5年越しのデビュー 次世代の電動バン
初代マイクロバスをEVとして復活させたフォルクスワーゲンID.Buzz(IDバズ)が、2017年のデトロイト・モーターショーで公開されてから5年。待望の市販モデルが発表された。
【画像】新型フォルクスワーゲンID.Buzz【他の電動バンと写真で比較する】 全128枚
既存のフォルクスワーゲン・マルチバンと同じドイツ・ハノーバー工場で生産される完全EVで、乗用車と商用車(後者はID.Buzzカーゴ)の2種類が5月に欧州で発売される予定だ。10 月には納車を開始する。
当初は1モーター、後輪駆動の仕様で販売される。リアに同期モーターを搭載し、最高出力204ps、最大トルク31.5kg-mを発揮する。
価格はまだ正式には発表されていないが、商用車は4万ポンド(約600万円)前後から、乗用車は5万ポンド(約760万円)近くになると予想される。メルセデス・ベンツEQVなどと競合することになるだろう。
グレードは「ピュア」、「プロ」、「パック」の3種類を用意。2023年にはデュアルモーター、四輪駆動のパワフルなモデルが、2024年にはキャンパー仕様のID.Buzzカリフォルニアがラインナップに加わる予定だ。
乗用タイプのID.Buzzは、内燃機関搭載のマルチバンと同様のボディスタイルとなっている。5人乗りスタンダードホイールベースモデルに加え、2023年には7人乗りのロングホイールベースモデルも導入する予定。いずれも、フロントドアは従来のヒンジ式、リアは左右スライドドア(オプションで電動式)、テールゲートは上開き式となる。
商用タイプのID.Buzzカーゴは、サイドに1枚または2枚のスライドドア、リアに上開き式のシングルテールゲートまたは観音開きの窓なしドアのいずれかを備える。
ホイールベースはMEB最長 3列シートも
フォルクスワーゲンの汎用性の高いEV用プラットフォーム「MEB(Modularen Elektrik Baukasten)」をベースにしたID.Buzzは、初期のコンセプトと同様に箱型のプロファイルを持ち、全体的に角張ったデザインになっている。
コンセプトとの違いとしては、フロントガラスがやや後方にセットされ、衝突安全性能と空力効率が向上している。また、LEDヘッドライトやフルワイドLEDテールライトなどのディテールも見直され、よりテクニカルな外観となった。ホイールは19インチと20インチを装着できる。
スタンダードホイールベースのモデルは、全長4712mm、全幅1980mm、全高1938mm。既存のマルチバンよりも全長で192mm、全幅で76mm、全高で32mm小さくなっている。ホイールベースは2988mmで、フォルクスワーゲンID.3、ID.4、ID.5、中国市場向けID.6などMEBベースのモデルとしては最長となる。ただし、マルチバンのホイールベース(3000mm)にはわずかに及ばない。
ロングホイールベースモデルのサイズは未確認だが、関係者によれば、ホイールベースが250mm長くなり、最大3列のシートを収容できるようになるとのことである。
前面投影面積が大きいにもかかわらず、空気抵抗係数のCd値は乗用タイプで0.28、商用タイプで0.29と、バンの基準からするとかなり低い。
使い勝手重視の室内 収納も豊富
インテリアでは、マルチバンと同様の人間工学に基づいたドライビングポジションを、独自のスタイルで実現している。フロントシートはID.4より261mm高くセットされ、全方位の視認性を高めた。また、上級グレードの「プロ」にはアームレストを装備し、キャプテンチェアのような仕様となっている。
ハイマウントでミニマルなダッシュボードには、5.3インチのデジタルメーターディスプレイと10.0インチインフォテインメント・タッチスクリーン(オプションで12.0インチ)を搭載。他のIDモデルでは、メーターディスプレイの高い位置にロッカー式コントローラーが取り付けられているが、ID.Buzzではステアリングコラムに取り付けられたレバーで操作する。このレバーでは、D(ドライブ)やB(バッテリー)など走行モードも変更可能だ。
室内をより広く見せるために、2トーンカラーを含むさまざまなカラーリングを用意。アンビエントライトもオプションで追加できる。
