■話題のランクル250、オンロードの印象は?
2024年4月18日に日本での発売を開始したトヨタ「ランドクルーザー250(以下:ランクル250)」。
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巷では徐々に納車が進んでいますが、実際に本格オフロード/日本のオンロードの両方を体感するとどのような印象なのでしょうか。
「令和のワークホース」としてランクルシリーズの中核を成すモデルとなりますが、すでに“本拠地”となるオフロード(さなげアドベンチャーフィールド)での実力はくるまのニュースでも報告済みですが、今回はオンロードでディーゼル、ガソリン両方のモデルにじっくりと乗ることができました。
エクステリアは改めて都会の街中で見ると、ツール感と先進性のバランスが絶妙で「懐かしいけど古くない」、前を向いたデザインに感じます。
丸目ライト推しの人が多いようですが、個人的には角目ライトのほうがコンセプトには合っているかなと。
ボディカラーはサンドやブルーはアウトドア感満載な印象ですが、個人的にはフォーマル感が増すブロンズや、ツール感が高まるホワイト系もアリかなと感じました。
インテリアはランクル伝統の機能性/視認性と令和のモデルらしいデジタルを上手にミックスさせたデザインです。
操作系レイアウトは300系と同じですが、スイッチ類やディスプレイの配置はより洗練。
300系のような豪華さはないものの、質感も高いレベルだと感じました。ただ、細かい所を見ていくといくつか気になる所も。
1つはメーター。最新トヨタ共通のフル液晶は理解できるも、ランクル伝統の電圧計/油圧計がデフォルト表示されいのはちょっとガッカリ。
信頼性アップで必要ないのは分かりますが、歴史あるクルマだからこそディテールはこだわって欲しかったです。
そういう意味では、1つくらいランクルオリジナル表示があってもよかったかなと。
もう1つはオーディオのON/OFFスイッチの位置。モニターは上部なのにスイッチは下部なのは機能優先のランクルらしくないなと。
チーフエンジニア・森津圭太氏に聞くと「機能には優先順位があるので、ここに落ち着きました」と。
その一方、300で指摘されていたパノラミックビューモニターのスイッチはインパネ内の分かりやすい位置にレイアウト。これは高い評価ポイントです。
では走りはどうでしょうか。
GA-Fプラットフォーム(ラダーフレーム)や前後サスペンションなどは兄貴分の300と共通なので似ているかと思いきや、別物です。
具体的に言うとラダーフレームであることを感じさせない応答の良さ、無理やり曲げている感のない自然かつ一体感の高いハンドリング、修正舵がいらないビシッとした直進安定性などは300と共通です。
しかし、操作に対する反応の素早さ、薄皮を3-4枚剥がしたかのようなダイレクト感と正確性、吸収スピードを優先したスッキリした足さばきなどを実感。
その結果、どちらかと言うとゆっくり/ゆったりした動きでクルーザー的な300に対して、250は一回り速やか/軽快な印象でスポーティさが際立つ走りを実現しています。
それでいながら、あの悪路走破性を実現させていると思うと、本当にあっぱれです。
実は300と250のボディサイズ/車両重量はそれほど変わらないのですが、250に乗ると「より軽く」、「より小さいクルマ」に乗っているような感覚を受けました。
この辺りは250専用のスタビライザーやジオメトリー、サスペンションのセットアップに加えて、電動EPSやPDA(車線内走行時常時操舵支援)の採用も効いているのかなと。
ちなみに250には最新の運転支援(アドバンスドドライブ)も搭載されていますが、乗用車系と変わらない正確無比な制御も、走りのポテンシャルアップあっての事です。
ただ重箱の隅を突くと、ディーゼル車は連続するコーナーで素早い操作を行なう車体とフレームのヨーの収まりにズレを感じたのと、バネ下の重さや段差の乗り越え時に入力が縦方向だけでなく横方向に僅かに伝わってしまうフィーリングは「やはりフレーム車だよね」を感じさせる所も。
ちなみにガソリン車で同じ道を同じように走らせてみるとその印象はほぼ無く、掛け値なしで「フレーム車だと感じない」走りだと感じました。
この辺りは車両重量の差(150kg前後)も影響しているはずですが、エンジニアに話を聞くと「目指す方向性はディーゼル/ガソリン共に変わりませんが、ガソリン車は街中での扱いやすさを考慮したセットアップを目指しました」と教えてくれました。
■「ちょっと足りない」と感じた? 具体的にはどういうコト?
