンベンショナルなFRレイアウトで、鉄と木を用いたボディだったが、その後B型ではオールスチール製を実現した。とりわけユーザーにとっては多彩なボディカラーを選べるのも魅力となった。
この時期にラジエターグリルにアヒルを冠する時期があったが、実はこれには深い意味があった。エンジンの振動を嫌い、エンジンマウントを採用したのだ。もともとフランスで開発された技術だったが、クライスラーがその権利を買い取る。そこから買い戻して採用したのが、そのエンジンマウント技術だった。エンジンの振動が伝わらない快適なキャビンを、アヒルのバタバタと動く足とまったく揺れない頭の関係に模してアヒルを冠してその快適さをアピールしたという。
ここに、ハイドロニューマチック誕生の起源や、2CVが「醜いアヒルの子」と呼ばれたモデルの親=シトロエンとしての意味が潜んでもいるのだと思う。
さらにアンドレ・シトロエンは企業PRにかけての手腕に優れていた。フランス全土にシトロエン販売店を展開することに加え、様々な場所にCitroënの看板を設置。ついにはエッフェル塔にCitroënの文字を1925-1936年の間掲載していた。また新型車が誕生すると必ずミニカーなどおもちゃも作り、将来のカスタマーを育てたと言われる。
子供には「パパ、ママ、その次にシトロエン」と言わせたい。とは彼の思いだった。
さて、ここから画期的なトラクシオンアヴァン(7CV)が生まれることになるのだが、ここからの話はまた追ってご紹介することとしよう。
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