収納スペースを重視し、ダッシュボード下部に2つの大型ドリンクホルダーが現れるコンパートメントや、フロントシートとドアトリムの間に「バズ・ボックス」と呼ばれる栓抜きとアイススクレーパーを備えたセンターコンソールを装備している。
フォルクスワーゲンはまた、最大8つのUSBポートと、オプションで携帯電話のワイヤレス充電器を設定するとしている。
荷室広々 商用ユースに対応
他のIDモデルと同様に、内蔵SIMカードによるOTA(無線)ソフトウェアアップデート機能を搭載し、ディーラーなどに立ち寄ることなく各種機能のアップデートができるようになっている。最上級グレードでは、V2X通信(他の車両やインフラなどとの接続)、ローカルハザードワーニング、自動車線変更機能を備えた「トラベルアシスト」など、30 種類以上の運転支援システムを搭載している。
リアシートは60:40分割で折りたためるが、取り外してラゲッジ容量を拡張することはできない。スタンダードホイールベースモデルのラゲッジ容量は1121Lで、リアシートを倒すと2205Lに拡大できる。荷室フロアは完全なフラットではないが、フォルクスワーゲンによると、オプションでベッドフロアが用意される予定だという。
商用タイプのID.Buzzカーゴの荷室は、3900Lもの容量を誇る。最大積載長は2200mm、高さは1250mm、幅は1700mmとなっており、ユーロパレットを2枚並べることができる。キャビンと荷室はパーティション(オプションで窓付き)で仕切られる。また、固定用レールと最大6個のラッシングポイントを備え、荷物の安全性を確保する。
サイドに23個の窓を持つマイクロバス・サンバの再現は見送られたが、パノラミックガラスルーフがオプションで用意されている。
航続距離は約400km 4WD仕様も計画
初期モデルには、77kWhのバッテリーが標準装備されている。このバッテリーはフロア構造内に組み込まれており、フォルクスワーゲンが「背の高いバンとしては比較的低重心」と説明するように、重心が低くなっている。
後輪を駆動するのはリアアクスルアセンブリに搭載された同期電動モーターで、204psと31.5kg-mを発生する。出力はメルセデス・ベンツEQVと同じだが、トルクは5kg-m少ない。
フォルクスワーゲンは、まだ公式の性能数値を発表していない。参考までに、同じようなパワートレインを持つID.4プロ(車重2109kg)の0-100km/h加速タイムは8.5秒と謳われている。一方、最高速度は145km/hに制限されている。
充電は家庭用電源で11kW、交流式で22kW、直流式で170kWまで対応。いわゆるプラグ&チャージ機能により、クレジットカード情報を充電器と通信することができる。また、DCウォールボックスでの双方向充電にも対応しており、ID.Buzzから家電製品に直接電力を供給したり、家庭用バッテリーの補充電を行ったりすることが可能だ。
正式な航続距離は未発表だが、フォルクスワーゲンはWLTPサイクルで約400kmと見込んでいる。
初期モデルのパワートレインは1種類のみだが、今後は最高出力170psと最大トルク31.5kg-mの後輪駆動シングルモーターも追加される。また、最高出力300ps、最大トルク46.8kg-mを発揮する四輪駆動デュアルモーターの高性能モデル「ID.Buzz GTX」も登場する見込みだ。
フォルクスワーゲンはAUTOCARに対し、スタンダードホイールベースには、52kWhの小型バッテリーも導入する計画であることを明らかにした。また、2023年に発売されるロングホイールベースでは、より大型の111kWhバッテリーを設定するという。
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクを採用。フォルクスワーゲンのDCC(ダイナミック・シャシー・コントロール)システムが搭載され、アダプティブ・ダンピングと最大3種類の走行モード(エコ、コンフォート、スポーツ)に対応している。
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