2017年10月4日、ホンダは八郷隆弘社長が出席する緊急記者会見を行ない、国内生産拠点の進化とグローバル生産技術の進化において、日本をマザー工場として行なう構想を発表した。しかしその内容は埼玉製作所の大幅な改編と、国内生産体制の見直しであった。
これまで東京近郊の埼玉製作所は、狭山完成車工場、小川エンジン工場、そして最新の寄居完成車工場という3工場で構成されていた。また軽自動車は設計、開発も含めて鈴鹿製作所が担当し、ホンダの国内市場のクルマを生産してきた。
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今回、2021年度に閉鎖と決定された狭山完成車工場は、1964年にホンダの四輪車用量産工場として誕生し、大黒柱ともいえる工場だった。現在はステップワゴン、オデッセイ、ジェイド、レジェンド、アコード、フリードを生産しているが、ステップワゴン、フリード以外の車種は生産台数が少なく、稼働率が低下しているといわれている。
そのため、今後は最新の寄居完成車工場に自動車生産を集中し、従業員も寄居に異動する。寄居工場は最新の設備を導入し、従来からグローバル生産のマザー工場とされていた。狭山工場の閉鎖により、生産を集中すると同時に、世界各地での生産技術のマザー工場としての機能をさらに強化するということが、今回の改編発表で強調されている。
考えれば、新しいグローバル・プラットフォームを採用した新型シビック・セダンの生産が寄居工場であったということを考えると、今回の発表はかなり以前から構想されていたのだろう。
また寄居工場は、電動化される新世代のクルマの工場としても位置付けられている。将来的には寄居工場での電動化車両の生産ノウハウも海外の工場に伝達されることになるのだろう。
一方、鈴鹿工場は、従来通り軽自動車とスモールカー専用の生産工場という位置付けだ。ただ、軽自動車は日本専用車だが、その技術を活かしたスモールカーはグローバル展開が想定されており、その意味では鈴鹿もスモールカーに特化したマザー工場と位置付けられる。
また四日市にあるホンダの連結子会社、八千代工業の完成車組立て部門をホンダの完全子会社化することが同日に合意されたことも明らかになった。八千代工業は、ホンダ車用の部品を生産する一方で、ホンダからの委託生産として、軽トラックのアクティ、S660、福祉車両や特装車を生産しているが、この少量生産車の部門をホンダの内部に取り込み、少量生産モデルに特化した工場として機能させることになった。
今回の決定で、従来のホンダの掲げていた生産目標は修正され、絞り込まれることが明らかになった。かつての伊東社長時代は、グローバル生産600万台、日本での生産100万台の目標が掲げられていたが、近年のグローバル生産の実態は500万台強で、各地の工場の稼働率が低下しているからだ。
また日本の工場の生産能力は106万台とされるが、2016年度での実績は70万台。そのため、今回の狭山工場閉鎖により25万台分の生産能力をカットし、2021年度までに国内81万台体制とし、そのうち約10万台は輸出を想定するなど、工場の稼働率を高めて高効率化しようという狙いがはっきりしてくる。
またその一方で、ホンダは他社のようなモジュール化されたグローバル・プラットフォーム戦略はまだ不明確で、生産体制の見直しと同時にモジュール化戦略の新たな構築も求められている。
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