米国チームでル・マン総合優勝を目指す
米国に本拠を置くスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SCG)が、FIA世界耐久選手権(WEC)の2020/21年シーズンに参戦を発表。SCG007と呼ばれるそのレース用マシンには、公道走行可能なバージョンを用意する計画があることも明らかにした。
【画像】スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス 全47枚
このSCG007は、WECに新設されるハイパーカー・カテゴリーに出場し、アストン マーティン・ヴァリキリーやランボルギーニ・アヴェンタドール、トヨタGRスーパースポーツなどのマシンと競うことになる。
2020/21年シーズンより開始が予定されているハイパーカー規定は、1990年代初期から現在まで続くLMP1プロトタイプに替わるトップカテゴリーとなる。自動車メーカーはコンセプトカーまたは市販ハイパーカーのレース仕様車を製作して参戦することが可能だ。市販車として出場する場合には、2年以内に20台以上のベース・モデルを生産することが義務づけられる。パワーユニットは純粋なガソリン・エンジンだけでなく、ハイブリッド・システムの搭載も可能だが、合計最高出力は750ps以下、電気モーターを搭載する場合はその出力が270ps以下でなければならない。最低車両重量は1100kgと定められている。ル・マン24時間レースが行われるサルト・サーキットにおけるこの新規定マシンの目標ラップタイムは、3分30秒とされている。
SCGの創設者ジェームズ・グリッケンハウスは、次のように語っている。「1967年のフォードGT40 MkIV以来、米国製のマシンはル・マンで総合優勝していません。今こそ、再び米国のチームが勝つべき時であると、私たちは考えています」
1億円以上でカスタマー・チームにも販売
SCGは今年6月、SCG007のレンダリング画像を初公開した。今回新たに発表された写真では、1960年代のイタリア製耐久レーサーから影響を受けたと思われるデザインが、よりはっきりと確認できる。
SCG007は3.0L V6ツインターボ・エンジンを使用するという。そのベースとなるユニットがどこのメーカー製であるかは明らかにされていないが、新たに公開された画像に写っている赤と白のカラーリングや、テレホンダイヤル型デザインのホイールから、アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオのF154型エンジンをボアアップしてチューンしたものではないかと噂されている。
このエンジンを設計したフェラーリ自身は、ル・マンのハイパーカー・カテゴリーに参戦する計画を一切発表していない。フェラーリは2018年、このカテゴリー新設に関する協議から、フォードと共に離脱すると表明した。
SCGは今年3月、WEC参戦マシン用のハイブリッド・システムを開発していると発表したが、これがSCG007に搭載されるのかは、現時点で明らかにされていない。
同社はこのマシンをワークスカーとして走らせるとともに、約100万ドル(約1億800万円)という価格でカスタマー・チームにも販売する予定だ。また、20~30台ほど公道仕様の製造も計画している。2018年の発表によれば、この公道仕様車は800psのエンジンと200psを発生するハイブリッド・システムを搭載し、価格は200万ドル(約2億1600万円)程度になると言われていた。
WEC参戦仕様のSCG007は、来年7月にテストが始まる予定だ。
年内にはSCG004の生産も開始
映画監督から投資家に転じたジェームズ・グリッケンハウスは、2013年に自身の名前を掲げるブランドを設立。その市販モデル第1弾としてSCG003を発表した。ちなみにSCG001はローラのカンナム・マシンを公道走行可能に改造したクルマで、SCG002はグリッケンハウスがピニンファリーナにワンオフで製作させたフェラーリP4/5のレース仕様車だった。
SCG003は2015年からニュルブルクリンク24時間などいくつかの耐久レースに参戦。2017年に米国政府から少量自動車製造業者として認可を受け、ニューヨークで公道仕様車が生産されている。
今年後半には700psの日産製V6ツインターボを搭載するSCG004の製造が、コネチカット州に新設された工場で始まる予定だ。このモデルには公道用のSCG004Sと、レース仕様車のSCG004C、そしてその中間とも言える “公道走行可能なレースカー” 仕様のSCG004CSがある。
SCG006はクラシックなフェラーリ250GT風のスポーツカー(クーペとスパイダーがあり)で、こちらは2020年に発売予定。さらにGM製V8エンジンを搭載したSCGブートと呼ばれる2ドア・ソフトトップのオフローダーも計画されており、公道仕様とバハ1000向けのラリーカーが作られることになっている。
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