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事故歴あり・オールペン済みでも2億6500万円!「ミンティフォーティ」の愛称でSNSで超有名なフェラーリ「F40」はお買い得だった!?

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事故歴あり・オールペン済みでも2億6500万円!「ミンティフォーティ」の愛称でSNSで超有名なフェラーリ「F40」はお買い得だった!?

ミントグリーンの「ミンティフォーティ」

前世紀末のフェラーリといえば「ロッソ・コルサ」、赤が定番カラーとして君臨してきましたが、昨今ではちょっと毛色の変わったボディカラーが、「フェラリスティ(フェラーリファン)」の間でも、1950~1960年代のように市民権を確実に取り戻しているかに見えます。そんななか、アメリカで毎夏の恒例となっている自動車イベント集合体「モントレー・カーウィーク」最大規模のオークションとして、RMサザビーズ北米本社が8月15日~17日にモントレー市内で開いた「Monterey 2024」では、本来はロッソ・コルサ1択のはずですが、後世にあえてミントグリーンでリペイントされたフェラーリ「F40」が登場。そのオークションにおける評価がどうなるかについては、世界中の注目の的となりました。

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フェラーリの伝説的傑作、F40についておさらい

世に「普通のF40」なるものは存在しない。これほどの血統と豪放磊落なデザイン、これほど魅力的なパフォーマンス、そしてこれほど希少なクルマは「スペクタクル」以外の何ものでもあるまい。

エンツォ・フェラーリが存命中に開発した最後のスーパーカーとしても知られる「F40」は、それまで40年以上にわたってフェラーリに注ぎ込まれたすべてを純粋に凝縮したものだった。そして、不発に終わったFIA「グループB」マシン、「288GTOエボルツィオーネ」からフェラーリ社創業40周年記念のロードカーへと進化したF40は、コンペティションにインスパイアされた使命をみごとに完遂していた。

レース用に開発された鋼管チューブフレームのシャシーに、4輪ダブルウィッシュボーン式独立サスペンション。コイルオーバー式KONIショックアブソーバー、4キャリパーベンチレーテッドディスクブレーキを装備。ピエトロ・カマルデッラがレオナルド・フィオラヴァンティの指揮のもとでデザインし、ピニンファリーナの風洞で空力学的に完成させたコーチワークは、ケブラーとカーボンファイバーで編まれたパネルで構成され、構造剛性を大幅に高めながら車体重量を削減する。

V8ツインターボからは478馬力を発生し最高速324キロを達成

ドライバーの後方には、IHI製ターボチャージャーとベーア製インタークーラーを装備した排気量2936ccのV型8気筒ツインターボが搭載され、このエンジンはゲート式シフターで作動する5速トランスアクスルと組み合わされた。

その結果「F120 040」型エンジンは478psの最高出力と58.8kgmのトルクを発生し、停止状態から時速100km/hまでわずか4.1秒、最高速度はポルシェ「959」やランボルギーニ「カウンタック」をしのぐ324km/hを達成した。

アグレッシブなルックスと驚異的なパフォーマンスで、世界中で1235台が製造されたフェラーリF40は、そのすべてが自動車史に残るマスターピース。でも、マラネッロのフェラーリ工場から公式に出荷された1235台(ほかに1311台説など諸説あり)のボディカラーは、フェラーリの赤「ロッソ・コルサ」1択だった。

欧州の大物フェラリスタのもとを渡り歩いたヒストリー

今回の「Monterey 2024」オークションに出品されたフェラーリF40、シャシーナンバー「88538」も、当初はこのモデルのデフォルトにしたがって、ロッソ・コルサをまとっていた。

1991年2月27日、ロッソ・コルサのボディに赤い「ストッファ・ヴィゴーニャ(難燃性のジャージ生地)」のインテリアの組み合わせで完成したこの車両は、「フェラーリ・ドイツ」社に引き渡され、同年5月にデュッセルドルフの「オート・ベッカー」社を通じて、最初のオーナーであるドイツのヴェルファースハイムに住むディーター・ウルフ氏に納車される。

フェラーリ史研究の大家であるマルセル・マッシーニ氏が調べたところによると、この個体は1992年にイタリアのムジェッロで開催されたF40ミーティングに出席し、翌年には「フェラーリ・クラブ・ドイチュラント」の集まりにも参加したという。

1994年、シャシーナンバー88538は当時の「ドイツ・フェラーリ・クラブ」会長であり、著名なコレクターであったアーノルド・ガーデマン氏に譲り渡された。ところが彼のもとにあった1998年ごろ、事故に巻き込まれた車両はオランダ人オーナーに売却され、オランダの著名なスペシャリスト「フォルツァ・サービス」社に、純正スペックでの修理を依頼した。

