新開発されたシングル・ローターのロータリー・エンジンを搭載
マツダの「MX-30ロータリーEV」の特徴は、発電用とはいえロータリー・エンジンを復活させて搭載していることだ。
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ロータリー・ファンにとっては、これ以上ない朗報であろう。そんな新しいロータリー・エンジンは、830ccの1ローターで8C型と呼ばれる。
かつて「RX-7」/「RX-8」に搭載されていた13B型ロータリー・エンジンは654ccの2ローター。つまり、8C型は、まったくの新規開発されたロータリーとなる。
1ローターの排気量は大きくなったものの、出力は72psとささやかなもの。かつての「RX-8」に搭載されていた13Bはノンターボながら、250psを誇っていたことを考えると、新型8C型ロータリーは、発電用として省スペースを優先していることが特徴と言えよう。
「MX-30ロータリーEV」は、この8C型ロータリー・エンジンに、駆動用の170psのモーター/17.8kWhのリチウムイオン電池を組み合わせた。ボンネットの中には、モーターとエンジン・ユニットがぎっしりと詰まっている。
ちなみに、兄弟車であるEV版の「MX-30 EV」のボンネットの中にあったのはモーターだけで、何もない空間が3分の1ほど存在していた。その空間にロータリー・エンジンを積むと「MX-30 R-EV」になるというわけだ。
107kmのEV走行で、最大870kmの航続距離を実現
「MX-30ロータリーEV」は、車名に「EV」とあるように、駆動はすべてモーターが担う。
しかし、エンジンを積んで発電しているということで、区分としては「シリーズ・ハイブリッド」になる。また、搭載する二次電池に外部から充電することができるので「プラグイン・シリーズハイブリッド・カー」が正式な名称となる。
「EV」とあるけれど、ハイブリッド車なのだ。
夜のうちにフル充電しておけば、日中はEV走行のまま最高107km(WLTCモード)までを走ることができる。1日で100kmを超えて走る人は意外に少ない。年間1万kmを走る人であっても365日で割ると、1日あたりは約27.4kmに過ぎない。107kmもEV走行ができるので、実質的にEVとして利用できるのだ。
それでいて週末のロングドライブになれば、ロータリー・エンジンの発電があるので長距離も怖くない。燃費性能は15.4km/Lで、燃料タンクが50Lあるので、エンジンで発電しながらであれば770kmの走行が可能。
これに107kmのEV走行距離をプラスすれば、870kmのトータル航続距離となる。また、高価なリチウムイオン電池を減らすことができたためBEVよりも安価という点も見逃してはいけない。
平日のEV走行、週末のロングドライブをこなし、しかもBEVよりも安い。今ある電動車としての最適解と呼べるような存在なのだ。
合理的なだけではなく、感性に訴えるものがある
しかし、試乗してみてわかったのは、理屈や合理性だけのクルマではないということであった。フィーリングや、感性といったものも大切にしているクルマであるのだ。
走り出して、最初に感じるのは乗り心地の良さ。実は「MX-30 R-EV」は重い。車両重量は1780kgで、エンジン車の1460kgどころか、EVの1650kgよりもヘビー級なのだ。それでいながら、足は突っ張っておらず、逆に重さを安定感のように使っているようだ。
しかも、重さを感じさせない軽快さがあった。面白いほど、気持ちよく回頭する。まさに人馬一体感が得られるのだ。
その理由には、マツダならではのこだわりのハンドリング部分を煮詰めた結果でもあるだろう。また、e-GVCプラスという車両制御技術の存在も大きい。モーターのトルク特性を使って、コーナーへのアプローチから脱出まで、前後左右上下方向のG変化をシームレスにつなげて、まるで運転の腕前が1ランク上がったようにサポートしてくれるのだ。
さらに、音量が抑えられていたもののEVサウンドも貢献している。EVサウンドは、エンジン音のかわりにマツダが独自に作り上げた音だ。
トルクにあわせて、そのEVサウンドをドライバーに聴かせることで、モーターの回転や負荷を知らせてくれる。クルマとドライバーが対話できることで、人馬一体感を得る手助けとなるのだ。
最高出力170psは驚くほどのパワーではないけれど、それでも走りは、十分にスポーティであり、ファンと呼べるものであった。
ロータリー・エンジンのフィーリングは?
走行モードは「EVモード」(バッテリー充電率SOC0%までバッテリーの電力優先で走る)/「ノーマルモード」(SOC45%を維持して、モーターとエンジンを使い分ける)/「チャージモード」(設定したSOC%まで充電を優先する)の3つが用意される。またシフトノブの横にあるボタンで走行中に変更することもできる。
ちなみに「EVモード」であっても、アクセルペダルを奥まで踏み込み、いわゆるキックダウンボタンを押し込むとロータリー・エンジンが稼働して電力供給を始める。その時のエンジン音と振動は、ごくごくわずか。気を配っていないと、EVサウンドやタイヤノイズの向こうに埋もれてしまうほどだ。
ロータリー・ファンであれば、じっと耳を澄ましてみよう。加速感とEVサウンドの向こう側に、ロータリー音と細かな振動を感じることができる。大排気量のシングル・ローターということで、意外と図太く、低い音だ。これが新世代のロータリー・エンジンとなる。
個人的には、この新しいパワートレインが「MX-30」に最初に搭載されたのも良いことだと思う。
「MX-30」は「わたしらしく生きる」をコンセプトにした、新しい価値観を提案するクルマである。観音開きのドアを採用することで、クーペのような流麗なスタイルを得ているし、内外装のデザインも独自のユニークさがある。
ガチガチの理論と合理主義だけでなく、感性も決して疎かにしていない。そのバランス感の良さがこのクルマの良さと言えるだろう。頭とハートの両方で魅力を感じるクルマであった。
試乗車のスペック
価格:423万5000円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4395×1795×1595mm
駆動方式:FF
車両重量:1780kg
パワートレイン(発電用):水冷1ローター830cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:72ps/4500rpm
最大トルク:11.4kg-m/4500rpm
モーター:MV形交流同期発電機
モーター最高出力:170ps/9000rpm
モーター最大トルク:26.5kg-m/0-4481rpm
タイヤサイズ:215/55R18(フロント)215/55R18(リア)
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