2021年モデルのヴェルシス1000SEは「スカイフック制御」を導入
ヴェルシス(VERSYS)1000は、ニンジャ1000系の1043cc並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載するカワサキの大型アドベンチャーモデルです。
日本ではまだとなりますが、ヨーロッパでは同車の2021年モデルが発表されました。
【関連写真10点】日本導入が待ち遠しい!2021年型カワサキ ヴェルシス1000SEのメーターやエンジンなど細部を解説
最高出力120馬力は従来型と同様、デザインもほぼ変わっていませんが、2021年モデルの大きな特徴は、その最上位モデルのヴェルシス1000SEに、新たな電子制御サスペンション「スカイフック」が装備されたことです。
ヴェルシス1000SEは2019年モデルから電子制御サスペンションのKECS(Kawasaki Electronic Control Suspension)を採用。これはSHOWAの電子制御サスペンションテクノロジー・EERA(イーラ=Electronically Equipped Ride Adjustment)を生かしたものです。
2019~2020年モデルまでのヴェルシス1000SEは
では、電子制御サスペンションとは、どんなサスペンションなのか。
2019~2020年モデルでは、VP-MAP制御(ストロークスピードに応じてリアルタイムで減衰力を可変・最適化)、車速依存制御(車速に応じて減衰力を可変・最適化)、減速制御(減速状態を検知し減衰力を可変し姿勢を制御)などを行う電子制御サスペンションが装備されていました。
車体の姿勢を検知するのはボッシュ製IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)で、前後サスペンションがSHOWA製となります。
フロントフォークはインナーチューブ径43mmの倒立EERA SFF(Separate Function front Fork)-CA(Cartridge)で、フォークの左側にストロークセンサー+スプリング、右側にカートリッジダンパーを備えています。
リヤショックはEERA BFRC lite(Balance Free Rear Cushion lite)。どちらもオイル通路開閉機構の電磁バルブの一種である、ソレノイドを使った電子制御式です。
「スカイフック制御」とは何をしてくれるのか?
そして、新たな2021年モデルのヴェルシス1000SEでは、「スカイフック制御」が追加されました。
スカイフック制御は、その名の通り車体を空から吊り下げたかのように制御するシステムで、ギャップを通過してもピッチング(前後の沈み込み、浮き上がり挙動のこと)せずに「足」だけ動かして車体を一定に保つような挙動のイメージです。
実際には、サスペンションのストローク以上には動きませんが、制御がかかればピッチングは最小限に抑えられるのです。これはヴェルシス1000SEのような足長=長いサスペンションを備えたアドベンチャーモデルには効果的です。
一般的なオンロードスポーツモデルは約120mmですが、ヴェルシス1000SEのホイールトラベルは約150mm。
ヴェルシス1000SEは足が長い分、路面追従性に優れ、乗り心地も良いのですが、連続ギャップやブレーキング時にはピッチングが大きくなってしまう側面も。そこにスカイフック制御をかけ、姿勢に応じて減衰力をかける・抜くを最適に繰り返し、ピッチングを最小限に抑えようというわけです。
ヴェルシス1000SEの走り「乗り手のウデを問わない、シームレスな挙動制御」
走行モードの選択で、エンジンとサスペンションを総合制御
2021年モデルのヴェルシス1000SEを実際に走らせてみました。
試乗を行ったのはSHOWAのテストコースで「世界中の舗装路面を想定している」とのことだけあって、ワインディングロード(屈曲路)では山の頂上やボトムで切り返したりする状況もあり、なかなか意地悪な設定です。
セレクトするのは、スポーツ、ロード、レインの走行モードだけ。これでエンジンの出力特性からサスペンションセッティングまで丸ごと設定が完了、いちいち細かいセッティングをしなくて済むのが進化した電子制御KECS・EERAの良いところです。
とりあえず「ロード」モードを選び走行をスタート──。
