RS印のアウディ、それは外し技だった?
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
【画像】アウディRS6アバントなど【こってり系ステーションワゴンを比較/3選】 全113枚
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)
editor:Taro Ueno(上野太朗)
思えばそれは奇妙だった。
銀や白黒といったドイツ的モノクロームの世界から抜け出したような鮮やかな青を纏ったアウディのワゴン、1994年にデビューしたRS2である。
ポルシェが手を貸した飛び切り速いモデル。RSのアルファベットがレーシングスポーツに由来することはよくある話だが、「アバント」のボディ形状が腑に落ちなかった。
今日ではメルセデスAMGやBMWのMとならんで速いドイツ車の一群を形成しているアウディスポーツGmbH謹製のRSシリーズ。
その奇妙だったはずの出発点、ワゴンボディや加給によるハイパワーエンジン、AWDシステムが、21世紀のアウディに先駆者的な立ち位置を与えているから面白い。
ウェッジが効いたブリスターフェンダーや全身に鋭く入ったプレスライン。目の前に止まった赤いアウディRS6アバントは、アイドリングをやめてもなお、とてつもない威圧感を放ち続けている。
4代目となる現行のRS6アバントは昨年末に日本導入が開始されたニューモデルだ。
エンジンは600psを発生する4L V8ターボ、駆動はもちろんクワトロである、というとのハイオクをガブのみしそうなイメージだが、48Vマイルドハイブリッドや4気筒を休止させるシリンダーオンデマンドも人知れず装備している。
最強のRSモデルとはいえ、そこはアウディ。
インテリジェンスはちゃんと含まれている(?)と期待したいのだが、どうか。
アウディ随一の質感 オーナー像は?
鮮烈なスタイリングに呼応した質感高めの車内で最初に考えたのは、どんな人がこのクルマを買うのだろうか? ということだった。
職業とか自宅の作りや場所、服装などなどである。
例えば普通のA6ならば、オーナーの周辺事情を問わない感じがあるし、ポルシェ911あたりでも「あぁクルマ好きなのね」というだけ納得がいく。けれどRS6アバントは似合う似合わないがはっきりしているように思えた。
ワゴンだからといって荷室をキャンプ道具でいっぱいにして週末の渋滞にハマるような家族的な人はお呼びでない感じだ。
オーナー像の話はさて置き、高速道路で試した600psはやっぱり凄かった。2.2tという車重はそのまま車体の重厚感に繋がっているが、その重みを苦にしないほどのパワーがエンジン回転のほぼ全域で感じられる。
RSスポーツエキゾーストというオプションが装着された排気系は、スロットルを深く踏み込むと雷鳴のような音を轟かす。
ちょっとやり過ぎな気もするが、そもそも刺激が欲しい人の乗り物なのだから、ケチをつける筋合いはないだろう。
セラミックブレーキのオプションが装着されていたので、減速も軽い踏力でこともなげに完了する。
コースティングが介入すると若干エコな匂いもするが、基本的には「押しの一手」の1台。見た目だけでなく走りに関しても「2000万円くらい当然しちゃうよね(定価は1764万円)」という動的、静的な質感の高さこそがRS6アバントの特徴だ。
アピール過多、でも期待裏切らない完成度
RS6アバントのステアリングを握っていると、多くの人は気持ちが大きくなってしまうに違いない。
高速道路を流していると「フェラーリとかいないかな~」みたいな悪戯心が自然と湧いてきてしまうのだ。305km/hでスピードリミッター作動! という冗談のようなスペックも 「むべなるかな」と思えてくる。
RS6アバントのライバルはメルセデスAMGのE63 Sのステーションワゴンやパナメーラ・スポーツツーリスモあたりだろう。
まるでレギュレーションでもあるかのように全車4L V8ターボ+AWD+電子制御のエアサスで統一されているのだが、ドライブフィールはメイクスの個性に紐づけられている。
メルセデスAMGやポルシェは動力性能やタイヤのグリップ、デフの締結感といった感触をクルマ全体の雰囲気に溶け込ませるスタイル。
一方のRS6アバントは各々の感触がドライバーに直接、しかも強めに訴えかけてくる。だからアウディは例えクルマ好きじゃなくても凄さがわかりやすいといえる。
だがこういった性格は諸刃の剣で、RS6アバントの見た目やドライブフィールをアピール過多と捉える人もいるはずだし、長距離ドライブでは強い個性がストレスになってしまう可能性もあるように思う。
とはいえ、アウディRS6アバントはじっくり比較検討して買うようなクルマではない。
「これじゃなきゃ」というファンがいるはずだし、そういった常連の期待を裏切らない仕上がりになっていることはたしかなのである。
アウディRS6 アバントのスペック
価格:1764万円
全長×全幅×全高:4995×1960×1485mm
ホイールベース:2925mm
車両重量:2200kg
エンジン:3996cc V8ターボ
最高出力(エンジン):600ps/6000-6250rpm
最大トルク(エンジン):81.6kg-m/2050-4500rpm
トランスミッション:8速オートマティック
燃費(WLTC):7.6km/L
駆動方式:4WD
タイヤサイズ:275/35R21
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みんなのコメント
欧州でカスタムしてる金持ちが多い。
自然豊かでアウトドア派が多いヨーロッパ向けだね。
プロスキーヤーでR8の屋根にボード載せてるのも居たなw
600馬力なんてどこで使うんですかぁ
暴走して事故しないか心配です。