パワートレインはディーゼル/ガソリン共に必要十分なパフォーマンスを備えていますが、オンロードを走らせた印象は、フットワークの驚きとは一転して、「ちょっと足りない」と感じたのが本音です。
ディーゼルは204ps/500Nmを発揮するIGD-FTV+8速 ATの組み合わせです。
ターボの小型効率化のよるピックアップの良さ、ATの多段化によりトルクバンドをより活かせるようになり、プラドから100kg以上の重量アップを感じさせないパフォーマンスはオフロードで実感済みですが、オンロードではプラスαが欲しい所も。
具体的には最も使う頻度が高い2000rpm前後で回転上昇が一瞬途切れるようなモタツキを感じました。
例えば巡行→加速のようなシーンで、本来ならディーゼルのトルクを活かしてシフトキープのままで「グーっ」と加速したいのに、トルクが足りずシフトダウン、結果的にドライバーは「力不足?」と思ってしまうのです。
もちろん、アクセルを更に踏めばいいのですが、個人的にはディーゼルの旨味はエンジンの“粘り”だと思っているので、もう少し頑張ってほしいなと。
それに加えて、音量は抑えられているものの濁音多め(乗用車系というよりトラックに近い)の音質が、静粛性の高められた室内でより耳についてしまい、進化した内外装や洗練された走りに対してちょっと取り残されてしまっている感じもしました。
個人的には価格の問題はともかく、海外向けに設定されるディーゼル+48Vマイルドハイブリッドのほうが日本の使い方ではマッチしていると思います。
ちなみに筆者は2023年末、タイで同パワートレインを搭載したハイラックスの試作車に試乗しており、その実力を知っているからこそ、より声を上げて言いたいです。
ガソリン車は163ps/246Nmを発揮する2TR-FE+6ATの組み合わせです。
ハードはプラドから変更されていませんが、発進~日常域でのスムーズなドライバビリティのために制御系の見直しが行なわれています。
一般道では実用域に割り切った特性でスペック以上に元気さに走ってくれるし、排気量を考えれば十分な実用トルクも備えられています、
残念ながら高速道路や山坂道になると絶対的な力不足は否めません。
更にエンジン出力が足りない所をATの変速タイミングが駆動力優先なでカバーするような制御になっているのか、とにかく駆動力確保優先でちょっとでもアクセル開度を高めると一気にギアは容赦なく即座にダウンシフトしてしまいドライバーはちょっとした加速をしたいと思っているのにエンジン回転が4000~5000pmまで上昇。
その時のその時もエンジンはワンワン唸るだけでなかなか加速してくれないので、「君はフル積載の昔の商用車か?」と思ってしまうくらいです。
もちろんアクセルをジワーっと踏むようなゆっくり、/ゆったりしたドライビングを心がければスムーズに走らせる走らせることもはできますが、せっかちな人、出力の高いクルマから乗り替えた人にはもどかしく感じるはず。
ガソリン車も海外向けには2.4Lターボモデルもラインアップされており、それを搭載すれば解決しますが、当然価格も上がるため、ガソリン車の立ち位置が変わってしまう事を思うと、何とも悩ましい所です。
※ ※ ※
総合的には「令和のワークホース」のみならず「新時代のランクル」としての魅力はシッカリと備えられていますが、パワートレインに関してはオンロードでは良くも悪くも“割り切り”があるのも事実です。
ただ、グローバルではより高出力なパワートレインが用意されているため水平展開はそれほど難しくないと予想しますが、日本市場での250の立ち位置(300よりもアフォーダブルなプライス)を考えると、それが得策なのか判断は難しい所です。
ただ、個人的には今のグレード体系に加えて上級グレードとして用意されればアリかなと。そう、“選択肢”は多い方がいいです。
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