この修理の一環として、フロントのクラムシェルカウルが交換されたが、現在でもドアヒンジ、リアスポイラー、リアフェンダーに出荷時のボディナンバーが残っている。

現オーナーが赤で再塗装するはずだったが……

そして修理が完了してから長い年月が経った2008年、この個体は「フェラーリ・クラシケ」認定を受け、マッチングナンバーのエンジンとギアボックスが残っていることが確認されるとともに、修理が完全なオリジナルの仕様と基準で行われたことが証明された。

この作業の完了後、シャシーナンバー88538 はヨーロッパに戻り、ドイツのバーデンバーデンで開催された「フェラーリ・クラブ・ドイツ 25周年記念ミーティング」に登場した。2003年には「フォルツァ・サービス」社が機械的な故障を起こしていたオドメーターを交換し、当時1万1442kmを表示していたオドメーターを、7118kmを表示していた中古オドメーターに交換したことが書面で確認されている。そののち2010年から2012年まで3年連続で「フェラーリ・トリビュート・トゥ・ミッレ・ミリア」に参加した。

そして2014年にオークションで販売され、2017年に個人所有となったのち、2021年に現オーナーが入手した。当初、現オーナーはこのクルマを赤で再塗装する予定だったそうだが、ペイントが完全に剥離された段階で、新たなアイデアが浮上したとのこと。シャシーナンバー88538は、たとえパーフェクトコンディションで保存されていたとしても、それは決して本当の意味での完全な新車スペックではないからである。

アマルガムのミニカーにもなった知名度抜群の個体ながら……

RMサザビーズの公式ウェブカタログでは「シャシーナンバー88538をひと目見ただけで、そのオーナーがなにを求めていたかが分かる。そのペイントは、スターリング・モス卿のために製作され、最終的にイネス・アイルランドとマステン・グレゴリーが1962年のル・マン24時間レースに参戦した有名なレイストールのフェラーリ250GTO、シャシーナンバー“3505GT”への明確なオマージュ」と謳われている。

また「250GTOは、F40と同様、クラシックなフェラーリ・レッドのカラーリングをまとったモデルとしてよく目にする。しかし3505GTのユニークなカラーリングは、ほかの錚々たるモデルとは一線を画し、その美しいペールグリーンの色合いは、その後のフェラーリ各モデルのペイントカラーにもインスピレーションを与えてきた」とも記されている。

ただし、かつてマツダコレクションの「フェラーリ美術館」に所蔵されていた緑色の3505GTを目にする機会のあった日本人ファンは、おそらくまったく異なる感想を抱くような気がしてならない。ル・マンではリタイヤに終わったものの、その後「グッドウッドTT」で総合優勝した「UDTレイストール」チームの3505GTは、もっと黄味の強い緑色だったはずなのだ。

そんな歴史的な背景はさておき、強烈に個性的なエクステリアカラーを引き立てるため、インテリアはこの地域で最も才能のあるトリマーのひとりで、自動車よりも航空機の内装に慣れている職人によって、巧みにブルーのトリミングが施された。彼の仕事は驚くべきもので、「ミンティ」のコンセプトに新たな一貫性をもたらすことになる。

このマシンをひと目見れば「ミンティフォーティ」という不朽のニックネームを与えられた理由がわかるものである。シャシーナンバー88538は、このかたちで再デビューして以来、どこへ行っても注目の的となり、とくにソーシャルメディア上では無数の投稿に登場している。

走行距離は3万1000キロに達している

また、有名な超高級模型メーカーである「アマルガム」社によって、1/8および1/18の正確なスケールで再現されたことも重要なトピックである。このミニチュアモデルはフェラーリの公式ライセンス製品に認定されており、このオークション出品に際しては1/18スケール版が添付されることになっていた。

このミンティフォーティは、2022年以来「シャルトクリッセ」社によってメンテナンスされており、その整備記録は請求書に残されている。また、F40では消耗品ともいわれる燃料タンクは2022年に交換され、同じく消耗品として知られるタイミングベルトについても、大がかりな点検・交換が行われた。

オークション公式ウェブカタログの作成時点で、走行距離は3万1000km強に達しているが、これはF40としては健全なマイレージであると売り手側は主張していた。

「ミンティフォーティは、どこへ行っても強烈な印象を与えるカリスマ的マシン。気の弱い人には向かない」

そんな挑戦的なPRフレーズを添えて、RMサザビーズ北米本社は190万ドル~250万ドル(邦貨換算約2億8000万円~3億6750万円)という、近年におけるフェラーリF40のマーケット市況を鑑みたエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが、モントレー市内の大型コンベンションセンターで挙行された競売では、期待されていたほどにはビッド(入札)が伸びなかったようで、手数料を合わせてもエスティメート下限を割り込む179万2500ドル。つまり、日本円に換算すると約2億6500万円で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのである。

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