充電器があれば、何処でも
話は3か月ほど遡るが、9月23日の昼、私が経営する甲府の旅館(常磐ホテル)の駐車場で、マツダ・ロードスターを洗車していると、見慣れないスポーツカーがエントランスに入ってきた。
<span>【画像】601kmのテスト走行 すべての写真をみる【詳細】 全43枚</span>
ピュアなホワイトのボディのクルマは何とポルシェ・タイカンであった。
これまで、都内ではタイカンに何回か出会っていたが、地方で見るのは初めてで、同じ時間に来ていたランボルギーニ・アヴェンタドールに比べても新鮮に見えた。
そのクルマは浜松ナンバーであったから、おそらく、最近全通したばかりの中部横断自動車道を利用して、甲府にツーリングに来たのだろうと確信した。
充電器の脇に停め充電を開始したオーナーにお声をかけ、話を聞くと、家にポルシェの8kWの充電器を準備中で、足のクルマはBMW i3だそうだ。
EVに全てのクルマを変えてしまった訳で、やはり、このくらい徹底しないとEVに切り替えることはできないだろうと感じた。
タイカン・オーナーの当館への滞在時間は、昼食時の1時間半程度であったが、たとえ、当館の一般的な3kW容量のもので、充電量も気休め程度であっても、充電器があれば何処でもすぐに充電を行う、というのは、EV生活の基本であろう。
ポルシェの充電器の設置について
この来客の話を、ある会合で、ポルシェ・ジャパンのキルシュ社長にしたところ非常に喜び、ぜひ、常磐ホテルにも、ポルシェの8kWの充電器を装備しませんか、と提案された。
今年中に装備できれば、キャンペーン中で、費用はポルシェ・ジャパンが全て持ってくれる、とのことで、こちらとしては、願ったり叶ったりであった。
その理由は以下のようである。
このところのEVの試乗で痛感した第一のことは、国内で一般に設置されている3kWの普通充電装置ではパワーが少なすぎ、高性能のEVの充電には、時間が掛かりすぎることだ。
そこで、現在ある3kW 2基に加え、6kWを1基追加しようと計画し、国への補助金の申請も行ったのである。
無論、そのためには、ホテル内の総電力の供給量や消費量を計算し、増設が可能かどうか、調査をしなければならなかった。
特に注意する点は、6kW/200Vの場合、流れる電流は最大30Aとなるので、それに耐えうる電力がきているか、また、それに耐えうる配線をしなければならないということであった。
当社の場合は、500kWもの大容量なのでキャパシティに問題はなかったが、配電盤から新たに敷く配線は、それなりの太さが必要であった。
ところが、補助金申請は何と採択されず、その理由も明らかにされなかった。推測するに、6kWはまだ日本では必要ではない、という判断なのだろう。
事実、パナソニックに問い合わせると、6kWは殆ど出荷していないという情けない状況であった。
これでは、EVなど普及するわけがない、と思っているところへ、ポルシェ・ジャパンの8kW(この場合は40Aの電流が流れる)の設置の提案があった訳で、すでに館内は調査済みなためスムースに事は運んだのである。
設置の予定は、12月29日である。無論、一般のEVでも何の問題もなく使用できる。
実際、輸入車メーカーの中でも、充電装置まで、独自のものを制作して全国展開しようとするポルシェの姿勢には頭が下がる。
自社の高性能スポーツカーとしての性能を維持するためには、インフラから整備しないとダメだ、という考えに至ったのは良くわかるし、そのための努力も素晴らしいと思う。
日本の現状では、一般家庭で8kWの充電器を備えるだけで、かなりハードルが高い。まずは、契約電力の引き上げから始めなくてはならないケースが殆どだろう。
私の場合は、幸い、2拠点のうち、甲府は大規模施設なので契約電力の問題はクリアし、また、川崎の自宅のガレージも工具を使用するため、元々、200V、60Aの契約だったので問題はないはずだが、6年ほど前、BMW i3の試乗の時に設置したEV用のコンセントに至る配線の太さが、40Aでは耐えられないことが分かり、今、太い配線に交換をする予定だ。
下手をすると出火の原因になるため、慎重な対応が必要である。
さすがのポルシェ・クオリティ
さて、ようやくポルシェ・タイカンの試乗である。
少なくとも2週間続けて使用したい、という条件で貸し出しをお願いしていて、ようやく、12月の上旬に試乗することができた。
車種はタイカン・ターボSで、純白のキャララホワイトメタリックの外装、レザ・フリーの素材を使用したブラックの内装色をまとい、消費税込みの価格は2812万1000円であった。
その内訳は、車両本体価格が2454万1000円(消費税込み)で、固定式パノラミックガラスルーフなど、21項目のオプションを装備し、その合計が358万円となっている。
現時点では、おそらく最も高額なEVの1台だろう。
現車がガレージに到着したのは12月2日の午後で、キーを持ってクルマに近づくと、すぐにドアノブが開き、そのまま乗り込めばスタートが可能となる。
この時のオドメーターの数値は1万7117km、充電状態は91%で、走行可能距離は330kmであった。
念のため、車載のケーブルを使用して自宅のコンセントにつなぎ、200V、充電能力50%に抑えて、充電を開始してみる。
すると、フル充電までの時間は5時間ほど、試しに瞬間的に100%にしてみると2時間半ほどであった。
無論、EVの場合、常にフル充電にしなければならないという訳ではないが、一応、目安としてフル充電までの時間を記しておくことにする。
しかし、たったこれだけの作業を行っただけで、ポルシェのクオリティの高さに感心した。
コンセント類はゆるぎなくかっちりと接続できるし、すぐに間違いなく充電を開始して数値も正確に出る。ドアの開閉のタッチもスムースで、その洗練度合いは、正に、私が20代の頃、初めて、356 SCに乗ってポルシェのクオリティの高さに感激した時と同じ感覚が蘇ってきたのである。
