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自動車のメートル原器、マツダ・ロードスター【日本版編集長コラム#50】

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自動車のメートル原器、マツダ・ロードスター【日本版編集長コラム#50】

なぜかこの2年間ご縁がなく

EV用バッテリーを充電するレンジエクステンダーとしてロータリーエンジンを搭載した『マツダMX-30ロータリーEV』にじっくりと試乗した、というのが前回までのお話。続いて取材したのは、『マツダ・ロードスターS』である。

【画像】自動車のメートル原器、ND型マツダ・ロードスター! 全72枚

ちょうど2年前となる2023年10月5日にマイナーチェンジが発表され、翌年より販売がスタートした現行ND型ロードスターだが、これまで触れる機会がなかった。個人的に2015年の新車発表からひと通り取材していて、カー・マガジンの誌面を中心に何度原稿を書いたか数え切れないほどだが、なぜかこの2年間ご縁がなく……。

というわけで、待望の『新型』ロードスター取材となった次第。乗るべきはやはり一番ベーシックなモデルということで、6速MTのみが設定される『S』を選んだ。

乗り込んで最初に気がついたのは、8.8インチのセンターディスプレイにナビゲーションが搭載されていることだった。それまでのSはナビが付かない小さなオーディオディスプレイだったが、コストを考えても作り分けるほうが効率悪いということだろう。

その結果、車重は1100kgと1トンをオーバーしてしまったが、それでも現代のクルマとしては相変わらず軽量な部類となる。ナビがついたとはいえ、現代的な装備はなるべく省かれているからだ。

気がついたところでは、ドアノブ横のボタンを押すことでロックが解除される機能、バックギアに入れた時に表示されるバックモニターなどがなく、エアコンも温度設定がないマニュアルタイプだった。

しかし、これでいい。必要ならば、装備が充実した上級グレードも選ぶことができる。それよりも大事なロードスターとしての金科玉条を一番理解できるのが、ベーシックなSグレードというわけだ。

クルマの大きさが視覚的に伝わってくる

クルマを真横から見ると、ドライバーが車両のほぼ真ん中に位置していることがわかる。そこを中心に旋回することの気持ちよさは、スポーツカーにおける運動性能の基本中の基本を見せられているかのようだ。

小さなクルマではあるが、コクピットからの景色はボンネットフードの大きさがわかりやすく、クルマの存在感が視覚的に伝わってくる。サイドウインドウの位置が低いことで開放感があるのもロードスターならではで、他の多くのオープンカーは剛性や安全性を重視してか、高い位置にあることが多い。

シートに座ったまま簡単に開けることができるソフトトップ。インテリアにも使用されたボディ同色のパネル。手首だけで操作ができるショートストロークのマニュアルシフト……。

うおおおおおおおおおおお!!!!

……すみません、取り乱しました。しかし改めてこうして原稿を書いていて、やはりロードスターは最高だと思う。

これまで私は、『今新車で購入すべきクルマは、アルピーヌA110とマツダ・ロードスターの2台』と何度か書いてきた。もちろん、他にも幸せになれるクルマはたくさんあるが、A110は次世代で電動化されるのが確定的だし、ロードスターもどうなるかは不透明。しかし今ならこんなにも純粋なスポーツカーを新車で購入できるのだから、無理してでも手に入れるべき……という意味である。

というわけで、年に一度は必ずやってくる『ロードスター欲しい病』が今回も発症したのであった。

ルーフを閉じた状態が断トツに美しいRF

続いて電動ハードトップを持つモデル、『ロードスターRF』をお借りして乗ったところ、意外にも「うわあ、これかも……」と思ってしまった。

クーペが大好物の筆者にとって、ルーフを閉じた状態が断トツに美しいRFもまた、新車で購入すべき1台だと思っている。特に今回はマシングレーのボディカラーだったが、ソウルレッドメタリックを纏った時の艶やかさといったら……。

ただ、以前の試乗でルーフを閉じた時に重量物が上にある感じが気になって、個人的に運転するならソフトトップ、ガレージで眺めるならRFと結論付けていた。ところが今回、その印象が一変した。正確に書くと、『筆者が年齢を重ねたことでRFのほうが身体にフィットするようになった』というのが正しそう。

実は今回ロードスターSに乗っていて不覚にも、「若かったらこれで日本一周したかもなぁ」と思ってしまった。相変わらず手足の延長にクルマがある感覚は素晴らしいのだが、逆に長い距離を乗っているうちにだんだん疲れてしまったのだ。

しかしソフトトップの1.5Lに対し、RFは2Lエンジンで、しかも今回お借りしたのがATだったので、高速道路を使用した長距離移動の多い現在のライフスタイルで、GT的に使用する乗り方がジャストフィット。適度に重心が低くて運動性能が高く、しかも快適装備はひと通り装備している。内装のレザーシートもいい塩梅だ。

トドメを刺されたのが、静岡県東部の自宅から国道1号線を箱根方面に登り、そこから箱根新道を下り、そのまま西湘バイパスで早朝に海風を受けて走ってしまったこと。

うわああああああああ……!!!!

すみません、また取り乱しました。しかしこのあまりにも気持ちいい瞬間が決め手となり、2025年晩夏のロードスター・ベストバイは、このRFとなったのである。しかも、2015年から何度もロードスターを試乗してきて「ATでもいいかも」と思ったのは、これが初めてのことだった。

「ちょっと旧いかな」と思う瞬間

最近、取材で電動化されたモデルに乗ることが多く、これまで理想としてきたクルマ、特にスポーツカーの価値観は『旧き佳きもの』になりつつあると感じている。正直に書くと、今回試乗した2台のロードスターも「ちょっと旧いかな」と思う瞬間があった。

もちろん、旧いことは悪いことではない。それを大前提として、マツダ・ロードスターはいい意味で『新車で購入できるクラシックカー』なのだと思う。そしてスポーツカー、いや自動車の基本中の基本を教えてくれる『メートル原器』のような存在でもある。

こんな偉大なクルマを10年作り続けてきたマツダに対しては尊敬の気持ちしかないし、もっと遡れば、初代NA時代から合わせて36年とは……。どうやら今回の『ロードスター欲しい病』は、しばらく治まりそうにないようだ。

そしてこのマツダ話、実はまだ次回に続きます。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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