バン・ライクなドライビングポジション
フォルクスワーゲン・タイプIIと比べて、明確に大きくなった同社最新の純EV、ID.バズ。ただし、やみくもに成長したわけではない。
【画像】ワーゲンバスがEVで復活 フォルクスワーゲンID.バズ ワンボックス純EVは他にも 全103枚
ルーフラインは2mを切るから、欧州なら多くの立体駐車場に入れる。現行のフォルクスワーゲン・トランスポーター、T7と比べると全長は抑えられており、一般の駐車スペースにも問題なく停められる。
現代の基準でいえば、妥当なボディサイズの実用車とはいえるだろう。フォード・トランジットより小さく、シトロエン・ベルランゴよりは大きい。
今回、筆者が運転を許されたのは、商用車仕様となるID.バズ・カーゴのプロトタイプ。フォルクスワーゲンから与えられたのは1時間のみで、車内の殆どが偽装されていた。
一般的な乗用車仕様がどんなドライブフィールなのか、車内空間がどれくらい広いのか、実際には確かめられなかった。それでも、かなり期待はできそうだ。
少し高めの運転席へ、足に力を込めて身体を滑らせる。車内へ落ち着くと、フォルクスワーゲンらしい人間工学に優れたシートが、身体を支えてくれる。ゴルフより上を向いたステアリングホイールや、ペダルの配置が、バンに乗っている気分にさせる。
ドライブセレクターは、ステアリングホイールの右側にあるレバー。初めは不自然に思えたが、すぐに慣れることができた。
洗練された走りの質感 乗り心地も穏やか
メーターパネルは、ID. 3などと同様に全面がモニター式。お望みなら、最大で12.0インチのインフォテインメント用タッチモニターも、ダッシュボードに据えられる。
現代のモデルらしく、アンビエントライトやスマートフォンのワイヤレス充電機能なども付けられる。上級なID.バズに仕立てたいなら、オプションで21インチまで、ホイールをインチアップすることも可能だ。
アクセルペダルを踏み込むと、とてもスムーズでレスポンシブにID.バズは発進した。市街地の交通なら、充分なパワーを備えている。それ以上の速度を求めると、加速力は陰りを見せる。テスラとは違う。
追って登場するツインモーターの方が、動力性能の印象は良さそうだ。といっても、ワーゲンバスにそんな速さは必要ないと思う。
求められるのは、家族全員が笑顔で座れ、荷室やルーフにキャンプ道具やレジャーアイテムを積んで走れること。運転しやすいということが、1番の優先事項だといえる。速さの優先順位は、ずっと低い。
走りの質感はとても洗練されている。従来の小型商用車と比べれば、毎日の仕事を遥かに心地良くこなせそうだ。駆動用モーターが静かなだけではなく、乗り心地も穏やかで、路面からの入力の影響を受けにくい。
商用車仕様の場合、リアのコイルスプリングがわずかに硬いそうだが、それでも乗り心地は良かった。短時間走った高速道路では、フロントガラス周辺から出る風切り音も小さかった。
ゼロエミッションのファミリー・ワンボックス
ステアリングの反応は、遅すぎず速すぎず。姿勢制御も落ち着いており、グリップ力も高い。フロントタイヤの切れ角は大きく、駐車場など狭い場所での取り回しもしやすい。
といっても、コーナリングがライバルより機敏とまではいえないようだ。ボディが大きいことを実感する。ひと回り小さく、低く、軽ければ、違ったかもしれない。新しいワーゲンバスの動的能力は、少し重さを感じさせるものだった。
それでも、郊外の流れの速い一般道でなら、シャシーのアドバンテージを体験できるように思う。高めの速度域では、優れた姿勢制御を実際の身のこなしで感じられる可能性はある。より自由な試乗を許されるまで、待つしかない。
多用途でゼロエミッションのファミリー・ワンボックスとして、ワーゲンバスが遂に復活する。あるいは、仕事用のバンとして。ただし、お値段は高めのようではある。
快適性や装備、車内空間、利便性、航続距離、扱いやすさ、羨望の眼差しなど、新しいID.バズへ期待できるものは、非常に多い。フォルクスワーゲン自らの想いも、小さなものではない。
純EV時代になっても、ワーゲンバスに代わるモデルは他にないといえる。価格に対する価値を、市場は認めるのではないだろうか。
フォルクスワーゲンID.バズ・カーゴ・プロトタイプのスペック
英国価格:5万ポンド(約775万円/予想)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:144km/h(リミッター)
0-100km/h加速:−
航続距離:402km(予想)
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2200kg(予想)
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:77.0kWh(実容量)
最高出力:203ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:−
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