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初陣キミ・ライコネンはアクシデントに散る。HMS対決の末にラーソンが勝利/NASCAR第25戦

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初陣キミ・ライコネンはアクシデントに散る。HMS対決の末にラーソンが勝利/NASCAR第25戦

 8月20~21日の週末に、レギュラーシーズン最後のロードコースとなるワトキンスグレンにて実施された2022年のNASCARカップシリーズ第25戦『ゴー・ボウリング・アット・ザ・グレン』は、元F1ドライバーのダニール・クビアトやDTMドイツ・ツーリングカー選手権元王者兼ル・マン24時間覇者のマイク・ロッケンフェラー、そして2007年のF1ワールドチャンピオン、キミ・ライコネンがカップシリーズ・デビューを飾るなど、注目の国際ドライバーが多数参戦を果たした。

 そんななか、終盤にチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)との一騎打ちを展開したディフェンディングチャンピオン、カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、接触の遺恨を残しつつ同門HMS対決を制して“ザ・グレン”での連覇を達成。今季2勝目、キャリア通算18勝目を手にした僚友に対し、4位に終わったエリオットがグレンでのカップ初優勝から4年後に、自身初のレギュラーシーズン首位を確定させている。

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 レースウイークを前に、ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を長期契約延長で確保し「将来に向けての確かな足掛かりにしたい」とアナウンスしたチーム・ペンスキーのニュースが掻き消されるほど、クビアト、ロッケンフェラー、そしてライコネンのパドックでの注目度はかつてないほどの高まりを見せていた。

 最初のプラクティスではラーソンが首位、予選ではエリオットがポールポジションを獲得するなど強豪HMS陣営が席巻するなか、デビューセッションで20番手、予選では27番グリッドを獲得した“アイスマン”は、91号車レコグニ・シボレーでのカップ本戦デビューを前に「僕には何も失うものがない」と、らしさ溢れる言葉で意気込みを語っていた。

「もちろん自分のために楽しみたいし、レースではできる限りのことをしようとしている」と土曜朝の時点で語っていたライコネン。「僕らは限られた手数に対して、出来る限りの準備をしたと思う。もちろん、ルールがどのようになっているのかに関してもね。これまでのところ、それは素晴らしい効果を発揮している」

「リスクは感じない、何故それを感じなければならないんだい? 僕が何かを失う必要があるとでも? NASCARで悪いことをしたのか、それとも他のレースで悪いことをした? 何も気にしやしないさ。僕は自分のためにこれをやっているんだ。仮に20戦に出場したら、良いことも悪いことも起こる可能性はあるだろうけどね」

 何か新しいことに挑戦する際にも、これまで“普段どおり”の冷静さで臨んで来たライコネンだが、今回のチャレンジが「将来、より多くのヨーロッパ出身ドライバーが、この機会を獲得するチャンスを増やすかもしれない」との期待も語った。

「ネガティブなものは見当たらない。素晴らしい準備が出来ている。ジャスティン(・マークス代表)とチームが、ヨーロッパの選手たちにチャンスを与えるため何を達成して来たかを考えればね。簡単ではなかったけれど、チャンスを掴んで自分を試してみたいドライバーはたくさんいると思うよ」

 日曜決勝に向けトラックハウス・レーシングの国際ドライバー招待枠『PROJECT 91』最初のひとりとしてレースに挑んだライコネンは、グリーンフラッグを前にストームがこの地域を通過したことで、シボレー・カマロZL1にレインタイヤを装着してのスタートに。するとこの状況が、ウエットでの豊富な走行経験を持つライコネンのポジションアップを後押しをする。

 参戦39台中27番グリッドから発進した91号車は、わずか4周でトップ20に喰い込むと、10周目にはトップ15への道筋をつけ、チェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が首位通過した20周目のステージ1終了時点で19番手にまで進出する。

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 続くステージ2を10番手で走り出したライコネンは、24周目には9番手へ。残り3周でピットストップを消化する前に8番手まで上げ、ここでシャッフルされ28番手でトラックへ復帰したものの、最終ステージを22番手から再開することに。

 しかし運命の45周目。隊列に並んでシケインに進入したライコネンだったが、その前方では僚友ロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)がオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)と絡み、その混乱を避けようとしたロリス・ヘゼマンズ(チーム・ヘイズバーグ・パワード・バイ・ローム・ブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)がライコネンの右側面にヒット。行き場を失った“アイスマン”は成す術なくウォールに激突し、ここでレースを終えることとなってしまった。

「クルマの前方で何が起こっていたのかは分からない」と、インフィールドケアセンターを出た後、落ち着いた様子で事故を振り返ったライコネン。

「そこには良いラインがあったし、周囲の彼らは皆、ちょっとイン側に寄せて押し込みたい雰囲気もあった。僕もタイトなラインを保ってはいたが、誰かが『前でスピンした』とクルーが伝えて来たとき、集団はさらに左に寄り、誰かが僕の側面にヒットしたんだ。その時点でできることは何もなかったよ」と続けたライコネン。

「最初に衝突したとき、手の中でホイールがスピンして僕の手首が弾かれた。何か問題がありそうな痛みだったが、家に帰ったら安静にするさ。それもゲームの一部なんだ」

 レースは残り5周のリスタートでふたたびエリオットvsラーソンの構図が整うと、ターン1に向けレイトブレーキングを敢行したラーソンが、僚友を押しやるようにランオフエリアを立ち上がり首位奪取に成功。このコンタクトでA.J.アルメンディンガー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)やジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)にも先行されたエリオットは、最終的に4位で終わる結果に。

 ふたたび接触も辞さぬ態度で今季2勝目を挙げた僚友に対しては「勝利を収めたカイルと5号車のクルー全員におめでとう」と表情を変えずに語りつつ、次戦までに「話し合うことを期待する」と語ったエリオットだが、ステージ1で自身とトップ10圏内の攻防劇を繰り広げた元F1王者ライコネンのデビュー戦に関しては「彼はとてつもないことをやってのけていた」と惜しみない賛辞を送った。

「彼は集団バトルにおける混乱の真っ只中にいて、まるで“ホーム”にいるように見えた。それは本当にクールだと思うよ」

 一方、今回のカップ戦での経験を踏まえて「次のレース機会を検討するか」と問われた“アイスマン”は、この週末の「すべてを楽しんだ」と応え「それに反対するものは何もない」と語った。

「この週末に経験したすべての出来事が良かったし、彼らはとても親切に僕をサポートしてくれた。最後は間違った場所にたどり着いたのだけが残念だったけどね」と続けた42歳のライコネン。「とくに最初のピットストップ後は、非常にスピードがあったと感じた。最初のセットでは(自身のドライビングが)タイヤに少し厳しすぎたのかもしれないね。とても楽しかった。始めより自信が持てるようになり、良いバトルができた。でも最後にこうなるのも、レースではときどきあることさ」

 これでカップシリーズのレギュラーシーズンは残り1戦となり、プレーオフ進出の16名中最後のひと枠が未確定に。その狭き門を争うブレイニーとマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)は、ブレイニーが25ポイントのアドバンテージを保持しており、契約延長の勢いそのままに“前年度勝者”としてデイトナ・インターナショナル・スピードウェイでの第26戦『コーク・ゼロシュガー400』に挑む。

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