ファーストライド 154kmで59%消費
翌朝には、100%充電が完了し、走行可能距離は360kmと表示されていた。
仮に私が購入するのならオプションのパフォーマンスバッテリープラス(2デッキ)を組み込んで、走行距離をあと100kmほど伸ばしたいと思う。
シートベルトを装着し、シフトをDにしてアクセルを踏み込めば、恐ろしく静かに、あっけなくスタートする点は、どのEVも同じである。
走行モードは、レンジ/ノーマル/スポーツ/スポーツ・プラスの4段階があるが、まずはノーマルでスタートする。
全長4965mm、全高1380mm、全幅1965mmのサイズは、パナメーラよりも一回り小さく取り回しは気にならない。
慣れたところで、スポーツ、スポーツ・プラスと切り替えてゆくと、足が引き締まり明確に違いが判る。
特にスポーツ・プラスでは、モーター音もたかまり、かなりごつごつとした乗り心地になる。
この日は、都内を50kmほど走行した後、そのまま甲府に向かう。中央道で、ポルシェらしい走りをするには、スポーツ・モードがお勧めで、回頭性もよくロールも僅かで実に楽しい。
スピードを上げても、僅かな風切り音とタイヤのロードノイズだけで、極めて静粛であり、コーナーでも、フロントウインドウ両端に見えるフェンダーの峰がガイドとなってとても走りやすい。
更に90km/h以上では車高が10mm下がるため、一層安定する。ターボSの0-100km/hが僅か2.8秒という途轍もない性能をフルに発揮しなくても、十分以上に速く、コーナーの多い中央道をすいすいと走る。
東京-甲府間は、もともと高度差があり勾配も多いので電力消費は多いが、甲府に到着した時の走行距離は154kmで、バッテリー残が41%、走行可能距離は134kmに減少していた。やはり、勾配ではかなりの電力消費となってしまう。
甲府では、まだ、ポルシェのスタイリッシュな充電装置は付いていないので、従来から設置している3kWの充電器で17時から充電を行う。
フル充電完了の時刻は、翌日の11時と表示されていた。おそらく、8kWなら、半分以下で済むだろう。
2日間の甲府滞在の後、今度は、フル充電状態で川崎に向かう。スタート時の走行可能距離は353kmであったが、114km走行後の残距離は202km、61%の充電量であった。
やはり、スポーツモードでポルシェらしい走りをすると、下りといえども消費量は増加傾向のようだ。この日は、夜20時24分に充電を開始した。
601kmのテスト走行 印象は
翌朝、9時40分に充電を止め、クルマをスタートさせたが、その時の充電量は79%、走行可能距離285kmまで回復していた。この日は都内2か所で、ミーティングや食事の後、再び甲府に向かう。
この日の走行距離は、200km以上まで行きそうなので、充電量が足りない危険性があった。
ミーティングの場所に充電器があれば、少しでも充電をしておきたいと思っていたが、残念ながら2か所とも無く、いささか不安を覚えながら走り、最悪の場合は、談合坂サービスエリアで急速充電も有りだ、と考えていた。
しかし、結果は、都内での電力消費が意外に少なく、181km走って甲府に到着した時の残量は29%、走行可能距離93kmであった。
翌日の午後2時には、充電開始から17時間後で72%、走行可能距離249kmまで回復していた。
この日は楽しみにしていたワインディングの撮影だ。いつものゴルフ場への長いアプローチの峠に向かう。ワインディングではスポーツ・プラスモードがベストで、クイックなステアリングとバランスの良い足回りのおかげで、限界も分かりやすく、非常に早く走ることができる。
特に、上り勾配でのタイカン・ターボSの加速の鋭さは半端ではなく、オーバースピードでコーナーへ入りがちで、要注意だ。
結局、この日は、ワインディングを含め50km程度を走って、充電量63%、走行可能距離211kmとなった。
他のEVでは、ワインディングを走ると、電力回生によりむしろ残距離が殆ど減らない傾向にあるが、スポーツ・プラスではパフォーマンスが大幅に上がるかわり、電力消費が増加するのは止むを得ないだろう。
翌日の最終日は、午前9時に甲府をスタートし、川崎に向かう。この時の充電量は99%、358km走行可能であった。中央道は、更に「ポルシェらしい」走りをして帰ってきたが、川崎到着時の残量は67%、走行可能距離233kmであった。
この時のオドメーターの数値は1万7718kmである。
今回の試乗の総走行距離は甲府2往復を含め601kmとなった。これだけの距離を様々なシチュエーションで走ってみて、ポルシェ・タイカンが、ポルシェ本来のパフォーマンスをしっかりと維持しながら、EVとして充分に日常に使用できることが分かった。
試乗をする前に不安であった充電能力の問題も、私のように100km内外の往復程度までなら、現状の設備でも何とかなることが分かり、また、もしタイカンを購入するのなら、自宅に8kWの充電装置を備えるだけで、殆ど不安は解消することも分かった。
いずれ、国内でも、一般的な普通充電の装置のパワー強化は行われることになろうが、それが何時になるのかは皆目見当がつかない。
そのような中で、EVのパフォーマンスは上がる一方であるから、それに対応してインフラを自前で広げようとするポルシェの姿勢は、性根が座っていて素晴らしいと思う。
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みんなのコメント
高速道路と山坂道だけ乗り回してタイカンしてる分には最高だと思いますよ、
タイカン・ターボS。。。
補給することもできるけどEVだと、いざ急用で出かけようと思っても充電時間が足りない・・・とかいう事態が起きそう。