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“Z”にはいろんなひとの思いが詰まっている──新型日産フェアレディZ試乗記

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“Z”にはいろんなひとの思いが詰まっている──新型日産フェアレディZ試乗記

フルモデルチェンジした日産の新型「フェアレディZ」は、とにかく最高だった!

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待望の新型フェアレディZに試乗した。もっとも装備が充実したVersion STの6速マニュアル・トランスミッションである。

やっぱりスポーツカーはマニュアルでしょ! というロマンチストのためのZ。なにがいいって、見どころはふたつ、いや、3つある。

ひとつめは、やっぱりデザインである。一見してロングノーズ、ショートデッキの古典的プロポーションに、現代的なワイド&ローのスタンスを合体、片側それぞれに半月型のLEDを上下に組み合わせたヘッド・ライトが初代S30型フェアレディZを思わせる。

日産自身が捧げたS30型Z へのオマージュ。どこか哀愁を帯びている……ように感じるのは、ピュアガソリン車としては最後になるかもしれないこのZに、筆者がセンチメンタルな感情を抱いているからかもしれない。

リヤフェンダーの、抑制の効いた膨らみもステキだ。テールライトは、「スポーツカーに乗ろうと思う。」の名コピーが記憶に残るZ32型からの引用で、1969年に始まるZの歴史を想起させつつ、レトロ一辺倒というわけでもない。

真横から見ると、じつはロングノーズ、ショートデッキともいえない。そこにデザインのマジックがある。と筆者はニラんでいたりもするのですけれど、単にカン違いかもしれない、と、思ったりもする。

それは、ともかくとして、インテリアのダッシュボードに並んだ3連のサブメーターもS30風で、スポーツカー気分をグッと盛り上げる。

こういう自社のむかしのクルマにオマージュを捧げたデザインは、他社のむかしのクルマに向けてはあったかもしれないけれど、日本車にはなかった。じつは日本車にも、いつの間にか歴史と伝統が積み重なっている。神話、伝説がすでに生まれている。なのに、日本のメーカーはそれを積極的にアピールしてこなかったのは、ニッポン人の奥ゆかしさであるかもしれない。

こんなZは初めてかもしれない。ふたつめは、405psを発揮する3.0リッターV6ツイン・ターボ・エンジンである。スカイライン400Rに搭載されて国内デビューを飾ったこのVR30DDTTユニットを、新型Zでは6MTで思う存分、味わい尽くせる。

最高出力405ps/6400rpm、最大トルク475Nm /1600~5600rpmという数値は400Rと同一で、スカイラインより300mm短い、2550mmのホイールベースのボディに搭載している。車重は1590kgと、スカイラインより170kgも軽い。

旧型Zニスモの3.7リッターV6自然吸気ユニットよりも69psと110Nmも強力になっている。しかも軽やかに、レッド・ゾーンのはじまる7000rpmまでスムーズに回る。アクセルを踏み込むとどこからでも厚みのあるトルクを生み出し、現代のクルマとしては軽いボディを加速させる。

おまけに、操作系が軽い。少なくとも筆者の記憶のなかの従来型より軽くなっており、これがクルマ自体の軽快感につながっている。

エンジンのパワー&トルクの大幅アップに対応すべく、6MTのクラッチ・ディスクとギヤトレインを強化し、シンクロ機構を新設計してもいる。これらにより、先代ニスモよりクラッチペダルも軽めで、なにより6MTのシフトフィールがずいぶんスムーズになっている。

山間部のワインディングロードでは、中高速コーナーの手前で3速に落とし、ステアリングをエイペックスに向けて切り込む。ノーズが気持ちよく入り、エイペックスを過ぎたらアクセルを踏み込む。5000を超えると、フォオオオオンッという快音がいずこかから聴こえてくる。

最初はロングノーズで、リヤアクスルの直前、ではないにしても、車体のちょっと後ろ寄りに座っている感があった。ところが、実際はステアリングが軽めの設定ということもあってか、よく曲がる。しかも安定している。

ライトウェイトスポーツカーのような、ひらりひらり感すらある。ターンインでは日本刀でスーッと斬るような、と書いてみたら、しっくりこない。日本刀というのは、ホントは重い。たとえば、『眠狂四郎円月殺法』みたいな、というか、時代劇の殺陣のような滑らかな動き、に見る、イメージとしての日本刀の切れ味でしょうか。

新型Zの開発コンセプトのひとつに「ダンスパートナー」ということばが使われているけれど、ナルホド、このことを指していたのか、と、腑に落ちた。従来型Zニスモに昨年試乗した記憶で申しあげると、新型はより大きなトルクを得て軽快になっている。操作系も軽くなっていて、高速はもとより、中低速コーナーの連続でも、ひらりひらりと駆け抜けることができる。繊細さを感じさせもする。こんなZは初めてかもしれない。

多幸感に包まれたクルマ6MTのギヤ比はZニスモを引き継いでいるから、エンジンの性能が上がった分がクルマ全体の性能アップにはっきり表れている。2速でレッド・ゾーンの始まる7000近くまでまわすとアッという間に100km/h弱、3速だと150km/h弱に達する。実用スポーツカーとしては、そうとう速い。

筆者のようなヘタレのドライバーにとっての実際上の味わいどころはサウンドにある。フォオオオオオオオオオッという、戦国時代のホラ貝のような、あるいは長くて太い木の筒、ものすごく大きな尺八みたいなヤツをアンドレ・ザ・ジャイアントよりも大きな巨人が息を吹き込むことで生まれるような野太い、原初的な音色が、エンジンの回転数が4500rpmを超えたあたりから車内に轟く。音量が変化するだけで、単調だともいえるけれど、単調であるがゆえにまた聴きたくもなる。

これは、Version STに標準装備のBOSEサウンドシステムという8スピーカーのオーディオの、「アクティブ・サウンド・コントロール」と、呼ぶ機能が、「走行時に、エンジン回転数に応じた音をスピーカーとウーファーから出すことで、車内で聞こえるエンジンサウンドの音質を高めている」という。

機能を正常に作動させるためには、スピーカーやウーファーの周辺に物を置かないのが重要らしい。スポーツカーにとって音の規制は大問題だから、BOSEの果たしている役割は大きい。これが筆者の考える3つめの、新型Zの見どころ、正確には聴きどころですけれど、ということになる。

いや、最初に浮かんだ3つめの見どころというのは、フェアレディZへのみんなの思い、ということだった。

試乗の帰路、東名を走行中に横浜ICの手前でやや渋滞となり、隣のレーンのブルーのトヨタ「86」と並んだ。その86のドライバーがこちらを見て、「あッ!!」と口が動くのがわかった。そして、こちらをしばし追走している風だった。

具体的な例としては、この86のドライバーだけですけれど、新型Zの販売は好調で、コロナ禍や半導体不足の影響も重なり、納期の長期化が見込まれるため、注文の受け付けは一時停止せざるを得ない状況にある。

世界でもっとも成功した、がんばれば手が届く夢のスポーツカー、Zにはいろんなひとの思いが詰まっている。何度めかの復活を決断し、実行した日産のひとたちの思い、それを見守ってきたユーザー、オーナーたち、Zファンのひとびとの思いが、新型Zには詰まっている。

こういう多幸感に包まれたクルマのオーナーになること。それが新型フェアレディZの最大の見どころだと筆者は思ったのでした。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

4件
  • しかし、フェアレディZは街中で見ないね。
    本当に売っているのかってくらい見ない。
  • 「おもい」より「かるい」ほうがいい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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