高速道路の継ぎ目を想定した路面(それにしては凹凸が大きめだったんですが)や、大きなうねりが連続する波状路でも、ヴェルシス1000SEはピッチングが少なく安定しています。これは高速でも低速でも制御されています。
ピッチングはしないことはないのですが、周期が長くなって上下動も半分ぐらいになった感じです。
そしてうねった路面をタイトに曲がるような場面や、山の頂上で切り返すような場面では一瞬接地感が弱くなりますが、すぐに確かな手応えに復帰して狙ったラインを外すようなこともなく、そうした難所を不安なくクリアしてくれます。
そう、「してくれます」と言ったのは、ライダーのウデでどうにかしたのではなく、電子制御が働いて上手いこと減衰力を調整してくれたおかげなのです。
ここでひとつの疑問が浮かびます。
これはスカイフック制御の恩恵なのか、それとも他の制御なのかということです。ブレーキングでノーズダイブが小さいのは、減速制御のおかげでしょう。
走っていて多分スカイフック制御の効果だろうと感じられたのは、山の頂上付近で切り返したときで、このときの絶妙な減衰力の抜き加減が働いて、フロントタイヤが宙に浮かず路面の追従していくわけです(一瞬接地感は弱くなりますが)。
連続したうねり路面では……これもスカイフック制御でしょう。
一方、坂を下って谷のボトムで切り返して急に登るような場面では、スカイフック制御なのか、車速依存制御なのか──。
「どっちでもいいんです。スカイフック制御と車速依存制御は、必ずどちらかが効いてくれる設定ですから」とは、その質問をした際のSHOWA開発スタッフのコメントです。
最新電子制御サスペンションは、オンロード主体のアドベンチャーにも効果あり!
アドベンチャーモデルといっても、ヴェルシス1000は前後17インチのホイールを履き、ホイールトラベルが150mmのオンロード主体のモデル(純ロードスポーツよりホイールトラベル量はあるとはいえ)。
2020年モデルのホンダ CRF1100Lアフリカツインに装備されるジャンプ着地制御や、SHOWAが新技術として提案中の停止寸前に車高を下げるEERA HEIGHTFLEX(ハイトフレックス)は装備されないのですが、ジャンプはしないだろうし、足着き性も840mmのシート高(輸出仕様)ながらスリムで跨がり性が良いので全然問題なく(筆者は身長170cm・体重68kg)、両制御の必要は感じませんでした。
高速域ではダンパーが効いて安定感があり、低中速コーナーの切り返しやアップダウンでも見事に姿勢が安定し、上手く走れてしまう。路面追従性が良く、路面のギャップも気にならないし、イヤなピッチングがない。
そして各種の制御はシームレスに行われるから、ライダーは「自分がただ上手く走れている」という感覚で、バイクの重量を感じにくいのがいいですね。
重くて背が高い大型アドベンチャーは苦手という方も、カワサキ ヴェルシス1000SEはなじみやすいかもしれません(しかもヴェルシス1000は4気筒なのに、です)。
面倒なサスセッティングは必要なし。バイクにお任せで、不安感や不快感なく、ライダーは走りを満喫できる──最新電子制御サスペンションの進化は想像以上でした。
2021 カワサキ ヴェルシス1000SE 主要諸元(欧州仕様)
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:77.0mm×56.0mm 総排気量:1043cc 最高出力:88.2kW<120ps>/9000rpm 最大トルク:102Nm<10.4kgm>/7500rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2270 全幅:950 全高:1530(スクリーンハイポジション)/1490(スクリーンローポジション) ホイールベース:1520 シート高840(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:257kg 燃料タンク容量:21L
[価格]
イギリスでは1万4899ポンド=約220万円という価格が発表されている(2021年3月上旬時点での為替を参考)
レポート●石橋知也 写真●岡 拓/カワサキ 編集●上野茂岐
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みんなのコメント
腰高だし、これで長距離は厳しいなぁ…